後継者不足や資金不足で廃業・倒産に!数値で見る中小企業の現状

2021/03/09
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後継者不足に悩んでいる経営者は少なくありませんが、黒字でも廃業に追い込まれるなど事態は深刻です。

新型コロナウイルス感染拡大による影響も受け、後継者不足の悩みに追い打ちをかけることとなり、黒字なのに廃業や倒産した企業もあることでしょう。

そこで、赤字や黒字に関係なく実際に後継者難で倒産してしまった企業の実態を数値で確認し、コロナ禍を乗り切るために今必要なことを確認していきます。

 

稼業は長男が引き継ぐ時代ではなくなった

中小企業の高齢の経営者は、後継者を育成しながら経営していることが少なくなりました。

これは自由な社会になったことが関係しており、社会の流れや価値観の変化で職業選択の自由が浸透しているからです。

従来までの日本なら、家長制度で長男など親族が後を継ぐことが一般的であり、家業を継ぐのは当然のこととされていました。

しかし時代が流れ、職業選択の自由が広がったことで、親が会社を経営しても子が必ず引き継ぐわけではなくっています

家の事業を継がずに自分のやりたい仕事を選ぶケースが増えており、少子化によりそもそも後継者候補自体がいないケースも少なくありません。

 

後継者不足で中小企業は「廃業」に追い込まれる

中小企業が抱えている悩みはいろいろですが、その1つとして挙げられるのが会社を引き継ぐ後継者がいないという問題です。

後継ぎ見つからなければ事業を続けることはできず、当然人材育成もできず廃業するしかなくなります。

そもそも人手不足が問題視されている中小企業ですが、従業員不足だけでなく親族など身近な人も後継者とならず、せっかく利益が出ていて黒字でも廃業するしかない状況に追い込まれています。

 

リタイア時期までに後継者が見つからずあきらめるケース

中小企業の経営者の年齢を見ても高齢化が進んでいますが、2020年に公表された帝国データバンクの休廃業・解散した企業の情報を確認しても、リタイア適齢期の70代が37.6%という結果でした。

70代を迎える前に世代交代したくても後継者が見つからず、リタイア時期に仕方なく廃業してしまうといった道を選んでしまうのでしょう。

さらに日本政策金融公庫論集(2020年8月)でも、9割以上の元経営者が後継者を探すことをせず、事業をやめたとされています。

会社を引き継いでくれる後継ぎが見つからないからと諦めて、早々に廃業してしまう経営者は少なくありません。

 

「廃業」と「倒産」は同じではない?

中小企業の後継者問題は、多くの会社を廃業に追い込んでいます。

「廃業」と「倒産」はどちらも事業をやめてしまうことには変わりありませんが、同じ意味ではありません。

「廃業」は、経営者の高齢化や後継者不足などを理由として、経営者側が事業を停止することです。

一方「倒産」とは、経営が行き詰まり継続できなくなってしまうことであり、たとえば資金繰り悪化や資金ショートなどを理由に続けることができなくなった状態を指します。

また「廃業」と「解散」も同じではなく、「廃業」運営が停止した状態ですが、「解散」閉鎖した状態という違いがあります。解散では、清算の手続きと登記を済ませ、法人格そのものが消滅することが廃業との大きな違いです。

 

黒字でも後継者不足で事業継続不可に

中小企業の経営者が後継者不足をで廃業を決める背景には、経営者の高齢化や健康面の不安などが関係しています。

後継者が見つからず育成する時間もなければ、業種の将来性にも不安を感じるという場合、自らの代で終わらせようと決断するのでしょう。

 

業種の将来性に不安を感じる

建設業・製造業・小売業などは、現在深刻な人手不足の問題を抱えている上に、デジタル化や機械化などが進んでいる業界です。

時代の流れに追いつくために設備投資にも費用をかけなければならないものの、手元にお金がなく後継ぎもいないため諦めてしまう経営者もいます。

今の事業に対し不安を感じ廃業の道を選ぶという流れとなり、仮に親族などに会社経営に興味がある方がいたとして、将来性を不安視し事業承継を選ばず廃業を決めてしまうようです。

