親族間なのに事業承継でもめるのはなぜ?よくあるトラブルと解決策とは

2021/09/13
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親子など親族間の事業承継であれば、もめることなくスムーズに後継者へ引き継ぎが完了すると思いがちです。

しかし実際には親族間だからこそトラブルがおき、事業承継でもめることは少なくありません。

そこで、事業承継をもめることなく進めていくためにどうすればよいのか、よくあるトラブルとその解決策について解説していきます。

 

事業承継でもめる原因

後継者に資産や事業を引き継ぐ事業承継において、たとえ親族間での承継でももめることになるのはいくつか原因があります。

よくあるトラブルの例として、

  • ・誰を後継者にするか
  • ・株式をどのように譲渡するか
  • ・遺産分割

などが挙げられますので、それぞれ詳しく説明します。

 

誰を後継者にするか

 

事業承継でもめる原因として多いのは、誰を後継者にするかという問題です。

現経営者に子がいる場合、多くは息子や娘を後継者として事業承継したいと考えるものでしょう。

しかし子に後継者になる意志がない場合や、複数の子が後継者になることを希望するときには、誰に事業などを引き継いでもらうか考えなければなりません。事前に誰を後継者にするか決めていない状態で現経営者が急逝してしまい、相続人である子が兄弟姉妹間で争うケースも見られるため注意しましょう。

子や配偶者、その他親族などに後継者候補がいなければ、今度は役員や従業員などを候補として検討することも必要になります。

 

株式をどのように譲渡するか

事業承継の際には株式の所有者を変更することになりますが、たとえば後継者である子への引き継ぎは、税率が低くて済む相続を希望することもあるでしょう。

しかし、想定していたよりも株価が高かった場合には、後継者である子は多額の相続税を負担しなければならなくなってしまいます。

子が納税資金を保有していればよいですが、そうでない場合には資金調達のために銀行から借金をしなければならない、または引き継いだ資産を換価するといったことも必要となります。

もしも資金調達できず、株式を過半数保有できなければ、事業承継自体が頓挫してしまいます。

 

遺産分割

中小企業の経営者は、事業用資産経営者個人が所有していることも少なくありません。

しかしこの状態で経営者が亡くなるまで何の対策も行っていなければ、相続が発生した後の遺産は法定相続人が法定相続分に応じ承継します。

この場合、会社の株式も法定相続人が遺産共有する形となるため、誰が相続人の代表者か決めなければ議決権を行使できない状態となります。

株式は相続開始後に相続人が分割保有することはないと過去に判例が出ているため、株主として配当を受ける権利や株主総会で議決権を行使する権利は、相続人間で共有された状態となってしまうのです。

解決するためには、相続人同士で権利行使者となる代表者を決め、会社に氏名を通知することが必要となります。

上場していない中小企業の場合、経営者が大株主であることがほとんどなので、議決権を行使できる株主はおらず混乱を招きます。

仮に会社の株式の過半数を経営に関係のない相続人に相続されてしまった場合、本来引き継ぐ予定だった後継者が経営権を握ることができなくなりますので、事前の対策が必要です。

 

事業承継でもめる原因を解決させる方法

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、高齢化が進んでいる現経営者などは事業承継を望まず、先行きの見えない状態で会社を引き継いでもらうわけにはいかないと廃業を検討することも少なくありません。

しかし日本の9割以上は中小企業であり、日本経済を支える存在として、廃業が増えることは避けなければならないといえるでしょう。

せっかく後継者に会社を引き継いでもらうのなら、収益性を改善させ将来性を見込める状態にしてから事業承継したいと考えるものでしょうが、コロナ禍でその余裕もなくそのまま存続させることが精一杯というのも無理ありません。

ただ、会社をそのままの状態で存続させていくのであれば、誰を後継者にするか決め、せめてスムーズに経営を渡すことができる準備をしておく必要があります。

 

