新型コロナウイルス感染症の流行により様々な影響を受けてしまった事業者が、その影響を克服し経営改善させていきたいと考えたとき、補助金制度を活用できれば資金の悩みはある程度解決されます。
補助金制度といっても販路回復や開拓、機械設備の導入や人手不足解消に向けたものなどいろいろあり、経営改善に向けた内容でも業種により対象になるものとそうでないものまでいろいろです。
そこで、現在東京都で公募中の補助金や申請受付の期限が過ぎていない制度をいくつかご紹介しますので、経営改善の糧とするための参考にしてください。
目次
BCP実践促進助成金
中小企業などが策定したBCPを実践するとき、必要になる物品や設備などを導入するときにかかった経費の一部を助成する制度です。
BCP策定や対策で必要となる用品の備蓄を促進することが目的であり、災害が発生したときに基幹システムが損害を受け業務遂行に障害が出てしまわないよう、基幹システムをクラウド化する費用の一部も助成の対象となっています。
助成の対象となる事業者
BCP実践促進助成金の対象となる事業者は、次のいずれかの要件を満たしBCPを策定している中小企業(小規模企業者含む)と中小企業団体です。
- ・平成29年度以降に公益財団法人東京都中小企業振興公社 総合支援課が実施する「BCP策定支援講座(ステージ1)(出張版策定講座含む)」を受講し、受講内容を踏まえたBCPであること
- ・中小企業強靱化法に基づく「事業継続力強化計画」の認定を受け、計画に基づいて作成したBCPであること
- ・平成28年度以前の東京都または公社が実施したBCP策定支援事業などの活用により策定したBCPであること
助成率と助成額
中小企業の場合、策定されたBCP実践で必要となる設備の設置や物品購入にかかる費用の2分の1以内、小規模企業者は3分の2以内の助成率となります。
助成上限額は1,500万円(下限額10万円)で、クラウド化の助成分を含んだ金額ですが、クラウド化の助成上限は450万円となっています。
申請受付期間
現在予定されている募集は以下のとおりですが、申請には予約が必要ですので、予約受付期間に申請予約をしておくようにしましょう。
- ・令和3年9月募集(予定)…予約受付:令和3年9月6日~9日 申請受付:令和3年9月13日
~16日 - ・令和3年11月募集(予定)…予約受付:令和3年11月8日~11日 申請受付:令和3年
11月15日~18日 - ・令和4年1月募集(予定)…予約受付:令和4年1月11日~14日 申請受付:令和4年
1月18日~21日
申請においてはBCP策定支援講座(ステージ1・出張版策定講座含む)の受講、または中小企業強靱化法による「事業継続力強化計画」の認定を受けていなければなりませんので注意しましょう。
申請方法については、東京都中小企業振興公社「令和3年度 BCP実践促進助成金 申請案内」を参考にしてください。
観光業界における経営課題解決促進事業
東京都では、新型コロナウイルス感染症による打撃で衰退してしまった観光業界を復活させるため、業界団体などが行うサービス向上・生産性向上に向けた取り組みを支援しています。
補助の対象となる事業は、サービス向上や生産性向上に向けた取り組み、人材育成や感染症対策などPRに関する取り組みです。
たとえば、ネット販売システム導入や業務効率化を目的とした共通システム開発にかかった費用、感染防止対策ガイドライン研修など人材育成に係る費用や感染防止対策などPR実施費用などが対象となります。
制度の対象となる事業者
制度の対象となるのは、東京都内に事務所があり、旅行者向け事業を営んでいる観光関連業界団体です。
東京都内に営業施設のある4社以上の中小企業観光関連事業者で構成されるグループであり、グループ内で中小企業者が半数以上を占めていることも必要とされます。
補助率と補助額
募集期間は令和4年1月31日までとなっていますが、補助金申請額が予算額に達した時点で受付終了となるため、早めに申請したほうがよいでしょう。
補助限度額は1団体(グループ)2,000万円で、補助対象経費の3分の2以内となっています。
なお、補助対象期間は交付決定日から令和4年2月28日までです。
申請方法については、東京産業労働局「観光業界における経営課題解決促進事業」を参考にしてください。
