資金調達の場面でバリエーションについての話が出ることがありますが、これは「バリュエーション」のことを指していると考えられます。
バリュエーションとは企業価値評価のことですが、創業してまだ間もないスタートアップ段階で企業価値を算定することは難しい状態です。
そこで、資金調達の場面で大きく関係することになるバリュエーションとはいったいどのようなものなのか、その内容についてご説明していきます。
目次
バリュエーションで評価する価値とは
バリュエーションは企業価値評価と呼ばれるもので、評価対象となる企業がどの程度の企業としての価値を持っているかを判断することです。
評価される価値は、事業価値、企業価値、株式価値の3つですが、事業価値は長期的なキャッシュフローを獲得できる能力があるのかを判断するので、有形資産や無形資産などによる事業価値のことです。
事業価値に事業以外の資産を合わせた全体の価値を企業価値、企業価値に投資家が取得する部分や負債分を差し引いた残りが株式価値です。
なぜ資金調達でバリュエーションが関係する?
資金調達の手段として、真っ先に思い浮かぶのは金融機関からの借り入れでしょうか。ただ、資金調達の方法にもいろいろあり、借り入れに限られるわけではありません。
そもそもスタートアップ段階の企業が金融機関からお金を借りることは容易なことではありませんが、なぜなら売上が立つ根拠がまだないからです。
貸し付けを行う金融機関としては、貸したお金は利息をつけて回収することが必要となりますが、本当に売上が上がり収益を出す見込みがあるのか、スタートアップ段階では判断しにくいことが影響します。
それなら新しく株式を発行して資金を調達すればよいと考えるかもしれませんが、投資家は投資した企業がこれからどのくらい事業規模を拡大させ、収益を出して自分にリターンを与えてくれるのかという部分に興味を持ちます。
アイデアや技術はあっても、それに投資する資金がない場合、将来性に着目して投資することになるでしょう。
借り入れと投資、どちらにも共通していえるのは、その会社の価値が高く評価される必要があるという部分です。
経営者が主張できる部分は限られている
金融機関から融資を埋める場合でも、銀行などは貸し付けたお金がしっかり返済されるかという部分で相手を評価します。
株式を発行して出資してもらう場合でも、投資家は株式で将来発生するキャピタルゲインを目的にしているので、事業に興味を持ってもらわなければ話は進みません。
事業内容を説明するとき、システムを開発するためにいくら必要なのでそのために資金を調達したいという話はできるでしょう。
企業の利益や資産など、本来の企業価値に対し、株価が相対的にみたときに安いか高いかを判断するための指標がバリュエーションです。
しかし、ビジネスモデルを事業化するための研究開発や調査を進めている時期であるシード段階では経営者の立場が弱い状態ですので、高いバリュエーションでないなら出資に応じないと経営者が強気に出ても、投資家から受け入れてもらえる可能性は高くないかもしれません。
慎重になり過ぎないほうがよい理由
資本政策は後戻りができないため、確かに慎重に話を進めていくことは重要ですが、あまりにも慎重しすぎると話が進みません。
ある程度まとまった資金を出してもらえるなら、経営者が納得できる範囲で多少は譲歩しながら資金調達を実行し、自社の生産活動に力を入れることも方法の1つです。
資金がなければマーケティングなどもできず、そもそも活動自体が縮小されてしまいます。その後、成長段階を迎えたときに、あらたなステップに進めばよいと考えることも必要といえるでしょう。
未上場株式のバリュエーションの考え方
特に未上場株式の場合、バリュエーションをどのようにコントロールすればよいかという悩みを抱えていることも多くなるでしょう。
株式持分が希薄化されることを考えると、バリュエーションはできるだけ高い方がよいと考えるその反面で、次の資金調達のことを考えれば上げ過ぎないようがよいともいえます。
先の上場を見据えた場合、公正価値や適正価格で評価してどのようなバリュエーションが付くかを考えることも必要となるでしょう。
なぜなら上場した後も投資家がファイナンスすると考えた場合、公正価値や適正価格での値でなければ投資家がついてくることができなくなるからです。
仮に上場した後も事業が軌道に乗り、安定して成長や収益が見込めるようになってくると、今度は海外の様々な機関投資家なども公正価値や適正価格かという部分で他社と比較しながら投資を検討してきます。
そのため、これらの部分で判断ミスをしてしまうと、財務的に身動きを取ることができなくなる可能性があるのです。
資金を調達したいと考えても、むやみやたらと高い値段がつけば、仮に上場できても流動性を失い、身動きが取れない企業となってしまいます。
バリュエーションが重要になる場面とは
バリュエーションは、主にM&Aや事業承継といった場面で出てくる指標と考えている方もいるようですが、このように資金調達の場面でも大きく関係してくるものです。
M&Aや事業承継におけるバリュエーションは、そこで明らかになった評価を基準に投資額や売却額を決定するために用いられます。
バリュエーションの方法は複数あり、代表的なものを挙げると、株価純資産倍率(PBR)、株価収益率(PER)、株価キャッシュフロー倍率(PCFR)、配当利回りなどですが、それぞれの内容から複数の方法を同時に組み合わせ、企業価値の正確さを引き上げていきます。
ただ、いずれも高度な計算を要するものばかりなので、経営者だけで行うことは容易なことでないため、コンサルタントなどのサポートを受けたほうがスムーズであるといえるでしょう。
一般的に用いられているバリュエーション
バリュエーションで知られているのは、上場していない会社の企業価値を同じ業種の株価収益率(PER)などを参考に時価総額を判断するという方法です。マーケットアプローチやマルチプルと呼ばれる方法であり、現在の企業価値を評価するためのバリュエーションの方法といえます。
まとめ
創業してまだ間もない段階では企業価値を算定することは難しく、シード段階においても企業価値を算定するときには主に過去の事例によって決まります。
投資家がその企業のバリュエーションを判断する場合、過去に似た投資案件で定めたバリュエーションがあれば、前例があることで話も進みやすくなるということなので、仮に目立った収益が上がっていなくても、一定期間企業活動が行われていれば企業価値は高くなるということです。収益を上げる構造が分かりやすければ、バリュエーションもあがりやすいと判断できるでしょう。
創業して数か月程度で収益を上げておらず、これから発展していくである新規ビジネスモデルの創出を目指したスタートアップ企業では、自分たちが希望するバリュエーションをつけることはかなりの努力が必要であるということになります。
ただ、資金調達を行う方法は借り入れや投資によるもの以外にもいろいろあります。創業したばかりの企業でも、信用力の高い売掛金を保有しているのなら、その債権を専門業者に売却して資金化するファクタリングで資金調達することもできます。
ただ、企業価値を知る上でもバリュエーションについて理解を深めておくことは必要ですし、今後、上場を目指す段階やM&A、事業承継などが必要になったときにも重要となる指標なので、その内容を把握しておくようにしましょう。
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