ビジネスを続ける上では、新規事業や設備投資などを目的とし、様々な方法を使った資金調達が必要になります。
経営者にとって避けることができない資金調達という問題を解決する方法はいくつかありますが、目的に応じた適切な方法を選ぶことが重要です。
そこで、資金調達するための方法にはどの選択肢があるのか知り、最も適切といえる形で資金調達を成功させるようにしましょう。
目次
資金調達方法は大きく分けると3種類
資金調達の方法には、
- 資産を何らかの形でお金に変える「アセット・ファイナンス」
- 誰かお金を借りるなど負債を増やす「デッド・ファイナンス」
- 会社に投資してもらい資本を増やす「エクイティ・ファイナンス」
の3種類があります。
資金調達の方法といえば銀行融資では?と考える経営者もいるでしょうが、実際にはいろいろな方法があるため、目的に応じた形で手元のお金を増やしていきましょう。
1.アセット・ファイナンス
会社が所有している有形資産や無形資産を売って資金調達する方法です。
売却対象となる資産として挙げられるのは、
- ・不動産
- ・自働車
- ・機械設備
- ・在庫
- ・売掛金
- ・有価証券
- ・権利(営業権・商標権・特許権など)
などです。
この中でも在庫は過剰に発生すればコストを発生させるため、売れる見込みがある適正な在庫でないのなら、思い切って処分する決断も必要となるでしょう。
また、売掛金は売掛債権という権利の1つです。商品やサービスを納品・提供し、その代金を請求する権利のことですが、入金されるまで30~60日という時間がかかります。
この場合、ファクタリングという方法を使って売掛金を売却すれば、入金期日よりも先に現金化させ資金調達できます。
アセット・ファイナンスで資金調達するメリットとデメリット
企業の信用力が低下していても、保有する資産の信用力が高ければコストをかけずに資金調達が可能な方法です。
さらに資産を貸借対照表から切り離すオフバランス化も可能なので、財務体質を改善させることにつながり、経営効率が高まることも期待できます。
ただし将来キャッシュを生むことが可能であるなど、資産にそれなりの信用力がなければ買い手が見つからず現金化することはできないでしょう。
2.デッド・ファイナンス
中小企業などが資金調達の方法として真っ先に挙げる銀行融資もデッド・ファイナンスの1つです。
特に政府系金融機関である日本政策金融公庫や商工組合中央金庫、都道府県や市区町村が設けている制度融資、信用保証協会の保証付融資なら低金利で比較的審査にも通りやすいことが特徴です。
民間銀行からお金を借りる場合、信用保証協会が保証する信用保証協会の保証付融資だけでなく、銀行独自の責任で貸し付けを行うプロパー融資もあります。
しかしプロパー融資は貸し倒れリスクを銀行が100%負う形で融資を実行するため、信用力が高いと認められる企業でなければまず利用できません。
まずは信用保証協会の保証付融資で融資を受け、実績を積んで収益性を認めてもらってから検討したほうがよい資金調達の方法です。
銀行融資が難しい場合の方法
プロパー融資はもちろんのこと、信用保証協会の保証付融資も利用できないというケースは、中小・零細企業や個人事業主ではめずらしいことではありません。
信用力が低いとみなされ、銀行融資がむつかしいという場合でも、ビジネスローンであればお金を借りて資金調達が可能なことが多いといえます。
無担保・保証人不要である上に、審査も甘く資金調達までの時間もかからないというメリットが特徴の事業用ローンです。しかし金利が高めに設定されているため、緊急資金が一時的に必要という場合にのみ利用することに留めておいたほうがよいでしょう。
手形割引も融資とみなされる方法
先に紹介したファクタリングは、売掛金という資産を売って現金化する資金調達の方法でした。売掛債権の中でも売掛金を使った資金調達方法がファクタリングであるのに対し、受取手形を使う方法が手形割引です。
商品やサービスを納品・提供したとき、請求書により後日支払ってもらうのではなく、手形で支払いを受け取ったときに活用できます。
手形は売掛金よりも入金されるまでの期間が長いため、現金化まで時間がかかってしまいます。そこで銀行や手形割引専門業者に手形を売却し、決済期日よりも先に現金化させる方法が手形割引です。
ただしファクタリングは売掛金の売買取引であるのに対し、手形割引は表向き手形売却による現金化ですが融資とみなされます。
なぜなら手形割引で割り引いた手形が不渡りになった場合には、その手形を買い戻さなければならないからです。ファクタリングであれば貸し倒れリスクも売掛金を買い取るファクタリング会社が負うため、期日に決済されなくてもその責任を負う必要はありません。
デッド・ファイナンスで資金調達するメリットとデメリット
資金調達先が豊富であり、多額の資金を得やすいことがメリットといえます。発生した利息の支払い分も、税務上、損金として計上できるため税金を抑える上でもメリットがあるといえるでしょう。
