近年では働き方改革やIT技術の進化などの他、新型コロナウイルス感染拡大や他国の戦争など、従来の事業計画どおりに経営が進まなくなり様々な課題を抱える会社が増えています。
事業計画や経営方針を見直ししなければならないできごとが多く起きている中で、抱える課題を解決できないままでは企業成長が難しくなっているといえるでしょう。
事業環境を予測することが難しくなっている今、どのように課題を解決させて計画を立てていけばよいのか考えていくときがきています。
そこで、今中小企業が抱える課題を解決させるためにどのような事業計画を立てていけばよいのか徹底解説していきます。
目次
事業計画は事業ステージごとの課題に合った活用が必要
会社が抱える課題は様々であり、どのような対策を講じればよいのかは、おかれている状況などで変わってきます。
新型コロナウイルス感染拡大やロシアのウクライナ侵攻問題などで、先を見通すことが厳しくなっている状況ではあるものの、何の仮説も立てず事業を続けていても成長は見込めません。
思い付きのアイデアを実行したとしても、成功するとは限らず、判断を誤れば事業持続すら厳しくなってしまうでしょう。
そこで、今事業がおかれている状況を客観的に分析しながら、効果が期待できる施策を戦略として積み上げていくことが必要です。
まずは目標を定め、客観的に分析をした上で、策定した戦略・施策を目に見える形とした事業計画を立てていきましょう。
そして事業ステージごとに異なる抱える課題に合わせて、立てた事業計画を活用することが大切です。
事業のステージに合った事業計画書の必要性は以下のとおりとなっています。
創業期~成長期までの課題と事業計画書の必要性
【抱えることの多い課題】
- ・事業の核となる商品が確立されていない
- ・人材が不足している
- ・事業資金が不足している
【事業計画書の必要性】
- ・サービス検証予定を明確化させ社内外で調整する
- ・事業計画をもとに採用戦略を検討する
- ・事業計画をもとに投資家や金融機関と交渉する
成熟期までの課題と事業計画書の必要性
【抱えることの多い課題】
- ・既存事業の成長が鈍化してしまう
- ・競合との商品・サービスの差別化を図ることが困難になる
- ・新規事業の開発を進めにくくなる
【事業計画書の必要性】
- ・既存事業の客観的な見極めを行う
- ・新規事業開発の方向性を明確にし社内体制を整備する
転換期・衰退期までの課題と事業計画書の必要性
【抱えることの多い課題】
- ・業績が下降傾向になる
- ・資金繰りが厳しくなる
- ・何をやっても成功しない
【事業計画書の必要性】
- ・窮境の要因を特定する
- ・優先順位をつけて課題に対応する
- ・金融機関と交渉する
事業計画がもっとも必要となる時期は「成熟期」
上記に紹介した、事業ステージことの課題と事業計画の必要性のうち、特に注意が必要となるのは「成熟期」です。
成熟期は事業領域の拡大局面といえますが、組織が抱える課題としては、部門同士のコミュニケーションや連携がうまくとれず新しい動きに向けて協力しにくくなることが挙げられます。
また、それぞれの社員が毎日同じ業務をしているだけで、事業環境の変化に鈍感になっている可能性も否定できないといえるでしょう。
既存の事業の成長速度は鈍化しているのに、次の事業が立ち上がっておらず、経営陣もどのような方針を立てて新規事業を考えていくべきかわからないまま対応が続いてしまうこともあります。
そして毎年の目標設定も、毎年似た内容で決められることで、現場で創意工夫がうまれにくくなってしまいます。
どのような事業でも、成長期・成熟期の後に衰退期を迎えることを理解し、今続けている事業だけではどこかの段階で成長の限界を迎えることになると留意しておくべきです。
持続的な成長を実現させるためにも、継続して事業領域を拡大させることや、新規事業の可能性を考えていくことが必要となるでしょう。
成熟期には組織の一部のみが最適化されやすいと理解しておく
成熟期の事業では先に述べたような課題を抱えていることが多いですが、事業拡大や新規事業に対応することが遅れてしまうのは、成熟期段階の組織の一部のみが最適化しやすいためです。