 

後継者を育てる時間が不足

親族や従業員の誰かを後継者とし会社を引き継いでもらいたくても、今の事業運営に忙しく後継者育成は後回しというケースも少なくありません。

黒字で資金にも余裕があり、人でも十分足りている企業なら後継者育成にも時間をかけることができるはずです。

しかし中小企業の多くは資金体力が弱く、人手も不足していて本業に忙しく時間をかけています。

毎月資金繰りに奔走している経営者も少なくないため、人材育成にまで時間をかけていられない状況が関係しているといえます。

このような背景から、仮に後継者候補が見つかっても十分に育成できず、事業を任せるに至らず廃業を選択するしかない状況です。

 

事業承継を完了させることが難しい

後継者となる親族や従業員が見つかり、会社を引き継ぐ次の経営者として育成もできたとします。それでも事業承継を完了させることができず、廃業する企業もあるのはなぜでしょう。

親族や従業員に対し事業承継するためには、誰が事業を引き継ぐかにより相続や贈与の手続きが必要となり、そのための資金調達や取締役会から承認を得るといった手続きも求められます。

仮にM&Aで第三者に事業承継する場合でも買い手を探すまで時間もかかり、見つかったとしても度重なる交渉の末、契約に至るまで様々な手続きや段階を踏むことが必要です。

ギリギリまで親族や従業員の中から後継者を探していた場合、すでに経営者が高齢化していて事業承継まで時間が足らず、廃業するしかないというケースもあるようです。

 

実際に後継者難でどのくらいの企業が倒産している?

東京商工リサーチが公開している2020年度の後継者難の倒産状況調査を確認すると、実際にどのくらいの企業が後継者不足の悩みを抱えているか把握できます。

2020年4月から2021年3月までで、後継者難を理由に倒産した企業は、2021年2月までの11か月間で311件でした。

これは前年同期と比べると10.6%増えており、2013年に調査が開始されてから最多となることも確実とされています。

 

経営者の高齢化が顕著に

2019年で経営者の平均年齢は62.16歳となっており、経営者の高齢化が顕著になっています。

経営不振に陥った企業の多くはまず資金繰りを優先させることとなり、後継者の育成や事業承継は後回しになりがちです。すでに高齢者している経営者が事業承継を完了させるまでに、亡くなったり病気になったりという問題を抱えることもあるといえます。

 

黒字でも倒産に至ってしまう

問題なのは、2020年の休廃業・解散に至った企業が過去最多の4万9,698件だったこと、さらにこの6割以上が黒字企業だったことです。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、先行きに見通しが立たなくなり、黒字なのに事業承継や後継者問題という課題が浮上することとなりました。

後継者難で倒産してしまった企業の8割以上のうち、代表者が亡くなったり体調不良になったりという理由です。さらにそれらの倒産が多く見られたのが建設業で、2割を占めています。

 

後継者難は融資を受けにくい状況を作る

新型コロナウイルス感染拡大の直撃で、資金繰りが悪化してしまった企業は少なくありません。しかし企業全体の倒産件数を見ると、実は大幅に抑制されています。

ただし倒産件数が抑制されているのは、国が実施したコロナ対策の給付金や融資が関係しているため、後継者難による倒産自体は前年同期比より増加していることを忘れてはいけません。

コロナ禍により過剰債務を抱えた中小企業も多く、金融機関も中小企業支援については将来性を判断する事業性評価を重視する傾向が強くなっています。

しかし事業性評価は後継者の有無が大きく関係することとなるため、資金調達にもつながりにくい状況を作ってしまうといえます。

 

産業別に見た後継者難による倒産件数

中小企業の経営者は高齢化が進んでいますが、後継者難により倒産してしまった企業を産業別に見ると、10産業のうち情報通信業・サービス業他を除く8産業が前年同期を上回っています。

中でも最も多かったのが建設業の70件で、前年同期と比べると2割以上増えている状況です。

他にもサービス業・卸売業・製造業・小売業の倒産件数が多いのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたといわざるを得ません。

