融資を受けようという場合、利息をどのくらい支払うことになるのか気になるところでしょう。
金融機関から融資を受けて資金調達に成功したいと考えても、後の返済負担を考えるとできるだけ金利は低く抑えたいものです。
そこで、融資を受けたときに負担する利息を決定づける金利は、いったいどのように決まるのかご説明します。
目次
中小企業は利息を負担しても融資を受けたいもの?
中小企業や個人事業主が資金調達するときの方法の1つが融資を受けることですが、金融機関にも民間の銀行・政府系金融機関・ノンバンクなどがあり、借入先により審査のハードルや金利が違ってくるため利息の負担も変わります。
政府系金融機関であれば、中小企業に対する貸付にも積極に対応してくれますが、民間の銀行などは審査が厳しいため、申し込みから融資が実行されるまで一時間がかかりがちです。
ノンバンクから融資を受けるときには審査のハードルは低めでも、金利が高めに設定されるので利息負担が重くなってしまいます。
それぞれの特徴を踏まえた上で、利息を支払ってでも融資を受けて資金調達するべきか検討するべきといえます。
利息は資金の調達先により変わる
金融機関といっても、国が出資・運営する政府系金融機関の他、都市銀行・地方銀行・信用金庫など預金を扱う民間の銀行や預金機能のない消費者金融などノンバンクがあります。
利息の負担はこれらの金融機関のどこから融資を受けるかにより変わってきますが、合理性などを踏まえた上で判断することが必要です。
それぞれの金融機関で負担する利息を決める金利は、どのように設定されるか、その特徴について把握しておきましょう。
民間銀行から融資を受ける場合に設定される金利
民間の銀行は、いざというときに国からサポートを受けることが可能である政府系金融機関と違って、営利目的で自行の利益を優先しなければなりません。
そのため融資審査も厳しいハードルを設けていますが、主に「信用格付け」を基準に融資可否や設定する金利を決定します。
決算書の内容や信用情報などから企業をスコアリングで分類していきますが、民間銀行が中央銀行からお金を借りるときの政策金利が低いため、銀行が資金を貸し付けるときの金利も昔ほどは高くありません。
優良中小企業向け融資の短期プライムレートは1.8~2%、一般企業であれば2~3.5%が相場といえるでしょう。
なお短期プライムレートとは、良好な業績や財務状況の最優良企業に対して融資を行うときの最優遇貸出金利(プライムレート)における1年以内の短期貸出金利のことです。
政府系金融機関から融資を受けるときの金利
政府系金融機関とは、国が出資し運営する金融機関のことで「日本政策金融公庫」などが挙げられます。
小口資金を扱う国民生活事業や中小企業向け融資を扱う中小企業事業、農林水産業の長期融資を扱う農林水産事業など3種類の融資制度があります。
一般的中小企業が日本政策金融公庫から融資を受けるときには、中小企業事業の融資で資金調達することとなります。ただしどの企業でも融資を受けることができるわけではなく、業種・資本金・従業員数などで定めがあるため要件を満たすことも必要です。
中小企業事業にもいろいろな融資制度が設けられており、たとえば「新事業育成資金」は創業5年以内が対象ですが、融資限度額は6億円の上20年以内という融資期間で設定できます。
ただし新規性と成長性のある事業を行っていなければ、融資を受ける対象の企業とは認められませんので注意しましょう。
他にも小売業や飲食業などを対象として、店舗の新改築費用や設備投資費用を借りることができる「企業活力強化資金」もあります。
廃業歴がある場合でも所定の要件を満たせば融資を受けることが可能な「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」、情報化投資を行う企業を対象とした「IT活用促進資金」など様々な融資制度が設けられています。
日本政策金融公庫の基準利率は1.11%で、特定要件を満たすと特別利率が適用され、さらに有利な金利で融資を受けることが可能です。民間の銀行よりも金利が低く設定されるため、利息負担を最小限に抑えることが可能となるのは最大のメリットといえるででしょう。
