企業経営を続ける上で労務管理は欠かすことのできない業務の1つですが、もし適切に行われていないのなら改善することが必要となります。
ただ、労務管理を改善させたいと考えていても、具体的にどのような見直しが必要かわからず、困っている方も少なくありません。
そこで、労務管理とは具体的にどのようなことを行うのか、その業務範囲と改善する方法について解説していきます。
目次
労務管理とは
「労務管理」とは、従業員の「労働条件」を管理したり「労働環境」を整備したりする業務のことで、「人事管理」と一緒に行うことになります。
ただ、人事管理と性質や役割が異なるため、それぞれの内容を把握しておきましょう。
労務管理
「労務管理」では従業員の労働条件や福利厚生など管理するため、
- 社会保険や福利厚生の加入手続
- 勤怠・給与の計算
など、組織単位で事務的な手続を行います。
人事管理
「人事管理」では、人材を効率的に確保するための採用や、採用した人材が能力を最大限に発揮し働くことができるような配置・評価をすることが主な業務です。
企業によっては人事と労務の担当者をわけず、兼任することもあります。
労務管理で行う業務の種類
労務管理には次の2つの役割があります。
- 効率的に人材を管理し生産性を向上させること
- コンプライアンス遵守によりリスクを回避すること
従業員が働きやすい職場環境を整備することで、業務も効率化され生産性も向上します。
そして労働に関する法令を管理することや、福利厚生などで必要な手続を遅れることなく進めることで、法令違反により罰則を受けるリスクを回避でき企業の信用力を維持できます。
労務管理で行う業務には次の6つです。
- ・就業規則の作成・管理
- ・労働契約や労働条件の管理
- ・勤怠・給与の計算・管理
- ・福利厚生の管理
- ・安全・衛生に対する管理
- ・業務の見直しと改善の取り組み
それぞれ詳しく説明していきます。
就業規則の作成・管理
労務管理では、従業員にどのような規則に基づいて働いてもらうのか、そのルールを決めておくことが必要です。
労働基準法でも、常態パート・アルバイトを含む10人以上の従業員が働く場合には、「就業規則」を定め行政官庁に届出することが必要となっています。
就業のルールについて、「就業規則」を作成し、いつでも従業員がその内容を確認できるような管理が必要です。
労働契約や労働条件の管理
従業員を雇い入れるときには労働契約、昇進・転勤などのタイミングでは労働条件の変更が必要となります。
特に雇い入れの際には、労働条件通知書を発行するといった業務が必要です。
勤怠・給与の計算・管理
従業員の勤怠管理や、それに伴う給与計算なども労務管理の1つです。
従業員の出退勤の時間や遅刻欠席の有無、休暇の取得について正確に把握できるようにしておき、適切に管理を行いましょう。
そのデータをもとに、給与額の支払い計算を行います。
福利厚生の管理
法律で定められた「法定福利」、そして社内で定められた「法定外福利」、どちらも労務管理の対象となります。
「法定福利」に含まれるのは、健康保険・雇用保険・労働保険など各種社会保険の手続、年金事務所への届出などがあり、「法定外福利」では育児支援・特別休暇・社宅の用意など会社によって異なります。
安全・衛生に対する管理
従業員が安全・快適に働くことができるように、職場の安全・衛生管理や、従業員が受ける健康診断の管理も必要です。
健康診断の結果を従業員に通知し、労働基準監督署に報告するといった作業が必要となります。
なお、労働安全衛生法では従業員50人以上の企業については、1年ごとのにストレスチェックを実施することが義務づけられています。
業務の見直しと改善の取り組み
業務改善の見直しと改善の取り組みも労務管理の重要な業務です。
企業コンプライアンスに対する意識も高まっているため、パワハラやセクハラと呼ばれるハラスメントへの対策や、長時間労働を是正するといった取り組みが必要となるでしょう。
中小企業が労務管理で抱えている問題
近年、中小企業では労務管理が適切に行われておらず、整備されていない項目や想定外の事態などで問題がおきやすくなっています。
具体的に中小企業で起きている問題として挙げられるのは、
- ・雇用形態
- ・勤務時間
の2つが関係します。
それぞれはどのような労務管理に関する問題が起きているのか説明します。
「雇用形態」の多様化
働き方改革が進む中で、従業員には多種多様な働き方が拡大されています。
正規雇用やパートや派遣といった非正規雇用だけでなく、個人事業主やフリーランスとして働く方と業務委託契約を結ぶ形式をとる企業も増えたといえるでしょう。
そのため労務管理も従来までと違う形で行うことが必要となりましたが、多様化する雇用形態において次の2つが問題になりやすいといえます。
- ・就業規則が整備されていない
- ・雇用形態による待遇差
それぞれ詳しく説明します。
就業規則が整備されていない
雇用形態の多様化で問題となるのが、就業規則の整備が不足していることです。
就業規則を作成することで、雇用条件や業務についての規則を明確化できるため、会社と従業員の利益を守るためにも必要といえます。
しかし雇用形態の多様化により、それに対応できる就業規則が整備されているとはいえず、対応可能な内容になるような見直しが必要です。
雇用形態による待遇差
正規雇用と非正規雇用という2つの働き方で、待遇に差をつけることは好ましいことではありません。
経費を削減しようと、非正規雇用者に対する待遇を正規雇用者よりも低くする傾向が見られますが、2020年4月からは「同一労働同一賃金」が開始されているため、トラブルを防ぐためにも待遇差をつけない環境を整備することが必要です。
「勤務時間」の管理が徹底されていない
従業員がどのくらい働いているのか、勤務時間を適切に管理できていなければ、残業代の未払いなどを発生させることとなり、様々なトラブルへと発展しやすくなります。
週40時間を超えて従業員に働いてもらうときには、労使間で協定を結ぶことが必要であり、労使協定を締結していても残業時間は月45時間・年360時間以内までの上限を超えることはできません。
臨時的な特別な事業がある場合は、労使間で合意すればこの限りではありませんが、それでも複数月平均80時間以内・月100時間未満・年720時間以内という上限は守ることが必要です。
有給休暇の消化率を向上させる
日本では長時間働いたほうが努力をしていると認められやすい傾向があり、有給休暇を取得しにくい職場環境であることもめずらしくありません。
そのため本来なら取得できる有給休暇が多く余っているというケースも見られますが、年10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員には、最低でも年5日は有給休暇を与えることが必要とされています。
生産性向上のためにも、適切に有給休暇を取得してもらい、仕事へのモチベーションを高めてもらうことが必要です。
労務管理を改善させるためのポイント
労務管理を適切に行うため、今の管理体制を見直し改善させることが必要ですが、そのためのポイントは次の3つです。
- 労働法の基本法令を理解しておくこと
- 徹底した情報管理を行う
- 労働環境の改善意識を高める
簡単なことではありませんが、人を雇用する上でいずれも重要なことです。
適切に労務管理が行われている会社であれば、働きやすい職場と従業員に感じてもらうことができ、結果的に現場の生産性を向上させ人材の定着率を高めることにもつながることになるでしょう。
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