業種別で見ると繊維・衣服等卸売業が前年同期比で116.6%増となっており、次に飲食料品卸売業が70.0%増の他、飲食業も21.0%増しとなっています。

 

規模が小さいほど倒産に至りやすい

形態別で多かったのは破産(285件)で、後継者難倒産に占める構成比が9割を超えています。

再建型の民事再生法は1件、会社更生法はゼロという件数のため、後継者が不在だった企業は消滅型の破産を選択することがほとんどであることが確認できます。

さらに負債額ごとに見ると、負債1億円未満が217件で後継者難の倒産に占める構成比は69.7%となっており、約7割が小・零細規模でした。

資本金ごとで見た場合には、個人企業他を含む資本金1千万円未満の企業が173件で、規模の小さな企業が多く倒産に至っていることが確認できます。

 

今後はさらに後継者難による倒産が増える?

2025年までには、約127万の中小企業が後継者難で廃業に追い込まれてしまうとされており、この問題をすぐにでも解決しなければならない状況にきています。

倒産してしまう中小企業の約半分は黒字の優良な企業です。

中小企業の経営者がリタイアする平均年齢は70歳前後ですが、2025年に経営者がこの年齢に達する中小企業は約245万とされており、中小企業の6割以上を占めています。

このままでは後継者が見つからず、倒産する企業は増加する一方です。

日本経済を支え続けた黒字経営を続けていた企業が倒産に追い込まれる事態を、なんとか防がなければなりません。

 

黒字で倒産するくらいなら売却したほうがよい?

後継者が見つからず、事業を続けることができないのなら、売却すればよいのでは?と考える方もいることでしょう。

実際、廃業に至ってしまう5~6割の企業が実は黒字といわれているため、廃業するくらいなら売ればよいのではと思うのも無理ありません。

しかし黒字だとしても、実際には資金繰りに悩みを抱えていることなど、他にも多く問題を抱えています。

 

後継者難による倒産を防ぐために必要なこと

中小企業が後継者難で黒字なのに廃業したり倒産したりという状況を防ぐためには、後継者候補に引き継いでほしいと感じてもらえるよう企業価値を高めていきましょう。魅力ある事業であれば、子や孫など親族が後を継ぎたいと希望する可能性が高いからです。

また、後継者を親族のみに限定するのではなく、これまで会社のために働き貢献してくれた従業員から選ぶことも方法の1つといえます。

親族外承継を行う企業は3割程度で、多くが役員や従業員です。会社の役員や従業員であれば、これまで一緒に仕事をしてきたため現場のことも理解しており、育成する時間も抑えることができると考えられます。

中小企業の経営者の中には子や孫がいない方もいるでしょうし、配偶者に引き継いでも同様の問題がすぐに起きる可能性があります。このような場合、会社で一緒に働いてきた役員や従業員に事業を引き継いでもらうことも視野に入れ、検討していくことも必要となるでしょう。

 

まとめ

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今のままでは事業を続けることは難しいと廃業や倒産という決断をする経営者もいるようです。

確かに現段階では先行きが不透明であり、将来的に不安を感じることもあるでしょう。しかし黒字なのに廃業してしまうことはもったいないことですし、従業員にとっては職を失うことになってしまいます。

長年事業を続けていた企業が廃業や倒産してしまうことは、地域経済にも影響を与えることになるでしょうし、長年に渡り付き合いのあった取引先にとっても大きなダメージです。

後継者難や後継者不足は多くの中小企業が抱えている問題であり、経営者だけで解決できることではありません。

しかし最初から廃業や倒産に至ることを考えるのではなく、コロナ禍の今を乗り切り生き残るためにも、後継者として希望者があらわれるくらい企業価値を高めていきましょう。

なお、事業を続けるためには手元の資金を枯渇させないことが必要なため、資金繰りをスムーズにしておくことも忘れないようにしてください。せっかく後継者候補が見つかったとしても、資金ショートで黒字なのに倒産してしまうことになれば、本末転倒です。

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