中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業
コロナ禍では密閉空間を避けるために換気が求められていますが、空調利用においてもエネルギー消費量と二酸化炭素排出量増加を抑制していく必要があります。
そこで東京都では、中小規模の事業所を所有または使用している中小企業者に対し、換気確保とエネルギー消費量・CO2排出量増加抑制が可能となる換気設備と空調設備導入を支援しています。
助成の対象となる事業者と設備
助成の対象となるのは中小企業者と、中小企業者と共同で事業を実施するリース事業者またはESCO事業者です。
そして助成の対象となるのは次に挙げる設備です。
- ・換気設備(更新・増設・新設)…高効率換気設備・熱交換型換気設備(工場・私立学校など一部事業所のみ対象)・換気・空調一体型設備(高効率空調設備の助成要件を満たす設備が対象)
- ・高効率空調設備(更新)…電気式パッケージ形空調機・ガスヒートポンプ式空調機・中央熱源式空調機・ルームエアコン(いずれも更新で省エネ化が見込まれることが必要)
助成率と助成額
助成対象となる経費は、助成事業の実施にかかった設計費・設備費・工事費・処分費などです。
助成率は2分の1、補助上限額は1,000万円となっています。
助成対象となる事業の要件
助成対象となる主な要件として、
- ・東京都内で所有または使用する中小規模事業所での導入であること
- ・助成対象設備を導入する事業所について地球温暖化対策報告書を提出すること(工事完了時および工事完了翌年度から3年間)
- ・換気設備導入により事業所における必要換気量の確保がされること
など満たすことが必要です。
また、令和3年4月1日から募集開始日前日までに契約・発注した経費で、事業の要件をすべて満たすものは助成対象となります。
申請方法については、東京環境局「中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業」を参考にしてください。
廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業
脱炭素社会および地域循環共生圏の構築に向け、必要となる経費の一部補助を行う事業です。
なお、事業のうち「廃棄物エネルギーの有効活用によるマルチベネフィット達成促進事業」はすでに公募が終了していますので、まだ公募中の「中小企業等におけるPCB使用照明器具のLED化によるCO2削減推進事業」についてご説明します。
この事業は、使用中のPCB使用照明器具をLED照明器具に交換することで発生するPCB廃棄物の早期処理と省エネ化を同時達成が可能と認められる事業に対し、照明器具のPCB使用有無の調査費用とLED照明器具交換にかかる費用の一部が補助されます。
補助対象となる事業
中小企業などでPCB使用照明器具のLED化によるCO2削減推進事業の対象となる事業は、
- ・PCB使用照明器具の有無にかかる調査事業
- ・PCB使用照明器具をLED照明に交換する事業
- ・PCB使用照明器具の有無にかかる調査とPCB使用照明器具をLED照明に交換する事業
です。
公募実施となる期間
中小企業などのPCB使用照明器具のLED化によるCO2削減推進事業の公募期間は、令和3年5月24日から令和4年1月31日までで、15時必着となっています。
なお、公募実施期間であっても、予算額に達したときにはその時点で受付終了となりますので注意してください。
申請方法については、環境省 令和3年度「廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業」の公募についてを参考にしてください。
占用許可基準緩和によるテラス営業支援事業
道路占用許可基準の緩和措置などを活用し、テラス営業など行うときに必要となるイスやテーブルなど、新しく設備を調達する上でかかった経費の一部が助成される制度です。
道路占用許可基準の緩和措置とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店など支援する緊急措置のことです。
地方公共団体・地域住民・団体などが一体になり取り組む沿道飲食店などが、テラス席を設けたりテイクアウトを実施したりするときに路上営業を行う基準が緩和されます。