ノンバンクから融資を受けるときの金利
日本政策金融公庫は預金を扱わない金融機関ですが、ノンバンクも同様です。
ただしノンバンクは民間の企業であり、営利を目的として運営されているため、資金を貸し付けたときに債務者から支払われる利息がなければ経営が成り立ちません。
審査のハードルが低く最短で即日融資を受けることが可能になるケースもありますが、その反面で金利が高く設定されてしまい、利息負担が重くなりがちです。
平均的な金利は5~18%なので、財務体力が十分でない中小企業にとっては厳しいといえます。ただ、緊急的に資金を準備しなければならないときなど、一時的な資金確保やつなぎ資金の調達先としては非常に便利です。
利息を決定づける要素とは
金利は金融機関ごとに設定される高さが異なりますが、政府系金融機関<民間銀行<ノンバンクの順です。
支払う利息を左右する金利を決めるのはそれぞれの金融機関ですが、お金を借りる企業の信用により決まることが多いといえます。
日本政策金融公庫などの場合、事前に国が定めた基準などに基づき利率が決定されますが、国際金利や市場動向など経済的な要因により都度変動します。金融機関独自の判断などで変更されることはありません。
しかし民間の銀行などは短期プライムレートなどを基準にして、信用状況などにより金利を決定します。融資を受けたい企業の信用力が高いと判断されれば、短期プライムレートに近い利率を設定し、低い信用力の企業には高い利率を設定することになります。
安定した事業で資金を貸し付けても遅れず返済される可能性が高く、貸し倒れリスクが低いと判断されれば信用力も高いと認められます。
信用力が低ければ貸し倒れリスクが高いと判断され、貸倒引当金も多く積まなければならず、それを補うためにも高い金利が設定されるという仕組みです。
融資を受けるときの利息を下げたいなら
融資を受けるときに設定される金利が、お金を借りようとする企業の信用力によって変わるのなら、金利を引き下げ負担する利息を抑えるために次のことを実行しましょう。
- ・業績を向上させ決算書を黒字に
- ・経営計画書を作成・提出し予実管理を行う
- ・「中小企業の会計に関する指針」に従う会計処理を行う
業績を向上させ決算書を黒字に
決算書が赤字では信用力は高いとはみなされず、融資を受けることさえ難しくなるため注意しましょう。
自己資本率・債務超過の傾向・売掛金や棚卸資産なども含め、総合的に評価されることになります。
信頼される状況を作ることができれば、中小企業でも金利を抑えて融資を受けることが可能となると考えられます。
経営計画書を作成・提出し予実管理を行う
目標とした予算と実績を比較し達成状況を管理することを「予実管理」といいますが、銀行などに事業計画を提示することによって信用力を向上させることも期待できます。
返済能力の有無が慎重に判断されることになるため、精度の高い資金繰り表を作成し健全性と計画性をアピールできるようにしておきましょう。
経営者が事業を見通していることをアピールする上でも必要なことです。
また、事業計画書は銀行の格付け基準である書類の1つなので、決算書の内容が良好といえない場合でも事業計画書の内容から将来性が期待されれば交渉が有利になることもあります。
中長期的な損益計画や裏付けとなる市場データ、実現方法などを盛り込んだ事業計画書を作成するようにしてください。
「中小企業の会計に関する指針」に従う会計処理を行う
また、「中小企業の会計に関する指針」とは日本商工会議所・日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・企業会計基準委員会などによる会計指針であるため、この内容に従った適切な会計処理を行うことで健全性が認められ信用度を高めることにつながるはずです。
適切な会計処理は審査で重視されるポイントのひとつであると認識しておいてください。「中小企業の会計に関する基本要領」を活用した決算書は信用力が高いと判断され、金融機関の融資をスムーズに進めることにつながる可能性も期待できます。
固定金利か変動金利かにより負担する利息も異なる