株式をどのように譲渡するべきか迷ったときの解決方法

保有する株式を後継者に相続で引き継いでもらうのか、それとも贈与がよいのか迷ったときには、「事業承継税制の特例」の活用を検討しましょう。

事業承継税制とは、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産については、相続や贈与の際に発生する相続税や贈与税を猶予する制度です。

廃業してしまう企業を減少させ、事業承継を円滑に進めていけるようにすることを目的としています。

そもそも計画的に後継者へと事業承継してもらうため、税金の負担が軽減できる制度として2009年に制定されました。

しかし制度が制定されたばかりの当初は、税金猶予となる要件が厳しく、活用する人は少なかったといえます。

そこで、中小企業の事業承継をさらに後押ししようと、「平成30年度税制改正」で事業承継税制の「特例事業承継税制(特例制度)」が新しく制定されています。

今後5年以内に特例承継計画書を提出し、10年以内に事業承継を行う場合には支援するという内容です。

事業承継税制は、

  • ・法人版事業承継税制…会社の株式などが対象
  • ・個人版事業承継税制…個人事業者の事業用資産が対象

の2種類があります。

 

特例事業承継税制の内容

法人版事業承継税制は、後継者が円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式などを相続や贈与で取得したときにかかる相続税・贈与税を一定要件のもとで猶予する制度です。

また、後継者が会社経営を続け、株式も売却しなければ納税は猶予されたままとなり、最終的に後継者が他界したときには納税猶予されている相続税・贈与税の納付は免除されます。

結果的に、対象株式100%が猶予され、最終的に税金の負担がゼロになる制度です。

先代経営者の要件として、

  • ・会社の代表者だったことがある
  • ・相続または贈与の直前には一族で50%超・筆頭株主だった

という必要があります。

先代経営者から後継者に贈与するときには、先代経営者が代表を退任しており、保有する株式全部を贈与しなければなりません。

株式をすべて譲渡し代表も退任しなければならないという覚悟が必要ではあるものの、この2つを満たさなければ事業承継とは認められないため、制度を適用させることはできなくなります。

後継者の要件は、

  • ・会社の代表者
  • ・株式を生前贈与してもらうことで、一族で50%超・筆頭株主となる
  • ・贈与の場合は20歳以上である
  • ・贈与の場合は役員就任後3年を経過している

などが必要です。

 

一般事業承継税制と特例事業承継税制の異なる点

事業承継税制は2009年から継続されている現行の一般事業承継税制もあり、新たに導入された特例事業承継税制とは内容が異なります。

一般事業承継税制と特例事業承継税制の主な違いとして、

  • ・特例承継計画提出の有無
  • ・先代経営者から相続・贈与しなければならない期間
  • ・対象となる株式の割合
  • ・猶予される割合
  • ・後継者の数
  • ・雇用確保要件の有無
  • ・相続・贈与から5年後以降に株式の譲渡・解散があったときの対応
  • ・相続時精算課税で対象となる人

などがありますので、それぞれ詳しく説明します。

 

特例承継計画提出の有無

特例事業承継税制の場合、適用させるためには特例承継計画を提出しなければなりません。

 

先代経営者から相続・贈与しなければならない期間

特例承継計画を提出した場合でも、相続や贈与を2027年12月31日までに行わなければ、特例事業承継税制の適用は受けることができなくなります。仮にこの期限を過ぎたときには、一般事業承継税制が適用されるため注意しましょう。

 

対象となる株式の割合

一般事業承継税制の場合には、対象となる株式の割合は発行済議決権株式総数の3分の2までですが、特例事業承継税制ではすべての株式を対象とします。

 

猶予される割合

一般事業税制の場合、猶予されるのは対象株式の評価額80%です。しかし特例事業承継制では対象株式の評価額100%が猶予されるという違いがあります。

 

後継者の数

株式の贈与が可能なのは複数株主ですが、一般事業承継税制の場合には後継者が筆頭株主である代表者1名と決められています。しかし特例事業承継税制では後継者3名まで認められます。

