会社経営の中で資金不足となる原因はいくつかありますが、中小企業の場合には取引先が倒産してしまうことにより、大口の売掛金の回収ができなくなって連鎖倒産することもあるので注意が必要です。
他にも長く勤務していた社員が急遽退職することで退職金が発生したり、自然災害での損害など、予測がつきにくいリスクが発生してしまうことがその大きな原因です。地震や火事などの自然災害による商品や設備の毀損による損害など常に会社の周りには資金不足を招くリスクが存在しています。
ただ、他にも事業を続ける上で様々な要因が影響し資金不足となるケースがありますので、それらの要因とは何か、また、資金不足に陥ったときに中小企業にとってどのような資金調達を実行すればよいのかご説明します。
目次
資金不足に陥るのは収益力が低下するから
企業経営の中で資金不足に陥る原因にはいろいろありますが、主に次のようなことがその背景にあると考えられます。
売上の低下
得意先からの取引停止や中止、販売数量の減少、販売単価の低下などが原因となり売上が低下することで資金不足に陥ることがあります。
限界利益率の低下
販売単価は減少しているのに仕入れ単価は上昇するなどにより、収益力が低下することもあります。
固定費の増加
毎月発生する経費の増加や、労働分配率上昇が原因で固定費が増え、収益力が低下することもあります。
収益力低下で資金が不足しているのなら
取引のある金融機関と借入交渉を行うなど、長期で安定した状態で利用できる資金調達の方法を利用することを検討しましょう。
そのためにも利益計画の見直しを行い、資金管理を行う体制を整備するなど、資金不足から脱却できるように改善させることが必要です。
投資が過大なものになれば資金も不足する
事業を続ける上で設備への投資は欠かすことができない部分ではありますが、本来なら必要のなかった過大な投資により、企業経営を圧迫することもあると理解しておくことが必要です。
長期投資への見通しの甘さ
取引先との関係などにより付き合いで行っている投資などもあるでしょうが、本来、必要な物でないのならそれが長期間に及ぶことで経営を圧迫する可能性もあります。
借り入れに依存した体制の設備投資
設備投資を行うには、銀行融資などを受けた上で実行することが一般的でしょう。ただし安易に資金を借り入れ依存した形で行うと、返済元金と支払い利息を増やす結果となり、事業継続に影響を及ぼします。
計画を立てず行う不動産投資
不動産投資を行う場合、物件の立地やニーズに合致しているのか、どのくらいの収益を見込めるかなど事前に調査や分析が必要です。特に計画を立てず購入し、運用しようとすると後で負の資産となる可能性もあります。
非売却資産に対する過剰な投資
不動産だけなく、ゴルフ会員権や株式など、いずれも限度を超えた投資は資金繰りに影響すると理解しておいてください。
過大な投資により資金が不足しているのなら
今後の投資への体制を見直すことが必要です。無駄な部分への投資は経営を苦しい状態にさせるだけだと認識し、付き合いだけで購入しているゴルフ会員権や株式などに対して投資し続けないこと、収益が見込めない資産は売却して現金化することも必要となります。
資金バランスが悪化すれば資金不足に
事業を円滑に進めていくためには、資金の収支バランスが取れていることが必要です。しかしバランスを崩せば、だんだんと経営に行き詰ることになってしまいますが、資金バランスを崩す要因として考えられることは次のようなことです。
急激に売上が増えた
売上が増加することは喜ばしいことではあるものの、急激に増れば生産性を高めなければならなくなり、仕入れ量や人員を増やし、設備増設といったことも必要となるので増加運転資金が必要になってしまいます。
売掛金の回収が遅れる
売上は計上され、将来入金される予定の売掛金は発生しているのに、売掛先の経営悪化などが原因で回収が滞ったり遅延することも原因となります。
過剰に生産し過ぎること
生産量の調整が上手くできず、過剰に在庫や不良在庫などを増やすことになれば、現金化されない資産を保有することとなる上に、管理費など余計な費用もかさみます。
決済期間の短縮
仕入れ先から仕入れ債務の決済期間を短縮するように圧力がかかり、早めに支払いを行わなければならなくなると、売掛金の入金前の支払いを増やすこととなり資金繰りが悪化してしまいます。
資金バランス悪化により資金不足に陥っているなら
売上が伸びてくれば仕入も増えてくるので、売上代金が入金されるよりも前に仕入代金の支払いが多くなります。
そのため、売掛金が入金されるよりも前に発生する代金の支払いに充てる資金が不足しないよう、一時的に資金調達が必要になる場合もあるでしょう。
資金不足に陥る原因は他にも!
