事業を営む上でどのような資金調達の方法があるのか理解しておくことが必要ですが、一般的に中小企業などは銀行融資に頼りがちです。
しかし資金調達といえば銀行融資という発想を覆すほど、実は様々な手法が存在します。資金調達できなれば、起業することはもちろんその後の事業継続までかなわなくなりますので、どのような方法があるのか知っておくことが大切といえます。
そこで、中小企業が資金繰りを円滑に保つために、どのような資金調達の方法があるのか解説していきます。
目次
起業をするときも事業を継続する上でもお金は必要!
これから起業しようと、よいアイデアやビジネスプランなどを持っていたとしても、手元に資金がなければ何もできません。起業しようとする方に銀行がすんなりと資金の貸し付けをしてくれるとは限らず、他にどのような資金調達の方法があるのか知らなければ始まりません。
いざ起業して事業を開始しても、事業継続のためにはやはり資金が必要です。起業して間もない場合や実績が十分でない場合、赤字経営の場合などにはやはり銀行融資による資金調達は極めて難しくなるでしょう。
しかし黒字が続き、事業拡大によりさらに収益を上げようという場合には、銀行も積極的に資金の貸し付けを行おうとしてくれるはずです。
このように中小企業が資金を調達するケースは様々ですが、状況や目的に適した方法を選ぶことが大切といえます。
自己資金だけで事業を営むことが最も適切?
起業するときや事業を続ける上で資金を確保し続けることが大切なことです。ただ、仮に銀行融資で資金調達しても借金を増やすだけと考え、できるかぎり自己資金だけで事業を営んだほうがよいと考えてしまうこともあるでしょう。
確かに借金は増やさないほうがよいですし、自己資金だけですべて賄うことができることが理想です。ただ、最初は規模を抑えて事業を始め続けていたとしても、順調に売上や利益が伸び事業展開を考えたときには銀行融資などに頼ることになる可能性もあります。
事業拡大や設備投資などにおいては莫大な資金が必要になるため、手元の資金だけでは不足が生じる可能性があるからです。
さらに手元の資金だけで事業拡大や設備投資を検討する場合、その資金額の範囲で事業計画を立てることになります。もっと資金を投入できればさらに大きな収益が見込めるという場合でも、限られた範囲での儲けとなってしまうでしょう。
また、手元の資金で賄うことができたとしても、事業を続ける上で必要な運転資金まで投資に充ててしまうと様々な支払いができなくなります。会社は赤字が続いているだけでは倒産しませんが、たとえ黒字続きでも手元の資金が枯渇すれば黒字倒産してしまいます。
いずれにしても無理な資金計画で事業を進めず、必要なときには適した方法で資金調達することも必要であると認識しておいてください。
様々な種類とそれぞれの方法
資金調達することを考えた場合、どのような方法や選択肢があるのか知らなければ選びようがありません。
資金調達の方法は大きく分けると、
- ・借金など負債を増やして資金調達するデッド・ファイナンス
- ・出資してもらい資本を増やして資金調達するエクイティ・ファイナンス
- ・保有する資産を売却するなど換金して資金調達するアセット・ファイナンス
となります。
資金調達といえば真っ先に銀行融資を思いつくでしょうが、借金を増やして資金調達する場合にも民間銀行以外に借入先はいろいろあります。
3つの資金調達の方法の種類とそれぞれの内容や特徴を把握した上で、もっともよい方法を選ぶことが大切です。
借金など負債を増やして資金調達するデッド・ファイナンス
負債を増やして資金調達すると聞けば、借金が増えることは好ましいことではないと考えてしまいがちです。しかし事業拡大や設備投資などでは多額の資金が必要となりますので、銀行などから融資を受け資金調達が可能になることで収益向上につながりやすくなります。
「借金=悪」と考えるのではなく、ときには必要な場面もあると認識しておくことが必要ですので、次のようなデッド・ファイナンスによる資金調達の方法を知っておきましょう。
日本政策金融公庫融資(新創業融資制度)からの資金調達
国が100%出資し運営している政府系の公的金融機関である日本政策金融公庫が行う融資であれば、実績がない中小企業などにも積極的に融資を行ってくれます。
もともと日本政策金融公庫は、地域経済を支える中小企業や小規模事業者の成長や発展を支援することを目的としている金融機関です。そのため預金は取り扱っておらず、民間銀行から融資を受けて資金調達することが難しい中小企業や個人事業主などにも資金の貸し付けを行っています。
これから事業を開始する場合や開始して間もないときには、無担保・無保証人で利用できる新創業融資がおすすめですが、制度利用における要件などもありますので事前に確認しておきましょう。
信用保証協会の融資(制度融資)からの資金調達
