新型コロナウイルス感染拡大の影響により、そもそも食品卸売業界が抱えていた経営課題はさらに大きな問題となっていると考えられます。
そこで、食品を含む卸売業の今後の将来性や、生き抜くために解決しなければならない経営課題についてご説明していきます。
目次
卸売業が生まれた由来
卸売業は、生産者から商品を仕入れ、小売業者に販売することが仕事です。
江戸時代には、生産地から生産物を近隣の問屋に集め、そこから大阪などの問屋に送り、さらに消費地にある問屋を経由して最終的に消費者へと届ける道筋が生まれました。
卸売業はこの流れがきっかけでできた業種であり、問屋抜きで商売を進めることができないことをあらわす言葉として「そうは問屋が卸さない」という使われ方をしています。
卸売業の種類
卸売業は生産者に向けて生産用原材料や機械・設備などを取り扱う卸業のことです。
消費者の生活を維持するために必要な商品を扱いますが、卸業者にもいろいろな種類があり、業種卸と総合卸に分けることができます。
業種卸とは、酒類卸や化粧品卸など単品を主体とした卸業のことです。
それに対し総合卸では、食品と日用品など2種類以上の品を扱います。
さらに営業範囲で全国卸と地方卸に分けられますし、メーカーと直取引を1次卸、その1次卸と取引を行う2次卸や、2次卸と取引する3次卸にと分類されます。
食品卸売業の現状と経営課題
現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、卸売業界全体の経営環境が悪化しているといえます。
その中でも食品関連は、国内食品メーカーや卸とのあいだで生き残りをかけた再編の動きが活発になっているといえるでしょう。
卸売事業での業務提携や、地域でのシェア獲得を目的とした買収・合併が増えています。
最近では都市部を中心としたシェアの獲得に向け、どのように経営課題を解決するべきかが問題になっているといえるでしょう。
ゼロから地域開拓していくのではなく、それなりのシェアを保有する中小企業などを買収し、新たなシェアとして獲得する動きが目立ってきました。
さらに海外進出なども経営課題となっており、国内の企業が海外企業を買収するといった動きも見られます。
海外からの仕入れに頼る材料の価格高騰の中で価格の値下げを実現させるため、特にタイ・インドネシア・マレーシアなどの企業買収・合併が加速しているといえるでしょう。
食品卸売業界の市場や将来性
食品卸売業界は、新型コロナウイルス感染症による外食産業・宿泊業などの不振の影響をそのまま受けてしまっています。
食品卸や食品製造は、業界すべての平均より高い割合で売掛金が回収できないことに不安を抱えている企業が多いですが、実際には未回収リスクに対する対策も十分にできていません。
今後の食品卸業界の需要はどのように変動するのかというと、新型コロナウイルス感染症が収束すれば一定の将来性は期待できるものの、中長期的に見れば人口減少に伴う人材不足などで縮小される見込みです。
少子高齢化や労働力不足など構造的な問題が解決されなければ、食品メーカーのリードタイム延長は急拡大され、ポイント還元事業の小売市場のデフレ競争が再燃化するといった新しい難題も生まれてしまいます。
今後、食品卸売業界が成長するためには、従来の強みを活かしながら抱える課題を少しずつ解決させていくことが必要です。
食品卸売業界が取り組みたい経営戦略
ドラッグストアは食品の取り扱いを始め、出店地域を拡大させています。また、コンビニエンスストアなど小売りがメインとなる資本系列化など、食品卸売業界で生き残るために対応しなければならない経営戦略は見えているといえるでしょう。
新型コロナ終息後の訪日外国人によるインバウンド需要などで、短期的な視点で見れば市場は活況する可能性もあります。
しかし日本自体の人口は減少しており、少子高齢化が進み、人口は一定のエリアのみに集中している状況です。
今後は成熟する社会の人口構造が変化することに対応できる仕掛けや戦略を練り、新たな需要を作り出すなど施策が必要といえます。
製造小売・製造卸など、どこでも購入できるナショナルブランドだけの物販業にとどまることなく、卸や小売も積極的に生産・加工に参入するべきです。
既存の流通経路で発生する費用を省きつつ、オリジナル商品を開発するといった取り組みも多くの企業で行われています。
食品卸売業界で生き残るために必要なこと
食品卸売業界で今後生き残るためには、
- 地域密着型取引の強化
- 商材の充実化/流通の効率化
- システム投資(同業他社やメーカー・小売業と連携し商品情報をデータベース化し共有)
- 商圏の拡充
- 海外事業の展開
といった経営戦略を講じていくことが求められます。
資本力を高めつつ、積極的な投資と人材確保を進めていくことが必要となるでしょう。
ただ、資本力に限界がある中小企業にとって、設備投資や人材確保を積極的に行うことは容易とはいえません。
そこで、経営課題解決に向けた資金を調達することも必要となりますし、状況によってはM&Aなども検討することが求められるといえます。
食品卸売業界の譲渡や買収の動向
食品卸売業界でも業界再編や競争激化など経営環境が変化していることを背景に、会社の譲渡や買収といったM&Aが実施されているといえます。
これまで組合の中で事業を進めていた会社のうち、いずれかの業績が悪化した場合に同じ組合の競合他社に売却するといったケースが、主に業界再編型のM&Aとして挙げられます。
サプライチェーンの川下に位置している外食チェーンが食品卸会社を買収するといった、互いの弱点を補完するM&Aなども行われています。
特に業務用食品卸売会社や海外展開を見据えたM&Aが急増している傾向にあり、同業者間だけでなく異業種とM&Aを検討する企業も増えつつあります。
卸売業が資金を調達する方法
卸売業が経営課題を解決するため、いずれにしても資金を調達することは欠かせません。
コロナ禍で銀行からの融資は受けにくい状況である企業もあれば、すでにコロナ融資などを利用しておりもう融資を受けることはできないといった企業もあるでしょう。
卸先が仮に倒産すれば、発生している売掛金は回収できなくなり、最悪の場合には連鎖倒産してしまう可能性も出てきます。
そのような状況で早期に資金を調達し、悪化したキャッシュフローを改善させるためには、銀行からの融資だけでなく債権を譲渡するファクタリングも同時に検討しましょう。
ファクタリングとは、売掛債権(売掛金)をファクタリング会社に売却し、回収期日よりも前に現金化させるサービスのことです。
融資ではない上に、入金期日前に売掛金を現金化できるため、もう借入れは難しいという企業でも利用できます。
また、ファクタリングの審査では売掛債権の種類や売掛先の信用力を重視するため、財務状況が悪化している企業でも資金調達の方法として活用できます。
卸売業を営んでいる中小企業も利用可能なので、検討してみることをおすすめします。
まとめ
卸売業界の現状や経営課題についてご説明しましたが、今後の将来性やM&Aの動向なども踏まえて、今後どのような戦略を立てていくべきか考えていきましょう。
特に食品卸売業界の場合、新型コロナウイルス感染症が収束すれば短期的には安定した推移が期待できる反面、中長期的に見ると人口減少に伴う横這いや縮小も考えられます。
業界で生き残り成長するためには、今抱える経営課題の解決と戦略の工夫が欠かせないといえます。
M&Aなども検討の視野にいれる必要がある企業もありますが、いずれにしても資金を調達しなければ会社は倒産してしまいます。
戦略プラス資金調達を欠かさず行い、経営課題解決と成長を目指していきましょう。
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