金利にも「固定金利」と「変動金利」という種類があり、どちらを採用するかによっても負担する利息は変わってきます。
「固定金利」では、融資を受けるときに金融機関と決めた利率が完済するまで変わることがありません。
金融機関は経済情勢などにより金利も変動させるものですが、固定金利では当初決定した利率を完済するまで変更しない契約です。経済情勢が良好になっても悪化しても、金融機関の経営状態の変化にも関係なく、利率はそのまま変わりません。
それに対し「変動金利」では、金融機関の短期プライムレートを基準に利率が変動していきます。短期プライムレートは経済情勢の影響を受けやすいため、景気がよくなれば借入金の利率も上がり、利率が上昇すれば企業の負担する利息も増えます。
どちらが得かは将来の金利動向により判断することとなりますが、将来の金利については正確な予測は難しいといえます。
ただ、融資を受け途中からもう一方の金利に変更することは難しいため、慎重な判断が必要です。
一括返済と分割返済による利息の違い
金融機関から融資を受ければ必ず元金と利息を返済しなければなりませんが、「一括返済」か「分割返済」かによっても支払う利息は異なります。
「一括返済」とは返済期日に借りたお金をすべて返済する方法ですが、支払う利息は固定金利または変動金利で決定された金額を返済日までに支払います。元金部分は変わらないため、利率も元金を基準に計算されます。
「分割返済」では、決められた完済日までに複数回に分け、借入金を返済する方法です。
返済を続けることで、完済日まで元金は減少していくこととなり、支払う利息もそれに応じて減少していく形です。
元金均等返済と元利均等返済によって支払う利息は大きく異なる
分割返済する場合、「元金均等返済」と「元利均等返済」の違いも理解しておくことが必要です。
どちらの返済方式が採用されるかにより、負担する利息は大きく異なってきます。
まず「元金均等返済」は、毎月一定の元金を返済し続ける返済方法で、完済するまで借入金総額を一定期日ごとに均等分割します。
返済し始めた当初は大きな借入金残高に対する利息が発生するため、返済負担が大きく感じるものですが、元金の返済が進んでいくことで負担する利息も減少していきます。
もう一方の「元利均等返済」は、毎月、元金と利息の合計額を均等にする返済方法です。
毎月一定金額を返し続けることとなるため、返済計画を立てやすいことはメリットです。
元金均等返済よりも返済初期の負担は軽いですが、返済額と支払う利息の合計額がずっと同じなので、初期に元金部分を多く返済できません。利息ばかり支払い現金を減少させることができず、利息を含む支払総額が多くなってしまうことはデメリットといえます。
利息の計算方法
銀行から融資を受けたときの利息は、次の計算式で算出されます。
利息額=借入残高×金利率×借入期間
分割返済の場合には、元金均等返済と元利均等返済のどちらを採用するかによって計算方法が次のように変わります。
元金均等返済
毎月の元金返済額=借入金額÷返済回数
利息額=直前残高×月利(年利/12)
毎月の返済額=毎月の元金返済額+直前残高の利息額
元利均等返済の場合
毎月の返済額=借入額×月利×(1+月利)返済回数/(1+月利)返済回数-1
まとめ
融資を受けるときに負担する利息をできるだけ抑えたいのなら、融資の審査基準となる信用力を高めることが必要です。
特に銀行融資では企業ごとに決算書の成績を重視した格付けを行っているため、格付けを高める取り組みを実施していきましょう。
の審査基準となるため、金利にも大きく影響します。格付けでは決算書の成績が重視されるので、評価を上げる取り組みを実施するようにしてください。
また、融資を受けて資金調達する場合には審査に時間がかかるときもありますので、つなぎ資金が不足したときには売掛金を売却し資金調達するファクタリングなどを併用することもおすすめです。
ファクタリングは売掛金の売買であり、融資を受ける方法ではなく利息も発生しません。決算書を汚すこともないため、安心して資金調達に利用できます。
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