後継者不足で事業承継ができないことに悩む経営者は少なくありませんが、どのような業種がもっとも多いのでしょう。
事業承継の手段としてM&Aが検討されることもありますが、業種や会社規模によるものの会社や事業を譲渡するケースが7割にも上るほどです。
そこで、今後事業承継はなぜ中小企業で進まないのか、どのような業種に多いのか、会社規模による違いなど解説していきます。
目次
事業承継はなぜ進まないのか
事業承継が進まないことに悩む中小企業の経営者は、その要因として人・お金・法律などいろいろな範囲に及んでいます。
その中でもどのようなことを具体的に問題として、
- ・後継者の問題
- ・税金の負担が重い
- ・個人保証を引き継がなければならない
- ・後継者に自社株買い取りの資金がない
- ・株式の保有数の問題
などを挙げています。
それぞれ詳しく説明していきます。
後継者の問題
中小企業の経営者が会社を引き継いでほしいと希望しても、後継者となる人材がいないことで事業承継は進みにくくなっています。
従来までは経営者の子や親族が会社を引き継ぐケースが多かったですが、後継者となる子がいない、いたとしても継ぐ意志がないことで事業承継が進まないことも少なくありません。
大学を出て別の会社に就職した子が、そのまま会社に勤務し続けることを望み、親の会社を引き継ぐことを拒むといったケースです。
事業承継が必要になるのは現経営者が高齢になってからのため、子も勤務中の会社でそれなりの地位を築いていることも多く、家業に魅力を感じないときなどは会社を辞めてまで親の会社を継ぐことはないでしょう。
仮に事業が順調な場合でも、数年後にはどうなっているかわからず、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で先行きがより不透明になり事業承継をためらわせてしまう要因になっていると考えられます。
また、子に会社を継ぐ維持があったとしても、資質や能力不足などで事業承継が進まないケースもあるようです。
後継者を育成するために必要な期間は5~10年と考えると、早い時期から新たな経営者として育てることができるかがポイントとなります。
子や親族に後継者候補が見つからないときには、社内の役員や従業員を候補とするケースもあるようです。
税金の負担が重い
休業・廃業件数は現在増加傾向にありますが、その背景として経営者の高齢化が関係しています。
東京商工リサーチの調査によると、2019年に休廃業・解散した会社の経営者平均年齢は69.61歳です。
経営者の年齢分布の約3割が70代以上となっており、すでに引退時期を超えている企業も少なくありません。
しかし事業承継を急ぎ、後継者が資産を引き継げば贈与税がかかりますし、相続による事業承継であれば相続税を負担することが必要です。
実際は何の対策もしておらず、最終的に税金負担に苦しむケースが多くなっており、子などが後継者の場合には税金を負担させたくないと考え事業承継が進まないこともあります。
事業承継税制は簡単に適用されない
自社株式を後継者が相続や贈与で取得する場合、一定要件を満たすことで納税の猶予または免除が事業承継税制で適用されることもあります。
しかし適用要件が厳しく、手続も面倒なことがデメリットです。
平成29年度に税制が改正されたことで、従来よりも要件は緩和されていますが、スムーズに適用されるわけではないと留意しておきましょう。
個人保証を引き継がなければならない
中小企業が銀行から融資を受けるときには、経営者が連帯保証人となる個人保証が必要になることがほとんどです。
しかしお金を借りるときは便利な個人保証ですが、事業承継の妨げになるケースも見られます。
事業承継のときには、その個人保証も後継者に引き継ぐことになります。
そうなると後継者が負債を抱えることになるため、事業承継の際には銀行に個人保証を外してもらえないか願い出ることが必要です。
日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会も「経営者保証ガイドライン」を策定し、中小企業の経営状況によって個人保証を解除することを求めるとしています。
ただ、ガイドラインに強制力はないため必ずしも解除されるとはいえませんが、解除できないときにはその理由を具体的に説明してもらえるケースも増えているようです。
後継者に自社株買い取りの資金がない
従業員または役員が後継者として事業を承継するときには、現経営者から自社株を買い取ることになります。
しかし買取資金がなければ、事業承継はできません。
金融機関から融資を受けて資金を調達したくても、経営者が交代することで会社の信用力を低下させ、借入れが厳しくなり資金を準備できないこともめずらしくありません。
この場合、資金不足を原因として事業承継できない中小企業などを対象とした経営承継円滑化法を活用しましょう。
都道府県知事の認定により金融支援を受けることを可能とする制度ですが、県や金融機関などの審査を通ることが必要です。
株式の保有数の問題
事業承継の際には、事前に後継者に自社株式を集中させておくことが必要です。
集中させておかなかったため、少数株主から株式買取を要求されることもあれば、株主代表訴訟を起こされてしまうといったリスクを高めるからといえます。
対策としては、遺言の作成や自社株式の生前贈与、安定株主の導入などが挙げられます。
また、株式が集まらないといった課題を抱えるケースもあり、特に平成2年よりも前に設立した株式会社であれば、他人名義で取得した名義株の株主が存在することもあるため注意してください。
この名義株主の所在不明のままで放置していると、ある日突然、名義株主があらわれ権利を主張される可能性も否定できません。
所在不明の株主が多ければ多いほどリスクは高くなります。5年以上連絡が取れない株主の株式は処分可能となるため、手続をしておいたほうが安心です。
どのような業種が事業承継しているか
平成28年に公表された中小企業庁財務課「事業承継に関する現状と課題」から事業承継した業界の内訳を確認してみましょう。
公表内容によると、もっとも事業承継した件数が多いのは製造業で19%です。
続いて卸・小売業・建設工事業・飲食店・宿泊業・運送業となっています。
企業の従業員数で見た場合、従業員数10人以下の企業が約7割を占めており、小規模な企業のほうが事業承継を進めているとわかりました。
休廃業・解散企業に追い込まれる企業も多い
経営者の高齢化が進んでいるため、事業承継が進まずに休廃業・解散の件数も増えています。
東京商工リサーチの公表している「2021年 全国社長の年齢調査」によると、経営者の平均年齢は2009年以降、一貫して上昇しています。さらに2019年には過去最高齢を更新し、経営者の平均年齢は62.16歳となり、2020年には62.49歳となっています。
今後5~10年で現経営者が引退すると考えた場合、今の段階で事業承継に向けた対策を取り、具体的に準備を進めておかなければ間に合わないと考えられます。
これから日本は超高齢社会を迎えるため、中小企業の経営者の平均年齢もさらに上がると考えられます。
今後も平均年齢は高くなると考えた場合、できるだけ早く事業承継に向けた取り組みを始めるようにしましょう。
まとめ
事業承継が進まないことは中小企業の課題となっていますが、業種や会社の規模により進行の程度は異なります。
今後、経営者の高齢化がますます進んでいけば、年齢を理由として引退しなければならず、事業承継できないまま廃業せざるを得ないケースも出てくるかもしれません。
日本の経済や地域社会を維持・発展させるためにも、経営の担い手を早期の段階から見つけ、有用な事業・経営資源を次世代に引き継ぐことに取り組んでいくことが必要です。
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