資金が不足してしまう原因として考えられるのは、他にも先に述べたような取引先の倒産の影響、借金が膨らみ返済能力を超えてしまうこと、仮払いや貸し付けなど不明瞭な支払いの増加、また、交際費に対する課税などの税負担が増えることなどが挙げられます。
その他の原因で資金不足に陥っているなら
すでに借金が返済能力を超えた状態にある場合など、返済の必要がない方法での資金調達が望ましいといえます。そのため、増資や社債などで財務体質を改善させることが必要となりますし、戦略的な節税対策なども講じていくことの検討が必要です。
中小企業が実践したい資金調達の方法
企業が事業を続ける上で資金不足に陥る原因、そしてその原因にどのように対策を講じればよいのか、アプローチの方法などをご説明しました。
ただ、中小企業の場合には、たとえば銀行融資で資金調達したいと思ってもスムーズに話が進まないこともあります。
資金調達の方法といえば銀行融資と考える経営者も少なくありませんが、中小企業に合った方法を選ぶようにしてください。
主に中小企業が利用しやすい資金調達の方法は次のとおりです。
銀行融資
資金調達の鉄板ともいえる方法が銀行からお金を借り入れることでしょうが、中小企業の場合は銀行独自の責任で融資が実行されるプロパー融資を受けることはよほど優良な企業でない限り困難です。
そのため、信用保証協会の保証付き融資などを利用することが一般的となります。
中小企業が銀行から融資を受ける場合には、担保や保証が必要となることが前提となると理解しておきましょう。
担保として差し入れることが可能なのは、万一、融資を受けた資金の返済が滞ったときなどに、銀行が差し入れた担保を売却して返済資金に充てることが可能となる価値のある資産です。
一般的には不動産であることがほとんどで、マンションやビル、工場、店舗、土地、駐車場などを担保に融資を受けることとなるでしょう。
ビジネスローン
銀行から融資を受けたいという場合でも、不動産など価値が見込める資産を保有していないという場合もあるかもしれません。このような場合には、事業者が無担保でも利用できるビジネスローンなどを検討することも可能です。
無担保・無保証で最短即日融資が可能となるなど、急いで資金調達が必要である中小企業にとってはニーズに合致した資金調達方法でもあります。
限度枠を確保しておけば、銀行やコンビニのATMなどを利用して何度でも繰り返し借り入れと返済を行うことができますし、審査のハードルも低いので銀行融資は受けることができなかったという場合でも利用できる可能性があります。
ビジネスローンを作ったのは銀行
そもそもビジネスローンは銀行が開発したローン商品であり、売上規模が小さく、信用力が低いので融資金額も抑えることとなる中小企業にも積極的に貸し付けを行うために開発された金融商品です。
中小企業は融資額が少額になりがちですが、銀行が融資を行う上では、面談やヒアリング、調査などの審査を行い、銀行内では稟議を起案し複数の部署での決裁をクリアし、やっと融資が実行されるという流れとなります。
そのため、少額の融資ではコストパフォーマンスが悪いため、成績を求められる担当者も大口の融資は積極的に行おうとするでしょうが、少額融資にはかまっていられないという姿勢をとらざるを得ません。
しかし、日本の企業の9割以上は中小企業ですので、その中小企業に対して積極的に融資を行わないのは銀行にとってもよい判断とはいえない状況です。
そこで、コンピュータシステムで自動的に審査を行うことができるスコアリングシステムを導入し、人件費などをかけず過去のデータなどに基づき貸し倒れリスクを算出することで、融資の可否の判断や、必要とする金利設定の判断が可能となりました。
ただ、2010年代からビジネスローンを利用した経営者などがだんだんと資金繰りで苦しむようになり、焦げ付きが目立つようになってきたことから積極的にビジネスローンによる貸し付けは行わなくなったようです。
現在は消費者金融(事業者金融)など、ノンバンクがメインとなってビジネスローンをサービスとして提供しています。
審査のハードルは低いけれど金利は高め
ビジネスローンは中小企業でも利用しやすいように、無担保・無保証である上に、審査のハードルも低く、金融業者によっては即日融資も可能です。
その分、金融業者が抱える貸し倒れリスクは高くなるため、銀行融資や銀行のビジネスローンより金利は高めに設定されることになります。
融資枠を確保しておけば、ATMなどで好きなときに自由に借り入れもできますが、繰り返し利用し続けるとその高く設定された金利負担によって資金繰りはより悪化してしまうことを認識しておいてください。
