中小企業が成長していく段階では、必ず投資する資金が必要となり、資金を調達しなければならない場面に遭遇することとなります。
事業や会社規模を拡大する目的以外にも、中小企業が抱える多様な経営課題に立ち向かい、成長していく上でもやはり投資が重要となるでしょう。
資金調達先として重要な役割を果たすのは金融機関などですが、近年では中小企業の資金の調達方法は多様化している傾向にあります。
そもそも金融機関の業態が多様化していることがその要因ですが、その多様化する資金調達の方法のうち、何を選べばよいのでしょう。
目次
中小企業の資金調達の方法に多様化が求められる理由
金融機関の業態は多様化している状況ですが、どの業者を選び、どの方法で資金を調達するのか考える上で、中小企業と金融機関など資金を提供する業者との関係性が深まることが必要です。
金融機関側にも、積極的に中小企業の事業内容を理解し、事業性を正しく評価することが求められるといえるでしょう。ただ、全ての金融機関が自社だけの経営資源だけで対象となる中小企業の事業性を把握することは難しいでしょう。
また、中小企業が希望している資金の調達方法に、すべての金融機関が対応できるともいえません。
そのため、資金を必要とする中小企業が、調達先を金融機関だけにこだわるのではなく、他の調達方法も考慮し、資金調達の複線化や多様化させることも重要といえるでしょう。
資金供給以外での相談業務の対応可能かがポイント
中小企業が成長していくためには、資金の供給だけでなく、資金だけでは解決できない経営課題を解決していくことも大切です。
実際に金融機関から提供されている経営支援サービスのうち、中小企業に多く利用されているものは、販路や仕入先の拡大支援や、活用したい制度の情報の提供、他、財務・税務・労務についての相談などです。
もし事業を再生したいと考えているのなら、状況を把握、予測、管理することで、今後、どのように運転資金を確保すればよいのか、コスト削減など、長期的な視点でのコンサルティング能力も求められます。
幅広いネットワークが構築されていることが必要
経営支援サービスとして、たとえばビジネスマッチングを利用することや、補助金についての情報収集、また、財務面でアドバイスを受けるといったことが具体的な内容として挙げることができるでしょう。
業態に合わせた投資家を紹介やサービスの提案など、幅広いネットワークが構築されていることが求められます。
中小企業が抱える悩みに対応できるか
本来、中小企業特有の悩みともいえるのが人材不足です。この悩みを解消するため、従業員確保に対応できる人材育成支援などを利用している企業も少なくありません。
ビジネスマッチングや、補助金や施策に対する情報の提供だけでなく、人材不足を解決できる支援が充実することも求められる部分となるでしょう。
金融機関では外部の専門家や専門機関と連携は困難なケースもある
金融機関によっては、経営支援サービスに対する取り組みを積極的に行っている場合もあります。
仮に金融機関が業態の特性や構造的な要因などを理由として、中小企業が抱える経営課題に対応できなかったとしても、外部の専門家や専門機関と連携することで、課題解決への支援が可能となると考えられるでしょう。
しかし、都市銀行などは連携に対する重要性を感じていないことや、地方銀行なども連携先が見つからないという理由などで積極的に外部との連携は行われていません。
中小企業や個人事業主にとって頼りになる信用金庫や信用組合も、連携するための内部体制が整備されないといった問題があるなど、やはり限られた人員で体制を整えることは難しいことが伺えます。
中小企業が希望する資金の形
中小企業は成長段階において投資するための資金を必要としていますが、調達する資金もどのような形でもよいわけではなく、希望する条件や性質などがあります。
融資を調達方法として希望するのなら、担保や保証は必要とせず、当初の一定期間に低金利が適用される、または元金返済の据え置き期間が長期に設定されるなど、負担やコストが軽い形での調達方法を求めているといえるでしょう。
成長投資は資金を投下してもすぐに収益には結びつかないと考えられるため、なるべく調達コストを抑えることや資金繰りへの負担を軽減させた上での調達が望まれているといえます。
