銀行などから資金を借入れる場合、不動産などを担保として差し入れることを求められることがあります。この場合、不動産に抵当権を設定した上で融資を受けることになりますが、中小企業の資金調達でこの担保という存在が後々資金繰りに影響を及ぼすこともあります。
そこで、借入れの場面で必要となる抵当権とは何のために設定されるのか、そもそもどのような内容となるのかをご説明します。
目次
不動産に抵当権はなぜ設定されるのか
銀行からの借入れで必要となる担保とは、銀行などが融資を行った後で債務者が返済不能状態に陥った場合、資金の代わりに回収し、生じた不利益を補てんするためのものです。
多額の資金の融資を行う銀行にしてみれば、お金は貸したものの返済はされないでは困ります。そこで、不動産など売ればお金に換えることができる価値ある資産を担保として確保しておき、いざというときにはその担保を差し押さえて競売にかけ、貸したお金を回収するという流れです。
債務者が滞納せず返済を続けることを促す効果も
債務者にとっては、不動産に抵当権を設定されることは、もし返済ができなければ不動産は自分のものではなくなることを指します。
お金を借りた債務者も、大切な不動産を銀行に取られてしまうと困るため、返済を滞りなく行わなければ!という気持ちになる効果もあるといえるでしょう。
銀行が他の債権者より優先して資金を回収するために
もし債務者が他にもいろいろな借入れを行っていて、資金がショートしたことで自己破産に至ったとします。
その場合、債務者が保有していたいろいろな資産から、それぞれお金を貸していた債権者に返済されることになりますが、不動産に抵当権が設定されていれば、他の債権者より優先して貸した資金の回収が可能となります。
●競売で売れた金額に不足が生じた場合
なお、自己破産ではなく単に不動産を担保として差し入れて融資を受けた銀行からの借入れが返済できなくなった場合は、抵当権が設定されている不動産は差し押さえとなり競売にかけられ、借入れ分を回収という形になります。このとき、競売で売れた金額が借入れ額に届かなければ、不足した分、借金が残ることもあるので弁済義務を免れるわけではないことも理解しておきましょう。
抵当権には種類がある!それぞれの内容と特徴
銀行からの借入れの際、抵当権には種類がある点にも注意が必要です。
金融庁は銀行に対し、企業が担保に頼らなくてもよい融資を行うことや、過去に設定された担保は解除するように指導を行っています。本来であれば、債務の返済が完了すれば設定された抵当権は消滅するはずなのですが、実際にはそうではありません。
実は、抵当権には抵当権設定と根抵当権設定という2種類があり、名称の頭に「根」の一文字がつくかどうかによって大きく異なる性質のものに変化します。
単なる抵当権を設定する場合
ただの抵当権設定なら、特定の借入れに対して設定される抵当権なので、たとえば不動産を買うために5千万円の融資を受ける場合に、購入する物件に抵当権を設定するケースなどが該当します。
この場合、購入した不動産に対する借入れが完済した時点で、設定された抵当権は自動的に消滅します。
しかし根抵当権は別です。
根抵当権を設定する場合
根抵当権は、これから先に受ける融資に対して限度額を定めておき、担保としての抵当権を付けます。
たとえば、5千万円の建物を購入するときに根抵当権を設定して融資を受けたとします。
ただ、単なる抵当権との大きな違いは、購入した5千万円の不動産に対する融資の返済が終わっても、自動的に抵当権は消滅しないという点です。
根抵当権はこれから先の融資に対しての担保設定なので、名称通り融資を受けた企業に「根」をはることになります。
同じ銀行から他の借入れを行っていて、その融資で弁済が難しい状況となった場合でも、根抵当を設定した不動産をおさえようとしてきます。
銀行にとっては抵当権よりも根抵当権のほうが都合のよい権利であるといえるでしょう。
銀行から借入れを勧められる可能性もある
根抵当権が設定されていると、返済がある程度進んだ段階や全額返済された段階で、限度としての枠設定があるので融資が可能であると提案されることになります。
銀行はお金を貸し、債務者が負担する利息で収益を得ているので、返済能力があるとみなされる企業にはどんどんお金を貸したいと考えるからです。
銀行にとっては都合のよい権利
抵当権は自動的に解除され消滅されるのに対し、根抵当権は借りた資金を完済できても解除されず残ったままです。どうやって解除すればよいのかというと、借入残高がない時点で自らが銀行に根抵当を解除してもらうように申し出るしかありません。
しかし、もしまた資金が必要になったときの保険としてそのままにしておこうなどと、設定されたまま放置されるケースも多々みられます。設定したまま数年が経過し、借入れはないのに根抵当権の存在自体を忘れてそのままになっているケースもあるほどです。
ただ、このような状況は銀行にとっては便利のよい状態であるといえるでしょう。
根抵当権のメリットとデメリット
根抵当権はデメリットばかりではありません。同じ銀行から借入れを行うときに、その都度、抵当権を設定しなくてもよいのはメリットです。
1つの融資に対しそれぞれ抵当権を設定することになると、その都度審査を受ける手間もかかりますし、登記の費用や手続きに時間もかかってしまいます。
根抵当権の場合、融資を行う銀行としては極度額という枠内での利用となるので、時間や費用、手間を省けるという部分はメリットといえるでしょう。
ただし、根抵当権が設定されるとその他の融資も強制的に有担保として扱われることになりますし、極度額は通常、借入金額の1.2倍で設定されることが多いので、大きな極度額が設定されることで諸費用が増えるのもデメリットです。
他の銀行が参入できなくなる可能性もある
また、不動産に設定される抵当権は1つではなく、1番抵当権、2番抵当権というように、複数設定されるケースもあります。
担保権の抵当順位は、債権者が優先して回収できる順位をあらわしますが、1番抵当権が根抵当権の場合、担保の限度額がそのままの状態になるので他の金融機関から不動産を担保に差し入れて借入れを行いたい場合、審査に通過できなくなるといった可能性も出てきます。
根抵当権を設定した銀行にしてみれば、競合他行が参入できなくなるという部分からも、単なる抵当権よりは根抵当権のほうが都合はよいといえるでしょう。
不要な根抵当権は早めに解除の申し出を
一般的な抵当権は、特定の借入れに対する担保の設定であるのに対し、根抵当権は極度額の範囲内での同一の銀行からのすべての融資に対しての担保という考え方です。
どちらも抵当権でありながら、考え方や使い方は大きく違ってきます。そのため、同じ不動産を対象として他行から借入れを行いたいという場合、設定されているのが抵当権と根抵当権のどちらなのか確認しておくことが必要です。
もしすでに返済が終わっているのに、根抵当権が設定されたままで残っている状態であれば、銀行に解除してもらうように申し出を行うなどで対処しましょう。
まとめ
抵当権の場合でも、借入れが完済できれば自動的に担保権は消滅するといっても設定された抵当権を解除する登記が必要です。
法務局で抵当権抹消登記を行うことになるので、単なる抵当権が設定されている場合には銀行などから契約証書と必要書類が渡されます。自分で申請を行うのか、銀行が最後まで行ってくれるのか確認しておくようにしましょう。
また、根抵当権設定を抹消したい場合には、銀行に借入れを完済させることと契約解除を条件として必要書類を発行してもらえるはずです。
不動産の所有者が知らない間に融資額が膨らんでしまうこともあるので、借入れを完済する、または完済しているタイミングで抹消するように手続きを行うようにしましょう。
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