創業期・成長期にはいろいろな部門が設けられて、社員の数も増えていることがほとんどです。
部門も大きくなり社員も増えれば、それぞれの部門の目標設定や運営方法なども確立されていきます。
しかし部門内で過度な業務効率化が進んでしまうと、その部門のみが最適化することになります。
結果として事業の成長に向けて戦略を立てることや方針を決めることが難しくなり、社員の数が少なかったころよりも経営ビジョンや戦略が社員それぞれの浸透しなくなってしまいます。
そのため成熟期には、作成した事業計画を社内で共有できるようにしておき、経営の目標やビジョン、戦略を浸透させることが必要です。
事業計画で全体の意識を統一しながら、部門同士が連携・協力できる体制を作ることが求められます。
事業の再生局面で発生する課題にも対応できるようにしておく
転換期・衰退期は事業の再生局面にある時期といえますが、この時期になると社員のモチベーションが低下したり当事者意識が欠如したりします。
さらに部門間で対立が起きていることが顕在化され、業績が悪化していても原因が特定できないままの状態となる場合もあるでしょう。
何をするべきか、有効な施策を検討することも何から始めるべきか優先順位をつけることもできず、解決できない状況となってしまいます。
その結果、資金繰りにも影響を及ぼすこととなり、場当たり的な対処で資金繰り悪化から抜け出せず、資金繰りが回らなくなってしまうでしょう。
早急に行うべきことの優先順位と改善施策を検討し、実行することが求められます。
仮に赤字が続きで資金繰りもマイナスが続くときには、選択できる施策はそれほど多くあないため、迅速・的確な対応が必要となります。
事業の再生局面で課題解決に向けて取り組むべきこと
事業の再生局面では、迅速に現状を分析して窮境の要因を客観的に見極めることが必要です。
施策・優先順位・数値的効果・シミュレーションなどを事業計画としてまとめ、目標達成に向けて無駄なく動くことが求められます。
金融機関など債権者と交渉が必要になったときにも、事業計画で明確な改善方針を示すことができれば、信頼を失うことなく取引を続けることができます。
事業計画の構成
事業計画の構成を考えるときには、何のために計画するのか、その目的に応じた個別の検討が必要となります。
必要な項目は、
- ・置かれている現状
- ・事業ステージ
- ・業界の特性
などにより異なるものの、どの事業でも必ず盛り込んでおきたい項目と基本的な事業計画の構成は以下のとおりです。
- ・経営目標・ビジョン…いつまでにどのような目標を達成するか
- ・事業環境分析…市場や競合なども踏まえた外部環境と内部環境を分析する
- ・事業戦略…3~5年での競争優位性を確保するための中期事業戦略の方針を決める
- ・目標設定…目標とする利益・CF・返済計画などを決める
- ・個別施策…誰が・何を・いつまでに・どのくらい実施していくのか、施策ごとのKPIなど数値計画を立てる
- ・財務数値計画…財務シミュレーション(PL・BS・CF)と投資計画を立てる
事業計画作成については、経営目標やビジョンを明確にし、事業環境の分析を行います。
その分析で明確になったビジネスの機会とリスクや、自社の強み・弱みを前提とした事業戦略を策定しましょう。
何をするべきか戦略が決まったら、自社の経営資源を前提に、具体的な個別施策や目標とする財務数値を設定します。
個別施策による効果を財務数値に折り込み、目標達成までの財務数値の動きを描いた財務数値計画を立てましょう。
持続的成長の実現に向けた重要項目
持続的に事業を成長させていくためには、事業領域拡大や新規事業立ち上げを行うことを目的とした、既存事業の枠組みをこえた展開が必要です。
これまでの手法・考え方・組織体制のままでは対応不可となる可能性もあるため、すべて想定どおりに実現できるわけではありません。
関係者と連携・協力しながら動いていくのなら、持続的成長の実現に向けて次の項目を明確にしておくようにしましょう。
- 経営目標・ビジョンを立てる
- 経営リソースを評価する
- 徹底した市場調査や分析を行う