なお、テラス営業を希望するエリアの道路占用許可申請状況や、そのエリアをどの商店街が管轄しているかなどは各区市町村の商工振興部門に問い合わせ確認しておく必要があります。
申請の対象となる事業者
制度申請の対象となるのは、次の要件を満たす個人事業者を含む東京都内の中小企業者です。一般社団法人・一般財団法人・特定非営利活動法人なども対象に含まれます。
また、
- ・テラス営業を行う場所が新型コロナウイルス感染拡大防止の基準緩和による道路占用許可を取得しており、許可書などの写しを提出できること
- ・保健所からも許可を取得し、許可書など写しを提出できること
などが必要です。これまでに本助成で交付決定されている事業者は申請できませんので注意しましょう。
助成率と助成額
助成対象となるのは、イスやテーブルなど新しく購入するときの経費で、令和3年2月27日から令和3年9月30日までに調達するものが対象です。
助成限度額は10万円(申請下限額1万円)で、助成率は3分の2以内となっています。
申請受付期間は令和3年8月31日(必着)までで、不備や不足があると審査対象外になるため、申請書類は必ず事前にミスがないか確認し余裕をもって郵送するようにしましょう。
申請方法については、東京都中央企業振興公社「令和3年度 占用許可基準緩和によるテラス営業支援事業」を確認してください。
令和3年度 TOKYO戦略的イノベーション促進事業
東京都内の中小企業などが「イノベーションマップ」に基づき、自社のコア技術を基盤に社外の知見・ノウハウを活用し行う革新的技術・製品開発を支援する事業です。
イノベーションマップとは、東京都が抱えている課題解決に向けて、成長産業分野での開発支援テーマと技術・製品開発動向などを示したものです。
開発段階を分け、期ごとに進捗が確認され、一部助成金が支払われることもあります。
また、原材料費・産業財産権出願費・広告費・人件費など幅広い経費が対象となり、製品開発や事業化支援などの経験がある連携コーディネータが技術開発・知的財産権取得・販路開拓など支援してくれるのも特徴です。
事業が完了した後のアフターフォローも最大1年間受けることができ、事業化の進捗状況に応じてマーケティングや販路開拓など継続支援してもらえます。
助成率と助成額
事業の対象となるのは、
- ・東京都内の本店または支店で実質的な事業活動を行う中小企業者 (会社・個人事業者)
- ・東京都内で創業を具体的に計画している方
です。
助成限度額は8,000万円(申請下限額1,500万円)で、助成率は助成対象と認められる下記の経費の3分の2以内が助成率となっています。
助成の対象となる経費は、
- 原材料・副資材費
- 機械装置・工具器具費
- 委託・外注費
- 専門家指導費
- 直接人件費
- 規格等認証・登録費
- 産業財産権出願・導入費
- 展示会等参加費
- 広告費
です。
助成の対象となる期間は令和4年1月1日から令和6年12月31日まで(最長3年)となっています。
申請方法については、東京都中小企業振興公社「令和3年度 TOKYO戦略的イノベーション促進事業」を参考にしてください。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金、どちらも国・地方公共団体・民間団体から支出され、原則は返還不要の資金を調達できることが特徴です。
2つの制度の違いは、
- ・補助金は予算が決まっており、抽選や早い者勝ちになることがある
- ・助成金は要件を満たせば支給されること
といったことが挙げられます。
まとめ
現在、東京都で公募中・申請可能な補助金・助成金についてご紹介しました。
助成金は資料を事前に準備しておけば支給される可能性が高く、国や自治体の情報を確認し公示されたときに申請しましょう。
自治体や助成金によって、申請する前に現地調査が必要になることもあるため、申請のタイミングが遅れてしまうと支給されるまで時間がかかることもあります。
補助金は募集期間が比較的短いため、普段から事業計画書を作成しておくといった事前準備をしておくことが望ましいといえます。
どちらも返還不要の資金ではありますが、制度の性質上、自社負担が発生することもあります。また、後払いとなるため先に立て替えておく資金が必要となることも留意しておいてください。
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