新しく事業を開始したいときや起業したいときなど、新規でビジネスを始めるときには銀行などからの資金調達を考えることとなります。
円滑にビジネスを開始し進めていくためにも、銀行に相談して資金調達することが最善と考える方もいることでしょう。
しかし事業活動において資金調達は欠かせない作業であり、資金の使途や目的、必要とするタイミングなどにより銀行以外の方法を活用したほうがよい場合もあります。
そこで、事業資金を調達する方法の種類と、それぞれどのような内容なのか解説していきます。
資金調達の前に事業計画の策定を
これから事業を開始しようとするとき、まずはどのように資金を調達するのか考えなければなりません。
融資を受けて資金調達するときには、どのくらいなら借入れが可能になるのか気になるでしょうが、まずは審査で事業を認めてもらうための「事業計画」を立てましょう。
これから起業する場合には、過去の実績がなく将来的にどのくらい売上を上げ、利益を得ることができるのか予測しかできません。
融資を受けたくても、その予測を銀行に認めてもらえなければ資金調達に至らなくなってしまうため、資金の使途や「返済計画」なども含めた説得力のある事業計画を策定することが求められます。
事業計画を策定する上で必要なこと
事業計画を立てて書面化しただけで銀行融資などの審査に通るわけではありません。
資金の借入れには一定額の自己資金を準備しておくことが必要です。
これから起業するという場合には、少なくとも3分の1程度の自己資金は準備しておいたほうがよいですが、政府系金融機関の日本政策金融公庫の「創業融資制度」でも自己資金の割合が要件となっています。
資金調達の方法は銀行融資以外にもある
法人として起業する場合でも、「最低資本金制度」が廃止されたため、資本金1円でも会社設立が可能になりました。
しかし資本金を準備せず起業した場合でも、事業を続ける上で手元に最低限のお金が必要です。
手元に現金がないのなら調達することが必要ですが、銀行融資はその方法としてもっともメジャーといえます。
ただ、起業したばかりで実績のない会社や信用力の低い事業者に対し、銀行も簡単に融資を受けさせてはくれません。
「信用保証協会の保証付き融資」や「不動産担保融資」などがメインとなり、代表者が連帯保証人になることを求められるケースも少なくないといえます。
ただ、資金調達の方法は次のように銀行融資以外にもいろいろありますので確認しておきましょう。
家族や友人からお金を借りる
家族や親しい友人などからの借入れで資金調達すれば、制約も課されることなく自由な条件でお金を借りることができます。
銀行などの金融機関と比べると、融通が利きやすい点はメリットですが、仮に経営悪化により返済が難しくなってしまえば人間関係にヒビが入る可能性もあります。
気軽に借りるのではなく、借りたお金は必ず返すと決め、リスクについても把握した上でお願いすることが必要です。
ビジネスローン
銀行融資などを受けにくい中小企業などに向けた「ビジネスローン」であれば、審査のハードルも低く無担保・無保証人でお金を借りることができます。
その反面で金利が高めに設定されているため、利用期間が長くなれば返済額も増し、毎月の返済負担が重くなってしまいます。
長期利用は資金繰り悪化につながる可能性があるため、一時的な資金調達に利用するなど注意しておくことが必要です。
手形割引
支払期日前の手形を現金化させる「手形割引」なども資金調達の方法として挙げられますが、表向きは手形の売却という形式であるものの、実質は融資を受けることになります。
そのため、手形振出人が期日に決済できず、不渡りを出してしまうと割り引いた手形を買い戻さなければなりません。
貸し倒れリスクまでは移転されないことを理解した上で、資金調達に活用するようにしてください。
法人カードでキャッシング
会社などの接待費や出張費といった経費支払いに利用するクレジットカードが「法人カード」ですが、このカードに付帯されているキャッシング機能でお金を借りれば資金調達が可能です。
法人カードの発行の審査も比較的通りやすい上に、金利も低めであることはメリットですが、発行まで一定の時間がかかります。
また、銀行融資を受けるよりも金利は高めですので、こちらもビジネスローン同様に利用し続ければ資金繰りが悪化してしまうと留意しておいてください。
私募債
個人や会社関係者など、特定の相手にのみ発行する社債を「私募債」といいます。
証券会社などで投資家に社債を発行する「公募債」と違い、社債発行にかかる手間や手数料を抑えることができます。
「償却期間」や「方法」なども自由に設定できますが、償却期限を迎えたときには元金一括払いでの返済が必要です。
社内預金制度
働いている従業員が会社にお金を預ける制度を「社内預金制度」といいますが、会社は預かった預金を使い事業拡大や設備投資資金に充てることができます。
低金利で資金調達を可能とする点がメリットであり、預金する従業員も高い利息が付きます。
ただ、比較的少額の資金しか集まらないため、事業拡大や設備投資などの規模によっては適さない方法といえます。
国や自治体からの公的融資
国や自治体からお金を借りる公的融資には、政府系金融機関・地方公共団体・信用保証協会の保証付という3つの種類があります。
このうち「政府系金融機関」には中小企業や個人事業主を対象とした融資を行う「日本政策金融公庫」と、中小企業団体(商工中金株主団体)の構成員であり条件を満たした企業を融資対象とする「商工組合中央金庫」があります。
「地方公共団体の制度融資」は、それぞれの都道府県や市区町村による制度融資です。
「信用保証協会の保証付融資」は、銀行などの金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が保証するため信用力が低い会社でもお金を借りやすくなります。
民間銀行からの一般的な融資よりも金利も低く、信用力低めの中小企業でも借りやすいため資金繰りに活用しやすい点はメリットです。
融資を受けず資本を増やして資金調達
銀行などから融資を受けなくても、お金を借りれば負債を増やすことになります。