成長資金を銀行や政策金融機関から調達できないケースも多い
中小企業の希望する調達する資金の条件に対し、金融機関にとっては成長資金に対する融資はリスクが高いと考えています。
そのため、必要とする成長資金すべてを民間の銀行など金融機関から提供してもらうことは難しいでしょう。そこで、登場するのが政策金融機関からの供給ですが、調達までの時間の長さや融資を利用する上で必要とされる要件などが壁となり、断念するケースも少なくないようです。
資金調達の複線化の1つ「出資」
起業して間もないことでまだ実績が出ておらず、銀行などからの融資は難しいという場合、一般的な借り入れではない多様な資金調達も必要です。
そこで、企業年齢が比較的浅い企業ほど、増資などを資本戦略として検討することに柔軟な姿勢もみられます。
新たな出資の方法「クラウドファンディング」
単に株式を増資する方法ではなく、インターネットを活用した資金調達方法としてクラウドファンディングを用いる中小企業もいます。
クラウドファンディングでは、資金を調達しようと考えている方がインターネット上で資金を募集し、募集ページを閲覧した不特定多数の方たちから出資を受けるという方法です。
会社を設立してまだ日が浅い場合や、事業評価が困難という場合、また、必要とする資金が少額であることで、金融機関からの資金調達が困難な場合などに適した資金調達の方法といえます。
インターネットから、自社が考えているプロジェクトなどを公表し、賛同してくれる出資者が見つかれば不特定多数の方から資金を得ることができます。
取り組みやアイデアを掲載することで広告や宣伝に繋がるケースもあるため、マーケティング活動にも利用できる相乗効果も期待できます。
クラウドファンディングのメリットとデメリット
成功すれば多くの賛同者から出資を得ることができ、自社の宣伝にも繋がるといった部分は大きなメリットです。
しかしその反面、プロジェクトなどをインターネット上に公開するということは、そのアイデアを他社などに盗まれる可能性も否定できません。リスクを理解した上での利用が求められるといえるでしょう。
中小企業のクラウドファンディングの利用状況
実際のところ、中小企業が資金調達の方法としてクラウドファンディングを利用しているケースは1%程度ですが、その理由として周知されていないことが挙げられます。
中小企業から認知されていないことで、まだまだ利用度は低い方法ではありますが、クラウドファンディングを通じて自社製品の開発に成功した企業も存在していることから、自社の活路を見いだすことができる可能性は広がるため、方法の1つとして検討してみてもよいでしょう。
多様化する資金調達の方法の1つ、動産や売掛金を担保とした融資
多様化する資金調達の方法はいろいろありますが、その1つとして動産・売掛金担保融資(ABL)が挙げられます。
「ABL」とは「Asset Based Lending」の頭文字を取った言葉であり、企業が保有している在庫や機械設備、売掛債権などを担保として借り入れを行うという方法です。
これまで、金融機関から融資を受けるときに担保として差し入れるものは不動産が中心でした。
しかし、不動産価値が下落した場合に担保価値は低下してしまうため、過度に不動産に依存する融資からは脱却しようとした金融機関では、ABLが推進されているようです。
動産・売掛金担保融資(ABL)のメリット
事業を拡大や縮小する場面でも、必要とする運転資金に応じた融資を利用できます。売上が増加したときには、在庫や売掛債権が増えた分に応じて、運転資金を調達できるという部分がメリットといえるでしょう。
動産・売掛金担保融資(ABL)のデメリット
現在、地方銀行など、地域の金融機関を中心にABLが実行される件数や金額は増えつつあるようです。
しかし、差し出された在庫などの動産や売掛債権が担保として適正なものか判断が難しいということや、取引先の在庫などの資産の管理状況が把握できていないといった部分で、金融機関も推進する上での問題を抱えているようです。
このような課題をクリアするには、やはり金融機関が中小企業の事業性や経営課題をしっかりと把握し、理解していくことが求められるといえるでしょう。