あくまでも、一時的な資金需要に対応するためのつなぎ資金として利用し、すぐに完済させておくことが必要です。
手形割引
記載された期日にならなければ入金されない受取手形を使って資金調達する方法であり、期日前の手形を銀行や手形割引を専門とする業者に買い取ってもらい、期日より先にその買取代金を受け取る方法です。
手形の買い取りを行ってもらう方法ではありますが、手形を担保に借り入れる形となりますので融資として扱われます。そのため、利息としての手数料が発生し、その分を割り引かれた形で残りを受け取ることができるので手形割引と呼ばれています。
手形を買い取る銀行や業者がもっとも気にするのは、手形を振り出した方が期日に支払いを行い、不渡りにならず回収できるかということです。
そのため審査では振出人に対する審査が行われ、問題ないと判断されれば手形割引を依頼した方に手数料分を割り引いた金額が支払われます。
手形の満期日になると、振出人の当座預金口座から支払額が引き落としとなり、銀行や業者に支払われるという流れです。
もし割り引いた手形が不渡りになったら
手形割引は手形を担保に融資を受けることになるので、引き受け可能とする金額には上限が設けられている点に注意しましょう。
もし手形の期日よりも前に上限金額に達した場合、それまでに依頼した手形の決済が行われるまでは手形割引を利用できません。
さらに注意しておきたいのは、割引手形が不渡りになったときです。この場合、依頼した方が手形に記載された金額を全額支払うことになりますので、不動産などを担保に差し入れなければ利用できない場合もあると理解しておきましょう。
ファクタリング
これまで紹介した資金調達方法はいずれも借り入れにより資金を調達するものばかりです。
融資を受ければ確かに資金の調達は可能ですが、負債を増やしてしまうことになるため、状況次第では一時的な資金需要への対応に留まり、その後の資金繰りを悪化させることとなります。
そこで、融資を受けず借金を増やさない資金調達の方法であるファクタリングを検討してみましょう。
ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権を、売掛先企業から入金されるより前に売却して資金化をする資金調達のことです。
手形割引に似ていると感じるかもしれませんが、ファクタリングは融資を受けるわけではないこと、さらに売掛先企業が倒産してもその弁済負担を負うことがない点が大きな違いです。
売掛債権とは?
売掛債権とは、商品やサービスを販売・提供した時に発生する売掛金のことで、まだ受け取っていない売上代金を請求することを可能とする権利を指しています。
日本の商取引では、掛けによる信用取引が一般的であり、商品やサービスを販売・提供したときにはその場で引き換えに代金を受け取ることはありません。事前に取引先との間で取り決めた期日に後払いしてもらうこととなりますが、そのときに発生する売掛金を前倒しで受け取る形で資金を調達することをファクタリングといいます。
売掛債権が増えすぎれば資金不足を招くこともある
売上が計上されてその代金が支払われるまでの期間は、1か月や2か月、建設業界などでは半年や1年という場合もあります。
しかし入金されるまでの間には、仕入れ代金、従業員に対する人件費、毎月の固定費や税金など、様々な支払いを行うことが必要となるため、売掛債権を回収できるまでの期間が長く設定されていればその分、資金繰りは悪化しやすくなります。
特に大口の売上がある場合、先に多くの仕入れ代金、人件費、外注費などの支払いが発生することになるので、売上としてすでに計上され利益も出ているのに倒産するという黒字倒産に至る可能性も出てきます。
このような場合、ファクタリングを利用して売掛債権を前倒しで回収すれば、不足している資金を補い悪化した資金繰りを改善させることができます。
ただしこちらも利用する上では手数料が発生しますので、複数の業者から見積もりを取得するなど優良な業者選びを行うようにしてください。
まとめ
中小企業が資金不足に陥る原因はいろいろであり、それぞれ対策を講じることが必要です。手元の資金がショートすれば企業は倒産してしまいますので、対策に繋げるためにも今不足している資金を調達することが必要となるでしょうが、その際も現状にそった資金繰りを改善させることができる方法を選ぶようにしてください。
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