実際、起業家がお金を借りて資金調達しようという場合、公的金融機関に頼るしかありません。この公的金融機関のうち制度融資は、公的機関である信用保証協会が信用保証してくれることにより、民間の金融機関から資金調達がスムーズに可能となる制度です。
制度融資により資金調達した場合、銀行に利息を支払うだけでなく信用保証協会に一定の保証料を負担することになります。ただ自治体でも利子補給を行い利用者の負担割合を下げることや、保証料の一部を補助するといった支援を行っていることがあります。融資窓口は民間銀行などですが、事前に自治体の相談窓口に連絡し具体的な制度の内容を確認しておくとよいでしょう。
なお、信用保証協会と民間銀行という2つの金融機関で審査がそれぞれ行われますので、日本政策金融公庫よりも資金調達まで時間がかかると認識しておいてください。
プロパー融資からの資金調達
プロパー融資とは銀行固有の貸し付けであり、信用保証協会が保証するわけではありません。そのため、銀行は自らのリスクのもとで自己責任により貸し付けを行う形です。
近年では金融庁の方向性などにより金融機関のあり方なども見直されているため、創業期であってもプロパー融資による資金調達が可能となる可能性はゼロではありません。
ただし起業したばかりや実績が十分でない場合だけでなく、銀行が優良な貸付先だと判断しなければプロパー融資による資金調達はまず難しいといえるでしょう。
ビジネスローンからの資金調達
事業資金用の無担保ローンをビジネスローンといいます。銀行のプロパー融資だけでなく、信用保証協会の制度融資からも借り入れが難しい中小企業などでも比較的資金調達しやすい方法です。
ノンバンクのビジネスローンなどは、コンピュータによるスコアリングシステムでの自動審査が採用されているため、ハードルの低い審査基準をクリアすれば資金調達が可能となるでしょう。
審査のハードルが低い分、資金を貸し付けるノンバンクなどの抱えるリスクは高くなるため、そのリスクを補填するべく金利は高めに設定されます。
即日融資が可能であるなど資金調達までの早さには定評があり、急いでお金が必要という場合でも対応可能です。ただ、金利が高いので長期に渡り継続して利用し続けてしまうと資金繰りは悪化しやすくなります。
流動資産担保融資(ABL)による資金調達
在庫や原材料などの流動資産を担保にして融資を受け資金調達する方法です。売却用途のない流動資産を活用可能となる点や、融資可能となる金額も比較的大きいことが特徴ではありますが、売上に直結する在庫や原材料を金融機関の管理下に置かれることになります。
そのため自由に在庫や原材料を使えなくなるリスクを抱える点は認識した上で活用することが必要です。
私募債による資金調達
企業が発行できる債券であり、社債を発行します。あくまでも法人が発行可能となるため、個人事業主では利用できない資金調達の方法です。
株式会社が発行する株券は株主という権利を示すものですが、債券は企業に対しお金を貸したことを証明する借用証書といえます。
発行した社債を投資家に売って資金を調達できますが、売った社債が償還期限を迎えれば企業から投資家に元金一括で返還することが必要です。その際に発生する利子は、償還期限までに定期的に支払うのか、元金と一緒に一括で支払うのかいろいろあります。
証券市場で不特定多数の投資家に発行する公募債とは異なり、会社や経営者と関係のある特定の相手などに発行する社債が私募債といえるでしょう。
友人や家族などからお金を借りて資金調達
お金を借りる相手は金融機関などに限らず、友人・知人・家族などもその対象となることがあります。
個人間での金銭の貸し借りとなるため、自由な条件でお金を借りて資金調達できますが、お金が絡むとトラブルに発展しやすい点は認識しておく必要があります。万一返済不能となった場合には、貸してくれた個人の方と絶縁状態や訴訟など様々な問題も予想されます。
個人間の貸し借りであっても借用書や金銭消費貸借契約書などを作成しておくことが必要です。どのくらいの資金をいつ借りたのか、返済日や金利(利息)などお金の貸し借りにおける決まりを記載しておきます。
両者が納得して作成しておくことにより、お金を貸す側だけでなく借りた側を守ることにもつながります。
出資してもらい資本を増やして資金調達するエクイティ・ファイナンス
出資してもらい資本を増やし資金調達する一番のメリットは、返済不要のお金を獲得できることです。
お金を借りて資金調達した場合、元金に利息をプラスして返済しなければなりませんが、出資を受ければ返済義務のない資金を得ることができます。
資本を増やして資金調達するには次のような方法がありますので、その内容を把握しておきましょう。
エンジェル投資家からの出資による資金調達
将来のあるベンチャー企業やスタートアップの起業家に対し、投資してくれる富裕層の個人がエンジェル投資家です。