ただし借りた元金以外に利息が発生するため、将来のキャッシュフローは減少してしまいます。融資を受けた資金に応じ、自己資本比率も低下するため資金力が低いと判断されてしまうなど、信用力が低くなる点も注意しておく必要があるでしょう。
3.エクイティ・ファイナンス
資本を増やし資金調達する方法がエクイティ・ファイナンスですが、主に株式を交付することと引き換えに出資してもらい、手元のお金を増やす方法といえます。
エクイティ・ファイナンスにもいくつか種類があり、たとえば第三者割当増資では既存株主ではない第三者に新しく株式を発行し増資することで資金を調達する方法です。
他にも将来性の見込める企業に出資し、投資した企業が上場した後で資金を回収し、利益をあげることを目的とするベンチャーキャピタルという投資専門会社もあります。
エンジェル投資家という個人投資家も存在しており、主に富裕層などが有望なベンチャー企業などに出資します。
インターネットを活用したクラウドファンディングなども、新型コロナウイルスによる影響で最近注目されています。不特定多数の個人から出資を募る仕組みであり、中小企業のエクイティ・ファイナンスの革命的な方法ともいえるでしょう。
いずれにしても出資してもらうためには、明確なビジョンや将来有望な市場、差別化可能な要素や経営者のスキルなどが必要であると考えられます。
エクイティ・ファイナンスで資金調達するメリットとデメリット
出資してもらうため、資金調達後にお金の返済義務が発生しないことが最大のメリットである方法です。自己資本も増強される方法なので、財務基盤も安定します。
ただし株式を多く発行する形になれば、その保有割合によって経営権が脅かされる点には注意しておかなければなりません。
さらにベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから出資してもらった場合には、必要以上に経営に関与してくることもあり、思い描く経営ができなくなる可能性もあると留意しておくべきでしょう。
目的別で選びたい資金調達
いろいろな資金調達の方法を紹介しましたが、目的により適した方法を選択することが大切です。
そこで、事業目的やモデルによりどのような資金調達方法が適しているのか、それぞれ確認しておきましょう。
スタートアップ企業が実践したい方法
新たにビジネスモデルを立ち上げて市場開拓を目指す、創業して間もない企業がスタートアップ企業です。多くの資金を必要とする時期ですがまだ実績がなく、銀行から融資を受けたくてもスムーズに話が進みにくいといえます。そのため民間の銀行ではなく、政府系金融機関などを頼ったほうが融資は受けやすいでしょう。
日本政策金融公庫には創業融資があるため、実績などが少なくてもお金を借りることはできるはずです。ただし事業計画書の審査が必要となるため、必ずしも融資を受けて資金調達が成功するとは限らないため、具体的な計画やシミュレーションをしっかり事業計画書に落とし込み作成するようにしてください。
可能であれば、エクイティ・ファイナンスを中心とした、返済義務を負うことのない資金調達方法を選んだほうがよいといえます。
具体的には次の資金調達方法がおすすめです。
- ・日本政策金融公庫から融資を受ける
- ・ベンチャーキャピタルから出資してもらう
- ・エンジェル投資家から出資してもらう
- ・クラウドファンディングで出資を募る
ベンチャー企業が実践したい方法
最新技術や高い専門知識を活用して事業を営む中小規模の企業がベンチャー企業です。知名度が十分でないものの、将来性を見込んでもらえれば出資してもらい資金調達することも十分可能です。
そのためスタートアップ企業と同じく、エクイティ・ファイナンスを中心とした資金調達方法をメインに検討していくとよいでしょう。ベンチャー企業の将来性を期待し、高額の資金投資をしてくれる可能性も期待できます。
融資を受けることや出資してもらうことが難しい場合、売掛金を保有していればファクタリングで現金化させ、資金調達することも検討できるでしょう。
具体的には次の資金調達方法がおすすめです。
- ・日本政策金融公庫から融資を受ける
- ・ベンチャーキャピタルから出資してもらう
- ・エンジェル投資家からの出資してもらう・ファクタリングで売掛金を現金化する
まとめ
資金調達の方法はいろいろありますが、企業の規模や資金を調達する目的などに応じて、活用する方法を選ぶことが大切です。
最適といえる方法を選ばなかったために、一時的な資金獲得にとどまり、その後の資金繰りが悪化してしまえば意味がありません。
資金調達の方法は、
- 資産を何らかの形でお金に変える「アセット・ファイナンス」
- 誰かお金を借りるなど負債を増やす「デッド・ファイナンス」
- 会社に投資してもらい資本を増やす「エクイティ・ファイナンス」
の3種類ですが、それぞれメリットとデメリットがあります。
それらをよく理解した上で、今なぜ資金を調達しなければならないのか再確認し、最も適していると判断できる方法を選ぶようにしてください。
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