破産や倒産したときの担保物件や債権の取り扱いについて

2021/07/02
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銀行から融資を受けるのに際し、担保を差し入れることはめずらしいことではありませんが、破産や倒産してしまった場合には担保物件はどのような取り扱いとなるでしょう。

他にも担保権を留保しているときや、会社倒産後の労働者に対する賃金債権などの扱いもよくわからないことはあるはずです。

そこで、破産や倒産したときの担保や債権の扱いについてご説明します。

 

破産手続開始と同時廃止の関係

銀行から融資を受ける担保として、土地や建物など不動産に抵当権を設定していたとします。しかし破産手続きを行い、実質倒産してしまった場合には、同時廃止の決定後に免責許可も決定されます。

同時廃止とは、破産者の財産が僅少なときにおいて破産手続費用も捻出できない場合などに、破産手続の開始と同時に破産手続を終了させて実質破産手続を省略することを意味します。

破産手続は破産管財人が破産者の財産すべてを換価し、債権者に平等に配当することです。しかし換価できるほどの財産がない場合、破産管財人が受け取る報酬や手続費用も捻出できないこともあり、破産手続を進めても債権者に配当も渡らず意味がありません。

そのような場合には、破産手続を開始すると同時に破産手続を終了させることを裁判所が決めるべきとされています。

 

同時廃止決定後は破産手続も終了

同時廃止が決定されると破産手続の開始と同時に破産手続終了となるため、破産管財人も選任されることなく財産も換価されず債権者への配当もありません

本来は不動産など資産を所有していない破産者を対象とした制度ですが、不動産を所有していても抵当権等が設定されており、債権額が不動産価格を大きく上回るときには同時廃止が決定されます。

仮に破産管財人が抵当権の設定されている不動産を換価したとしても、まず抵当権を設定した抵当権者(融資を受けた銀行)が優先して配当を受け取ります。

そのため他の債権者が配当を受けることはないことから、破産手続を行っても意味がないと判断され、同時廃止が決定されるという流れです。

 

破産後の抵当権への影響

破産手続が開始決定されたことや免責許可が決定されたことで、抵当権に対しどのような影響があるのでしょう。

抵当権は破産法で別除権という扱いであり、もともと破産手続しなくても行使できます。そのため破産手続が開始されたことや免責許可が下りたからといって、何か抵当権に影響するわけではありません。

 

破産手続による集団処理へと切り替わる

破産手続は破産管財人が財産を換価して債権者に平等に配当することなので、破産手続が開始され決定されば債権者は破産手続でのみ権利を行使可能となります。

破産手続以外の権利を行使することは禁止されるため、それまでに財産に対し行っていた強制執行や仮差押・仮処分なども失効してしまいます。

すべて債権者の平等を図るため、破産手続での債権届出・債権調査・配当といった集団処理へと切り替わります。

ただ、担保として差し入れられた不動産に抵当権を設定している抵当権者は、本来優先されるべき存在であり、平等性を重視するための拘束を受けることは適当ではありません。

そのため破産法では、

「破産手続開始において破産財団に属する財産(破産者の総財産)につき特別の先取特権・質権・抵当権を有する者の権利は、破産手続によらず行使できる」

という別除権を規定しています。

これは不動産に設定されている抵当権など担保権が別除権であり、その権利を保有する抵当権者は破産手続に拘束されることなく抵当権を実行できることを意味しています。

破産手続の開始決定や免責許可決定により、抵当権に何か影響があるとは考えられないということです。

ただし破産者以外から担保の提供を受けている抵当権は、破産手続とは関係がないため別除権とはなりません。

 

免責後に任意で弁済を申し出ることは可能?

銀行から融資を受けるにあたり、土地や建物を担保として差し入れたものの、破産したことを理由に処分されるのは困るといったケースもあるでしょう。

その場合、たとえば免責許可が決定した後も借入金の返済を続けることを条件に、担保として差し入れた土地や建物などを処分することは見合わせてほしいといった任意弁済を申し出ることは可能なのでしょうか。

 

免責された債務に対する2つの考え方

免責を受けた借金の弁済契約は無効ですが、任意に行われる弁済は有効ともいえるため、別除権者である金融機関も申し入れを検討する余地はあるとも考えられます。

免責は破産手続で配当により弁済されなかった残余債務(同時廃止であればすべての債務)の責任を免除する制度です。

そのため免責許可が決定されれば、税金や罰金などを除く債務は返済義務を免れます。

免責された債務は法的な性質として考えた場合、次の2つに分けることができます。

  • ・自然債務説…債権者が法的に弁済強制できないだけで、債務そのものは存続するという考え
  • ・債務消滅説…債務自体が消滅するという考え

この2つの考え方のうち、一般的に有力とされているのは自然債務説です。

 

担保が有効と考えられれば検討される可能性あり

仮に免責後に弁済を続けるため担保の処分は免除してほしいという申し出を行った場合、債務消滅説で考えれば存在しない債務の弁済なので無効となりますが、自然債務説で考えれば弁済が有効となります。

金融機関の実務としては自然債務説で考えたとき、任意の弁済が有効になるだけで事前に約定契約を結んだとしても効力は無いといえます。

申し入れが通った場合、金融機関は法的に返済をできないことに変わりなく、任意で返済が行われたときに受領が可能となるだけです。

ただ、担保として差し入れた土地や建物に設定された抵当権が免責の影響を受けない以上は、返済をしなければいつでも抵当権を実行し借金回収を図ることが可能といえます。

そのため任意弁済の約束も抵当権で担保されることになるため、金融機関も申し入れを検討してくれる可能性はあると考えられます。

 

登記留保の場合で破産手続が行われたときはどうなる?

抵当権設定契約を締結したものの、実際には登記せず留保することを登記留保といいます。

登記をしない債権譲渡担保契約で、契約は締結するけれど通知・承諾など対抗要件を具備せず留保するときにも登記留保という扱いです。

登記留保となる理由は、登記にかかる登録免許税の節約や、登記により対外的な信用不安を懸念してのことといえます。

しかし登記留保のままで破産手続に入ったときには、担保権の効力が否定されることが考えられます。

登記留保で担保権が設定されるときには、情報収集などで信用不安状態になったとき速やかに対抗要件を具備するといった対応がとられることが一般的です。

 

会社が倒産したときの労働債権は担保されるのか

会社が雇用している従業員などに対し、賃金の支払いがまだ行われていないときには、たとえ倒産したとしても賃金を支払う義務がなくなるわけではありません

倒産するまでの期間で発生している賃金の権利・義務はそのまま残りますが、倒産後の期間の賃金については労働契約関係がその後も継続するかによって権利・義務は異なるます。

一般的に法律上の破産手続が行われたときには、労働者が受け取る賃金にも一定範囲の優先権が与えられています。

ただ、残る財産の状況などで、支払いが遅くれることもあればカットせざるを得ないといったことになるでしょう。

倒産手続に拘束されない債権の場合には、それぞれの法律に基づき財産を管理・処分する管財人に賃金を支払ってもらうように請求することになります。

法律上の倒産手続のうち、破産・会社更生では必ず管財人が選出されますが、民事再生では管財人が選出されるとは限りませんので注意してください。

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