もともと起業家だった方が自社の会社の上場、または事業売却などで多額の資金を保有し、その資金で新しいベンチャー企業やスタートアップの起業家を支援するというケースはめずらしくありません。
ただしエンジェル投資家から出資を受けて資金調達するには、株式や転換社債と交換という形が一般的です。
会社の所有権である株式は、持ち分の割合により経営権を揺るがす問題となる点を認識しておきましょう。
そしてエンジェル投資家も、返済されない資金を投入するわけなので、中には経営に対する関与を高めてくる方もいます。
ただ、純粋な経済的追求を超えた理由で出資してくれるエンジェル投資家であれば、助言や有力者の紹介など企業経営を円滑に進めることが可能となる支援も行ってくれます。
エンジェル投資家と出会えるマッチングサービス
エンジェル投資家といったいどこで知り合えばよいのだろう?と疑問を持たれる方もいるでしょうが、投資家と起業家をマッチングするサービスなども増えています。
起業の促進を行うマッチングサービスは次のとおりです。
・グッドエンジェル
・エンジェルポート
・startuplist
・エンジェルファンド
ベンチャーキャピタル(VC)からの出資による資金調達
エンジェル投資家は純粋に起業家を応援したい気持ちで出資する個人の投資家であるのに対し、ベンチャーキャピタルはハイリターンを狙った投資を行う投資会社です。
エンジェル投資家の場合、投資で一儲けしようと考えるのではなく、ライフワーク的な意味で投資活動を行う方も少なくありません。しかしベンチャーキャピタルは投資により儲けを出すことが仕事です。
成長性が高く見込める未上場の企業に出資し、経営コンサルティングなどの提供で企業価値向上を図ります。
中にはベンチャーキャピタルの担当者が取締役会などにまで顔を出し、経営陣に指導などを行うといったケースもあるようです。
最終的には上場させ、売却や他のファンドなどに転売して利益を得ることを目的としています。そのため投資が失敗に終わらないために何としても上場させようと経営に関与されるケースもあれば、反対に何もしないベンチャーキャピタルも存在しますので一概には言えないところではあります。
新株予約権による資金調達
株式会社に対し権利を行使することにより、株式交付を受けることを可能とする権利のことです。
新株予約権証券を所有した方は、権利を行使し一定の行使価格を払い込めば新株を発行させることや、会社自身が保有している株式の取得が可能となります。
一般的にはベンチャー企業などが優秀な人材を雇用するときや、従業員のモチベーションを高めようとする際に用いられる手法です。
新株予約権の付加された社債は通常の社債よりも、資金を投入する側からすれば魅力の高いものとなります。そのため、新株予約権を社債に付けることにより、融資条件を緩和してもらえたり資金調達しやくなったりします。
なお、新株予約権が行使されると1株あたりの価値が低下してしまう点は留意しておくことが必要です。
クラウドファンディングによる資金調達
インターネットを使って不特定多数の方たちから少額の資金を集める方法です。それぞれからの金額は少額であっても、大人数から集めることができれば多額の資金調達に成功します。
クラウドとは群衆を意味する言葉であり、企業が銀行などから融資を受けるBtoB(企業対企業)の取引ではなく、BtoC(企業対個人)での資金調達といえます。
クラウドファンディングにも次のように種類がありますので、目的によりどの方法が資金調達に適切か内容を把握した上で資金計画を立てましょう。
商品購入型・寄付型のクラウドファンディング
新商品や新たなサービスをつくるときの資金調達の方法で、目標金額を達成したときには見返りに支援者へのリターン(商品やサービス)が提供されます。
資金を調達するまでの形式は、目標金額を達成したときに可能となる達成時実行型と、目標金額に達成しなかったときも調達できた資金を受け取ることが可能である実行確約型があります。
投資型のクラウドファンディング
株式との交換という出資形式で資金調達できることが特徴です。出資であるため、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから資金を投入してもらったときの注意部分を意識しておきましょう。
いずれにしても目標金額に達成したのにプロジェクトの見通しが甘く、支援者にリターンできずに終わるケースもあります。そのようなことのないように、目標金額や計画などに不備がないか十分に思案することが必要です。
また、インターネット上でアイデアやプロジェクトを公表することになるので、実行前にそれらの案を盗用されるリスクも抱えることとなる点は留意しておきましょう。
保有する資産を売却するなど換金して資金調達するアセット・ファイナンス
資産を売却してお金に換えて資金調達する方法なので、すでに保有しているけれど使わない不動産・有価証券・ゴルフの会員証などが主な対象です。