 

雇用確保要件の有無

一般事業承継税制の場合、従業員数は5年平均で、相続または贈与のときの80%を下回ってはいけません。しかし特例事業承継税制の場合には、80%を下回った理由を記載した書類を提出することで、認定を取り消されることはなくなります。

 

相続・贈与から5年後以降に株式の譲渡・解散があったときの対応

一般事業承継税制の場合には、相続・贈与から5年後移行に民事再生や会社更生したときには、その時点の評価額により相続税・贈与税を再計算します。そして、超える部分の納税猶予額は免除されることになります。

対する特例事業承継税制では、「経営環境の変化をしめす一定の要件」であれば、売却や合併による消滅・解散でも同様の制度導入が可能です。

 

相続時精算課税で対象となる人

一般事業承継税制では推定相続人1名のみを相続時精算課税に適用させることができますが、特例事業承継税制なら推定相続人以外でも適用可能となっています。

 

事業承継でもめることをなくすための遺言書作成

事業承継でもめるのは、誰が会社や資産を引き継ぐのか明確でないからです。

そのため、事前に会社と現経営者個人の資産はしっかり分類しておき、誰に事業を引き継いでもらい個人資産は誰に配分するのかなど遺言で決めておきましょう。

特に不動産などは現金のように分けることができいため、相続人のうちの誰が単独で引き継ぐのかなど、検討が必要です。

遺言は事前に相続人となる人へ説明しておかなければ、遺産を巡る紛争が起きることもあり、残された子同士の関係を悪化させます。

そのため、遺言の構成についてしっかりと検討し、相続人が後でもめることのないよう説明しておくようにしてください。

 

もめることがなければ親族内承継はメリットが大きい理由

もめることなく親族内での事業承継を進めることができれば、

  • ・従業員や取引先にも受け入れてもらいやすくなる
  • ・親族に引き継いでもらうことで安心できる
  • ・早期から事業承継準備を始めることができる

といったメリットがあります。

 

従業員や取引先に受け入れてもらいやすくなる

後継者に事業を引き継いでもらったものの、会社の役員や従業員、取引先などに受け入れてもらうことができなければ意味がありません。

特に従業員から反発を受けてしまうと、現場のモチベーションも低下し、生産性や効率性が悪化します。

さらに取引先や金融機関などから信頼を得ることができなければ、経営そのものが困難になる可能性がありますが、現経営者の子が承継することはめずらしいことではないため理解を得やすいというメリットがあります。

 

親族に引き継いでもらうことで安心できる

現経営者が創業者の場合、自らが作った会社をわが子のように大切に思っていることでしょう。そのわが子のような存在を、他人ではなく親族に引き継いでもらうことで、今後も創業者の意志を引き継いでもらえると安心して引退できます。

 

早期から事業承継の準備を始めることができる

現経営者の子に事業を引き継いでもらうときには、早い段階から現場で業務を覚えてもらうなど、事前準備を進めやすいことがメリットです。

できるだけ早くから準備をしておくことによって、現経営者が突然体調を崩したときや、急遽してしまったときでも柔軟に対応できるでしょう。

 

事業承継を成功させるために必要なこと

もめることが少ない親族内の事業承継でも、一歩間違えば紛争が起きやすくなります。

また、現経営者に子がいる場合でも、必ず後継者として会社を引き継いでもらえるとも限りません。

そこで、できるだけ早めに事業承継に向けた対策を始めることが必要です。

子に事業を引き継いでもらいたいなら、子の意思を確認しておき、もし子や親族に後継者候補がいないのなら役員や従業員などから候補者を探すことになります。

事業承継の実現は、できるだけ現経営者が積極的に早期準備と手続を進めていくことが欠かせません。本業が忙しく、つい後回しにしていると、思いもよらないタイミングで相続などが発生し現場は混乱します。

また、子に引き継いでもらうときには事前に遺言を作成しておき、他の法定相続人が不公平を感じない配慮も必要です。

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