運転資金を工面することは、会社を運営する上ですぐに必要となるお金を工夫し集めることです。
経済産業省の「平成28年経済センサス-活動調査(平成30年6月28日公表)」によると、会社経営している方は日本国内で約386万人、32人に1人が会社を経営しており資金の工面で頭を悩ましているといえます。
会社を立ち上げ経営していても、毎年8千社以上が倒産しているのは、事業運営に必要な運転資金を工面できなくなってしまうからでしょう。
業績不振・過小資本・売掛金の回収難など資金を必要とする場面は多岐に渡りますが、適切な時期に必要な金額を工面することはなぜ必要なのか、どうすれば調達できるのか解説していきます。
目次
株式会社は資本金1円でも設立可能
新会社法が施行されたことで、それまで株式会社は1千万円、有限会社は300万円必要だった最低資本金制度は撤廃されました。
これにより、資本金1円でも株式会社を設立できるようになり、有限会社は廃止され合同会社の設立が可能となっています。
他にも役員要件は緩和され取締役会の設置が必須でなくなるなど、従来よりも法人として事業を営みやすくなったといえるでしょう。
資本金1円でも株式会社が設立できることやコストを抑えて法人設立が可能な合同会社が注目されるようになり、起業ブームも起こりました。
簡単に会社を設立できることはメリットではあるものの、十分な経営ノウハウなどを持たない経営者も増やすこととなり、資金工面などもできず倒産してしまう会社を増加させているとも考えられます。
また、1円で起業してしまうと、後になって次のようなデメリットを感じることとなるでしょう。
銀行など金融機関から融資を受けるとき審査に通らない
銀行など金融機関から融資を受けるとき、審査では会社の基本情報も確認されますが、資本金も重要視される要素の1つです。
資本金は自己資金がどのくらいあるかをあらわすため、事業の体力が乏しいと判断されれば審査は不利になり、融資を受けることが難しくなると考えられます。
会社の信用力の低下
資本金の金額で会社の信用力も評価されることとなるため、取引先が信用調査を行ったときに不利となる可能性があります。
また、評価が低いことを理由に銀行口座の登録を拒否されてしまうと、掛けによる仕入れはできなくなりすべて現金取引となってしまうでしょう。
さらに販売後の入金口座も存在しなくなると掛け売りもできなってしまうため、こちらも現金決済で対応するしかなくなります。
事前に準備しておきたい運転資金
まず会社を設立するときには、資本金は運転資金として準備することになります。会社規模に合わせ、半期~1年の運転資金を準備しておくと、翌年も利益を出し運転資金を保有しながら会社を継続できるでしょう。
売上から経費を差し引いた分が利益ですが、その利益に対する税金の支払いが必要です。税金を納めた後に残った分が翌年の運転資金です。
キャッシュフローが重要な理由
運転資金とは資本金と回収した売上代金のことで、原価や販売管理費など経費を差し引いた分をキャッシュフローとします。
会社経営においてキャッシュフローは重要とされるのは、お金の流れを間違って把握してしまうと黒字でも倒産してしまう可能性があるからです。
黒字なのになぜ会社が倒産してしまうのか不思議に感じる方もいるでしょうが、確かに売上が伸び利益も増えて黒字であれば事業は好調といえます。
しかし将来回収するはずの資金がまだ入金されていなくても、売上は先に計上されるため、利益は発生しているのに手元に現金がなくなれば様々な支払いができません。
手元にお金がないのに、家賃・従業員の賃金・仕入れ代金・外注費など様々な支出が必要となり、支払いができなくなれば会社は倒産します。
販売した商品が60日後に入金される予定でも、先に仕入れ代金を30日後に支払わなければならない場合、その支払いに充てる資金を工面できなければ倒産してしまうということです。
会社はなぜ資金を工面し続けることが必要か
会社が運営を続けるために必要なお金を運転資金といいますが、事業活動を順調に進めるための血液のような役割を担います。
血液が血管内で詰まったり貧血になったり、不足することや循環しなくなることは人の生命の危機を及ぼします。
会社経営のおいてもお金の流れをスムーズにし、ときには工面しながら不足しないようにすることが必要です。
会社経営で欠かせない運転資金の種類
主に会社経営で欠かすことのできない運転資金は、銀行などの金融機関で次の5種類に分類されています。
どの種類の運転資金が必要なのか、自社の状況を踏まえてしっかり考えておくことが必要となります。
金融機関の融資審査では、どの運転資金が必要であるか重要なため、銀行に融資の相談や申し込みをするまえに検討しておくことが大切です。
経常運転資金
通常の事業で発生する資金を「経常運転資金」といい、「正味営業運転資金」とも呼ばれています。
仕入れ代金(買掛金)の支払いや、家賃や従業員の賃金の支払いなどが該当し、次の計算式で求めることができます。
経常運転資金=売掛債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金+支払手形)
増加運転資金
会社の売上が順調に伸びたことにより追加で必要となるのが「増加運転資金」です。
売上が増えれば、仕入れも増やさなければなりませんし、人手を補うため人件費も増えていきます。
計上された売上代金(売掛金)が回収できるまで、増えた仕入れ代金や人件費などの支払いに充てる資金を工面しなければなりません。
業績が伸びていることを理由に必要となる運転資金のため、銀行など金融機関などに融資を受けたいと相談しても、前向きに対応してもらえることが多いと考えられます。
減少運転資金
すでに発生している仕入れ代金の支払いや従業員の給料を、売上が減少している中で支払わなければならないこともあるでしょう。
減少した売上に対し、先に到来する債務の支払期日に対応するための運転資金が「減少運転資金」です。
増加運転資金とは反対の状態であり、売掛金などが期日に回収できれば企業活動も通常に復帰できるとも考えられます。
