一般的に、資金・財政・金融などと訳される「ファイナンス」は、企業経営の戦略においての意味に決まった定義はありません。
ただ、お金の流れを管理するといった意味で使われることが多いですが、ファイナンスは売上などの本業に関してのこと以外に、戦略における投資や一時的な支出なども含まれます。
会社経営のすべてのお金の流れを管理することがファイナンスであり、戦略においても重要な意味を持ちますが、具体的にどのようなことを実践していけばよいのでしょう。
目次
会社経営で戦略を立てるときにファイナンスは重要
会社の売上と費用がどのくらいで、最終的にどれほどの利益を生むことができているか、大まかには理解できていても発生する費用はどのように確保されているか把握できている社員はそれほど多くないでしょう。
また、今の時点での会社の価値なども、経営者や担当部署以外はほとんど知る機会がないといえます。
このように会社で働く社員の多くはファイナンスと馴染みがないといえますが、小規模の企業なら経営者もファイナンスに関する意識が低いことも少なくありません。
しかし、会社経営で戦略を立てるときにはファイナンスは重要であり、お金の流れの管理を行わないどんぶり勘定での経営はリスクが高まります。
将来性を疑問視されることになるため、会社経営ではファイナンスを考えることがまず必要だといえるでしょう。
ビジネスプランを立てるときには、資金調達が重視されるのもファイナンスこそが重要だからです。
ファイナンスの手法によって、会社の安全性や収益性が決まることもあると考えておくべきといえます。
そもそもファイナンスとは?
ファイナンスとは会社のお金の流れを管理することであり、金額という数値による定量管理と、経営理念やビジョンなど方向性を策定・実行する定性管理のうち、定量管理の代表格がファイナンスです。
そして会社内部から見た資金調達活動をコーポレートファイナンスといい、会社外部から見た投資活動をインベストメントといいますが、これらを総称したものがファイナンスです。
ファイナンスをコーポレートファイナンスとインベストメントに分けたとき、それぞれの立場の違いによって定量管理の手法は違ってきます。
たとえばコーポレートファイナンスの分析手法として挙げられるのは次の2つです。
- ・DCF法(将来獲得する金銭価値を現在に割り引き事業の正当性を検証する手法)
- ・MM理論(負債と自己資本の割合から最適な資本構成を導く手法)
そしてインベストメントでは次のような手法が分析に使われています。
- ・ポートフォリオ理論(投資を効率的に行う手法)
- ・オプション理論(将来的な外部環境変化に備え、投資の権利を獲得する手法)
いずれにしても経営をファイナンスにより定量的に管理することで、次のようなメリットがあります。
- ・既存の事業や新たな事業の経済的価値(利益)を予測し、継続と廃止、着手などを判断できること
- ・経営リスクを予測することで、そのリスクを最小限に抑える手段を選ぶことができること
- ・自社や他社の理論的な企業価値の算出が可能となること
- ・理論的な企業価値をM&Aなどへ応用することができる
- ・会社経営をスピード化させることが可能となる
ただしこれらのメリットはファイナンス理論でしか把握できないため、ファイナンスを学ぶことによって定量的管理が可能になるとも言い換えることができます。
特に中小企業の場合、どんぶり勘定による経営が多く、ファイナンスは軽視されがちです。
しかしどんぶり勘定による経営は、気がついたときには手元の資金が不足しているといった事態を招きかねないため、ファイナンスを学ぶことによる経営状態の可視化で業績向上やリスク管理が可能となります。
経営戦略で必要なファイナンス
経営戦略ではファイナンスを重視する必要がありますが、定量的な数値を根拠のあるものとするために、次の方法を実践していきましょう。
フレームワーク
ファイナンスで最も基礎となるのがフレームワークを使った定性的事業計画です。
マーケティングを検討するときに欠かせないのがフレームワークですが、自社の基本的なポジションを確認する3C分析・SWOT分析・4P・4Cなどはファイナンスで定量的な数字を考える根拠となります。
現在は競争激化や消費者のニーズ変化がはやいため、会社が売れると予測して商品を作るのではなく消費者目線で戦略を立てることとなり、4Cの考え方が特に重視されています
SWOT分析
自社の次の4つを分析することをSWOT分析といいます。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
4P
会社から見た、
- Products(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(プロモーション)
のことを4Pといいます。
4C
消費者の目線から上記の4Pを捉えたものであり、
- Customer value(顧客が得られる価値)
- Cost(顧客にかかるコスト)
- Convenience(顧客の利便性)
- Communication(顧客とのコミュニケーション)
のことです。
オプション
事業計画や戦略を立てた場合でも、様々な手法で活用すればいくつもの選択肢を持つことになります。そこで、次のようなオプションの考え方を採用することも検討しましょう。
撤退
投資したのに成功しなかったときには、撤退する段取りを事前に決めておく考え方です。単に撤退するのではなく、具体的な対応策を決めておけば、実際に撤退が必要になってもスムーズに行動できます。
延期
事業の進捗状況に応じて、または不確実性の高い事業などは延期するという考え方です。ある程度の不確実性が解消されてきた段階で、事業へ参入する意思を決定するといった方法になります。
拡張
投資する規模を限定しておき、勝算が見込めるようになった時点で投資を広げるという、初期投資を抑える考え方です。
様々な可能性に対する対応
市場の調査やマーケティングなど、様々な経営戦略におけるフレームワークなどを使い根拠を持って予測を立て、先に述べた考え方で万一の対応なども検討していても将来のことは誰にもわかりません。
本来なら成功したはずの事業でも、たとえば今回の新型コロナウイルス感染拡大のように、予想もしていなかった事態が起きることもあるからです。
そのため想定外のことが起きたときのためにリスク管理も必要ですが、リスクの可能性と許容できる範囲を決める判断していくことになります。
リスクの許容度は様々な状況を勘案し、決定することが必要です。
事業がどれほど好調でも、リスクを取り続ければ足を引っ張ることにもなりかねず、反対にリスク許容度を下げれば業績の好転は難しくなってしまいます。
リスクの許容度のバランスを取りながら、最終的な意思決定を検討していきましょう。
経営戦略とファイナンスのバランスが重要
経営戦略を立てていく上で重要となるのは、経営に関する意思決定が適切か判断する機能です。
事業を行うときにはいろいろな可能性を考えることが必要ですが、一方的な意見だけではなくバランスを考慮した上で検討しなければなりません。
様々な可能性をバランスよく考慮していくことになりますが、ファイナンスで定量的に事業の正当性を考えることも、経営の視覚化には重要です。
定性的な企業価値とバランスは取れているか確認し、会社が一丸となって経営戦略とファイナンスのバランスを取った経営を行っていける体制を築いていきましょう。
まとめ
会社経営の戦略においてファイナンスを含めた検討は重要なことですが、中小企業ではどんぶり勘定による経営が多く、ファイナンスは軽視されがちです。
しかしどんぶり勘定による経営はいつのまにか手元の資金が不足しているといった事態を招きかねないため、ファイナンスを学び経営状態を可視化させる管理を実践していきましょう。
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