不動産などは所有しているだけでも管理費や税金など負担しなければなりません。付き合いで購入した株式やゴルフ会員権なども、遊休資産のまま稼働することもない状態である可能性があります。
これらの使うことのない資産は早めに売却し、現金化することでも資金調達につながりますし、他にも次のような資金調達に活用できる資産もあります。
過剰に抱えた在庫を売って資金調達
売却可能とある見込みがある在庫であれば保有していてもよいですが、売れない在庫を過剰に抱えていると管理や保管にコストばかりが発生してしまいます。
このような場合には思い切って処分し現金化することも検討が必要ですが、利益がでない状態でのたたき売りとなるケースも出てきます。
しかし保有していることそのものがマイナスとなる場合もあるため、適正な在庫量に合わせるためにも無駄な在庫は処分しましょう。
売掛債権を売って資金調達
売掛債権とは、日本の企業間取引で一般的となっている掛け売りで発生した未回収の代金であり、売掛金のことです。
中小企業は売掛債権(売掛金)を多く保有しているため、経済産業省でもこの売掛債権を資金調達に有効活用することを推奨しています。
売掛債権を売却して現金化する方法をファクタリングといいますが、取引先から代金が入金されるよりも前にお金を受け取ることができるので、入金までの期間が長い場合にもおすすめです。
売掛債権が支払われるまでのサイトが長いと、それまでに発生する支払いに充てる資金が不足しがちです。ファクタリングはこの売掛債権が支払われるまでのサイトを短縮できる効果があり、借金を増やさず現金を得て資金調達したいという経営者にも利用しやすい方法といえます。
利用する上で手数料は発生しますが、早ければ即日現金化が可能となる場合もあるので、急いでお金が必要という需要にも対応可能です。
ただファクタリングの種類によっては手数料が高めに設定されることもあるため、継続して利用し続けるのではなく、一定期間の利用で資金繰りを改善させることを目指しましょう。
その他にも方法はある!
資金調達の方法は、
- ・借金など負債を増やして資金調達するデッド・ファイナンス
- ・出資してもらい資本を増やして資金調達するエクイティ・ファイナンス
- ・保有する資産を売却するなど換金して資金調達するアセット・ファイナンス
の3つ以外にも次のような方法があります。
M&Aによる資金調達
会社や事業を売却する形により資金調達する方法です。経営状態が良好で将来性が高く見込める事業を行っている場合には、会社や事業を売却することにより大きな売却益を獲得できるでしょう。
株式譲渡を行えば、事業運営で得ることができる利益よりも支払う税金を抑えることもできます。
ただし買い手が見つからなければ資金調達には至りませんし、仮に見つかったとしても希望の条件で売れるとも限らない点は留意しておきましょう。
補助金や助成金による資金調達
補助金とは、事業に対し実施を支援するために給付されるお金です。国や政策などにより様々な種類の補助金が募集されているので、目的や趣旨などがマッチする補助金が見つかれば有効な資金調達の方法として使うことができます。
一方、助成金は主に厚生労働省が中心となって公募している雇用に関する支援、または経済産業省が行う研究開発の支援の給付金です。
どちらもお金を借りるわけではないため返済不要の資金を調達できる点はメリットですが、すべての経費分が交付されるのではないですし、基本的に後払いとなる点は認識しておく必要があります。
そして簡単に支給され資金調達できるわけではなく、厳格な要件などが定められているので、数々の要件をクリアしなければならず準備も必要です。そのためすぐに資金調達しなければならないという場合には向かない方法といえるでしょう。
まとめ
中小企業が資金調達に使える方法は銀行融資にもいろいろな方法があります。普段から取引のある銀行の担当者につい頼りたくなってしまうものですが、銀行融資による資金調達が必ず可能になるとも限りません。
まだ実行したことのない方法に不安を感じる場合もあるでしょうが、やってみれば有効な資金調達につながったというケースもあります。
何のために資金調達しなければならないのか、会社の状況や獲得したお金は何に使うのかなど、目的や使用用途などに適した方法を選ぶようにしましょう。
また運転資金を調達する場合には、有効と判断できる方法で資金調達したものの、一時的には手元のお金が増えただけで資金繰りは改善されなかったという状況は避けなければなりません。
どのような目的で資金調達する場合にも、十分な事業計画や資金計画を立てた上で資金繰りを悪化させないことを意識しながら実行するようにしてください。
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