そのため売掛金入金と仕入れ代金などの支払い期日のタイムラグを埋めるための資金を工面することが必要です。
減少した売上回復などに向けた事業計画を立てておかなければ、銀行など金融機関からの融資は受けにくくなる可能性もあると留意しておいてください。
季節性運転資金
特定の時期に繁忙期が訪れる産業や業界の場合、その時期を乗り切るための「季節性運転資金」が必要です。また、夏期や冬期の従業員の賞与などに充てる資金も季節性運転資金に該当します。
会社の業績により賞与を支払うか決定する場合もあるため一概にはいえませんが、季節性運転資金は1年以内に金融機関に返済する短期借入金で契約し、お金を借りることがほとんどでしょう。
設備未払金決済運転資金
機械・設備など購入するための設備資金は、運転資金とは異なる性格の資金と認識されており、工面するルートも多少違ってきます。
銀行などから融資を受けて資金調達する場合も、使用使途や事業計画も明確な設備資金は他の運転資金より優遇されると考えられるでしょう。
設備購入後、半年以内なら設備投資とみなされ優遇された条件で資金調達できることも少なくありません。
ただ半年を経過すれば設備投資とみなされないため、別の運転資金として資金を工面しなければならなくなります。そのとき、銀行融資で資金を工面しようとしても、対応してもらえない可能性もゼロではありません。
設備投資資金が不足してしまい設備未払金決済運転資金になってしまわないように、半年以内に設備資金を工面したほうが賢明です。
運転資金を工面する方法はいろいろ
会社経営で必要となる運転資金を工面する方法は銀行から融資を受ける以外にもいろいろあります。
中小企業などが資金を工面する方法として真っ先に思い浮かぶのは銀行融資でしょうが、不動産を担保に差し入れことや代表者が保証人になることを求められることが一般的です。
しかしどの中小企業も不動産などを保有していると限らず、銀行から融資を受けて資金を工面できるとは限りません。
もし銀行融資で資金を工面できない場合には、次の方法も検討してみましょう。
出資を募って資金を工面
創業者以外から出資してもらうことで、資本金を増やし資金を調達する方法です。
単にお金が不足しているという理由で出資してくれることはないため、資金を投入することで将来、会社が成長していくことを認めてもらえる事業計画を立てることが必要といえます。
銀行以外から融資を受けて資金を工面
銀行からお金を借りるのではなく、政府系金融機関の日本政策金融公庫や自治体からの制度融資、信販会社などのビジネスローンなどから融資を受ける方法もあります。
ファクタリングで資金を工面する
ファクタリングとは、売掛金を現金化させて資金を工面する方法です。キャッシュフローが悪化しやすくなる売掛金回収までの間、期日よりも前に売掛金を現金化させることで資金繰りが改善されます。
仕入れ代金などの支払いが売上代金入金よりも前に発生する場合、お金を借りずに資金を工面できるのもメリットです。
運転資金を工面するときのポイント
運転資金を工面する方法は銀行など金融機関から融資を受ける以外にもありますが、ハードルが高めの銀行融資を希望するのなら次のポイントを押さえておくようにしましょう。
運転資金を必要とする理由は明確に
銀行など金融機関に対し、運転資金を借入れたいと相談するのなら、なぜ運転資金が必要になったのか明確に説明できるようにしておきましょう。
単に日々の事業活動用の資金が不足したからという理由だけで、融資を受けることができるほど甘くありません。
明確に理由を伝えることができれば、実際に融資が実行された後でどのような対策を取っていくべきか金融機関側と一緒に考えることもできます。それに対応するサポートも受けることが可能になることも期待できるでしょう。
工面しなければならない金額はいくらか
金融機関から運転資金を工面する場合、まず必要な資金がいくらか示すことが必要です。
設備投資で資金を工面しなければならないのなら、機械や設備の購入代金や工場拡張の工事代金などを必要金額とすればよいでしょう。
しかし運転資金の場合、仕入れ代金や賃金などが必要金額となります。
運転資金としてできるだけ多くお金を借りたいと考える経営者もいるでしょうが、必要以上の借入希望金額で設定すると融資を断られる可能性も考えられます。
返済能力を超える負債を抱えることは望ましいといえないため、自社の体力を見極めた上で必要な金額を提示するようにしてください。
いつまでに工面しなければならないか
銀行など金融機関から融資を受けるのなら、いつまでに運転資金を工面しなければならないか伝えておきましょう。
仕入れ代金の支払いに充てる運転資金を必要とするのなら、取引先と取り決めた期日までに工面しなければなりません。
賞与などに充てる資金なら、賞与支払い日までに資金を調達しておく必要があります。
ただし銀行などは審査に時間がかかるため、できるだけ早めに相談や申し込みを済ませておかなければ期日や必要な日に間に合わなくなる可能性もあるため注意しましょう。
具体的な返済計画を立てておく
運転資金を銀行など金融機関から借りれば、元金だけでなく利息も返済することになります。
そのため融資を受けるときには、返済となる原資はどこから捻出するのか、分割または一括などどのような方法でいつまでに返すのか申請できなければなりません。
この返済計画をしっかり立てておかなければ、結果的に会社の資金繰りは悪化してしまいますので、体力以上の借金を抱えない余裕を持った返済計画を立てておきましょう。
まとめ
企業経営で資金を工面することは大切なことですが、銀行など金融機関から融資を受ける以外にもいろいろな方法で調達できます。
もし運転資金を銀行から融資を受けて工面する場合には、設備投資の借入れよりも審査が厳しくなり、普段の取引状況に影響されると留意しておくべきです。
運転資金は会社の日々の運営状況自体が審査対象となると考え、普段から銀行の担当者と良好な関係を築いておくことも必要といえます。
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