できるだけ借金を増やしたくないという場合には、次のように資本を増やして資金を調達する方法もあります。
ベンチャーキャピタル
投資専門の会社である「ベンチャーキャピタル」は、ベンチャー企業にお金を出資し、その会社が上場するときに資金を回収し利益を得ることを目的としています。
そのため将来性が高く見込める企業でなければ出資してもらうことはできません。
将来的なビジョンやIPOの可能性などいろいろな項目での審査が行われるため、簡単に出資してもらえるわけではないと留意しておいてください。
中小企業ファンド
ベンチャーキャピタルなどが設立した「投資事業有限責任組合」を「中小企業ファンド」といいます。
中小企業やベンチャー企業に対し投資することを目的として設立されますが、目的に合ったファンドを組成し、投資家から集めた資金は「組合員」に「出資」という形で分配されます。
独立行政法人「中小企業基盤整備機構」と共同でファンドを設立していることも多いですが、このケースであれば投資会社のリスク低く、出資を受けやすくなります。
エンジェル投資家からの出資
「エンジェル投資家」とはもともと起業家として成功した方や、富裕層が個人で投資家として活動しているケースです。
起業したばかりという場合や、これから起業するという方にも投資を行う投資家であり、日本でも増えています。
出資した見返りとして、「株式」や「転換社債」などを受け取るエンジェル投資家がほとんどですので、経営に関与してくる可能性もあることを踏まえておく必要があります。
クラウドファンディング
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などに事業を認めてもらえば、一度に多額の資金を投資してもらうことが可能です。
しかし実際には簡単なことではなく、そもそもどこで投資家と接触できるのだろう?と考えてしまう経営者もいることでしょう。
そこで近年では、インターネットを通じて不特定多数の方に出資してもらう「クラウドファンディング」といった方法が注目されています。
形態によっていくつかの種類に分けることができ、
- ・物品や権利を購入しプロジェクトを支える「購入型」
- ・寄付金として資金提供しリターンを求めない「寄付型」
- ・プロジェクトに対し資金を投じる「投資型」
などがあります。
銀行融資や出資以外での資金調達の方法
銀行などから融資を受けることは難しく、投資家に出資してもらうこともできない…。そのような場合には、保有している資産を現金化して資金調達しましょう。
資産を売ってお金に換えるため、何を売るかによりますが融資や出資を受けるよりは早く資金を調達できます。
必要なときに資金を得ることが可能となりやすい方法ですが、主に次のようなものが現金化可能な資産として挙げられます。
眠っている不動産や在庫など
会社が保有している不動産や有価証券、ゴルフ会員権などを売却し現金化させる方法も選べます。
ただし不動産は売って現金化するまで一定の時間がかかりますし、有価証券などは購入時よりも価格が下がっている場合には損をする可能性があることは認識しておきましょう。
また、抱えすぎた在庫などもあれば保管や管理にコストがかかるため、思い切って処分することで手元のお金を増やすことができます。
ただし想定していた値段で売れず、利益につながらない可能性は留意しておくべきでしょう。
売掛金も資産の1つ
商品やサービスを販売・提供し、その代金をまだ受け取っていなければ売掛金が発生してします。この売掛金は売上に対する代金を、購入相手に請求する売掛債権という権利であり、資産の1つです。
売掛金を売却し現金化させる方法に「ファクタリング」がありますが、売掛金を買い取るファクタリング会社によっては、即日対応してくれるのでスピーディな資金調達が可能となります。
手数料は発生しますが、手形を売却する手形割引とは異なり、融資を受ける方法ではないため貸し倒れリスクもファクタリング会社に移転できます。
利用後に取引先が破綻し、売掛金の回収ができなくなっても、その責任を負わなくてよい点はメリットといえるでしょう。
保険積立金の取り崩し
積み立てている保険を解約すれば「解約返戻金」を受け取り、手元の資金を増やすことができます。
すぐにお金が必要という場合でも、すぐに資金調達可能である点はメリットですが、解約返戻金は当初受け取る予定だった金額より少なくなることは留意しておくべきです。
また、解約しなくても「契約者貸付」を利用することで資金調達することもできますので、目的に応じて検討するようにしてください。
助成金や補助金で資金調達
中小企業基盤整備機構の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は通年公募している補助金で、対象となるのは中小企業・小規模事業者です。
一般型で原則1,000万円、補助率は中小1/2・小規模2/3となっており、補助対象経費を補助してもらえます。
基本的には中小企業などが設備投資するための費用(機械装置費)が対象となり、経営革新のための費用を負担してもらえることが特徴です。
毎年、数万社の応募がある中で審査項目に合致している度合いが高い企業の採択がなされます。そのため革新性・成長性・収益性・財務基盤を満たすことに加え、後の事務処理もスムーズに行うことができる体制が整っていることも求められます。
まとめ
資金調達の方法は銀行から融資を受けること以外にもいろいろありますが、なぜ資金を調達しなければならないのか、その目的やタイミングにより選ぶ方法は変わってきます。
中小企業の資金調達方法といえば銀行融資がもっとも馴染みがありますが、依存しすぎてしまうといざ銀行から借入れが難しくなったとき、その他の方法を活用できず倒産してしまう可能性も出てきます。
資金を必要とするときはもちろんのこと、普段から資金調達の方法を多様化させておき、様々な手段を活用できるようにしておくことが望ましいといえるでしょう。
新規事業立ち上げや事業拡大以外にも、運転資金や資金繰り改善など、それぞれの目的に合った資金調達の方法を選ぶようにしてください。
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