- 事業拡大に活用する評価基準
- 事業戦略と個別施策を立てる
それぞれの項目について説明していきます。
経営目標・ビジョンを立てる
事業領域を拡大させるために、どのような方向性で事業展開するのか、経営目標やビジョンを示すことが必要です。
それぞれの部門の社員同士で同じビジョンを共有し、部門間の連携・協力による迅速な意思決定が可能となります。
経営目標やビジョンを設定するときには数値やビジュアルも活用するとよいでしょう。
経営リソースを評価する
事業が拡大していくことで、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源が分散してしまい、本来の自社の強みや弱みがわかりにくくなることもあります。
経営資源は事業戦略の前提のため、それぞれの経営資源に対し客観的な視点で評価することが必要です。
事業計画を策定した後にも自社の経営資源には目を配り、分析的な視点で自社を見つめなおしていきましょう。
徹底した市場調査や分析を行う
自社分析に加え、競争環境や市場ニーズの調査を徹底的に行うことも必要です。
市場を選定し、対象となる市場の課題や顧客ニーズを調査していき、市場関係者に対するヒアリングを通じて数年間のうちにどのように変化していくのか見通します。
事業拡大に活用する評価基準
市場の選定では、外部的評価だけでなく既存事業との関連についても評価していきましょう。
新しい市場と既存事業にシナジー効果を見込めることが理想といえるため、
- ・今の経営資源を活用できるのか
- ・保有する技術と親和性はあるか
- ・営業チャネルは活用可能か
などの視点を持って評価していきます。
事前に評価し選んだ市場だとしても、計画通りの収益を達成できるとは限らないため、仮に目標としていた収益を上げることができなかったときの継続または撤退の判断基準も定めていくようにしてください。
事業戦略と個別施策を立てる
分析した事業環境を前提に、経営目標やビジョンなどあるべき姿を実現させるための道筋を定めたものが事業戦略です。
事業戦略に沿って事業を進めていくためには、それぞれの部門がどのような行動を取ればよいのか具体的にプランニングした個別施策も立てていきます。
個別施策では施策ごとに5W1H を明確に描き、それぞれの役割や責任範囲を示して共有しておくとよいでしょう。
なお5W1Hとは情報伝達の基本的な手法で、
- ・Who(だれが)
- ・When(いつ)
- ・Where(どこで)
- ・What(なにを)
- ・Why(なぜ)
- ・How(どのように)
行ったのか指し示す言葉として使われています。
まとめ
事業が再生局面に陥りそうなときには、その要因を特定し、短時間で課題解決につながる施策を検討・実行することが大切です。
資金繰りが厳しい状況のときには、金融機関など社外の利害関係者に対する説明が必要になることもあるため、限られた時間軸でしっかりと分析・計画していきましょう。
事業再生であれば、事業環境がなぜ厳しい状況なのか客観的な分析を行い、明確な根拠を持って論理的に説明できる計画を立てることが必要です。
事業の窮境要因は外部環境が変わったこと以外にも、たとえば財務状況やマネジメント手法など内部的な要因も考えられます。
現状分析に基づいて窮境要因と影響について仮説を立て、検証するための追加調査・分析を行うようにしてください。
時間や資金のどちらにも余裕がない中、窮境要因を特定できていなければどの施策を優先するべきか判断を誤る可能性もあります。
窮境要因を特定した後は、要因を取り除く事業戦略と実行のために必要となる施策を個別検討していきましょう。
実行する上で、誰が・いつまでに・何をすれば・どのくらい課題解決につながるのか明確に示することも必要です。
そして事業再生局面での資金計画は重点的に検討が必要となるため、いつどの程度の資金が足らなくなる可能性があるのか明確にしておいてください。
資金不足が起きる可能性があるのなら、改善施策に立ち戻り再検討することが必要です。
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