中小企業が有効とする資金調達の方法「ファクタリング」
ABLでは売掛債権を担保に融資を受けますが、売掛債権を使った資金調達の方法でも担保として借り入れを行うのではなく、売却して資金を調達するファクタリングという方法もあります。
企業が保有する売掛債権を売却し、売掛代金の決済予定日より前に現金に替えることで資金を得るという方法です。
売掛金が企業の資金繰りに影響する理由
企業間での取引は、売上発生と同時にその代金が入金されることは少なく、後日請求書を発送して代金を入金してもらうといった掛け取引が一般的です。
その結果、売掛金という形で売掛債権が発生することになりますが、入金までの期間はどれほど遅くても1年以内であることが通常です。
ただし、入金されるまでの間にも、仕入れ代金や営業費用、従業員に対する給与、税金など、支払いは色々と発生し続けます。
もし順調に売上が上がっていても、売掛金として残っていれば手元の資金が不足し、資金繰りが回らなくなったり、最悪の場合、ショートしてしまう可能性も出てくるでしょう。
売掛金はできるだけ早期に回収することが、資金繰りを悪化させないために重要だといえます。
中小企業がファクタリングを利用するメリット
早期に資金を調達しなければならない場合、銀行や政策金融機関からの融資では間に合いません。担保を差し入れる借り入れや出資を募るという方法も同様に、資金を調達するまでは一定期間を要することとなるでしょう。
そもそも金融機関からの融資は審査を通過しなければ借り入れできません。
急に高額の資金が必要という場面で、ファクタリングなら売掛金の回収を待たずに、資金を調達することができます。
また、売掛金は貸借対照表上では流動資産に含まれますが、売却することで売掛金が現金に変わる仕訳処理を行います。
借り入れのように負債を増やさず資金を調達できるため、その後の銀行などの評価にも影響しない部分もメリットといえるでしょう。
ファクタリングに利用できる売掛金の特徴
ファクタリングでも審査は行われますが、融資での審査と大きく違う点として、重視される項目が申し込みを行った企業の信用力ではないという部分です。
融資の審査では、企業の経営状況や債務の多さ、決算書上の数字などを細かく確認し、貸し付けを行った後の返済能力の有無を重視される傾向にあります。
しかしファクタリングでは、申し込みを行った企業の信用力ではなく、売掛先企業の信用力が重視されます。
そもそも売掛債権は、相手企業の信用度が高くなければ掛け取引は成立しないため、売掛金が発生している時点で回収できる可能性が高い優良な債権といえるでしょう。
しかし、経営状況は常に変動する可能性が高いため、審査により売掛先企業の信用力の高さを判断した上で、ファクタリングによる売掛債権の資金化が可能か判断することとなります。
ファクタリングの申し込み先
売掛債権を売却するためには、ファクタリングを業とする専門業者、または銀行やノンバンクなどでファクタリングの申し込みを行います。
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類あり、売掛先企業を取引に含めない2社間を専門に行うのはファクタリング専門業者です。
3社間の場合には、売掛先企業に売掛債権を売却する旨の通知がなされ、承諾を得た上での取引となります。
資金を必要としている事実を売掛先企業に知られたくないという場合には2社間でのファクタリングを行う必要がありますが、銀行などでは3社間のみの取り扱いですので注意しましょう。
まとめ
中小企業が円滑に資金を調達するためには、サービスを提供する金融機関や専門業者が、様々な専門職との連携することが求められます。
しかし金融機関がすべての企業のニーズにこたえることは難しく、企業自身が自らどの資金調達の方法を選ぶか、借り入れだけに頼らず選ぶことが必要となるでしょう。
現在は資金調達の方法が多様化していますので、融資以外にも色々な方法から選択することができます。借り入れに固執し過ぎない資金の調達で、資金繰りを改善させていくようにしましょう。
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