お金を借りた貸金業から別の会社に自社の債権が譲渡された後の流れ

2019/03/25
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貸金業者が金融機関から融資を受けるときに、保有する貸金債権を譲渡することがあります。

利用者にしてみれば、債権が譲渡されて数年経過した後に、債権譲渡通知が届くことになり、驚くこともあるようです。

通知が届く頃には、そもそも自分がお金を借りていた貸金業者が倒産していることなどもあるようです。

そこで、どのような流れで債権譲渡が行われるのか、その間に発生する取引や手続きの流れを把握しておき、その取引は本当に正しいのか確認してみましょう。

 

企業合併や事業譲渡などを行うときの債権譲渡

企業が合併するときや、事業の譲渡、会社分割などの場面に伴い、債権も譲渡されることがあります。

お金を借りている側としてみれば、それまでとはまったく違った社名に相手が変わることで、不安を感じることもあるようです。

そもそも実在する会社なのか?悪徳な業者で厳しい取り立てを行うのではないか?などいろいろ心配になることもあるかもしれませんが、自分がお金を借りた相手企業ではないと返済せず放置していると後で大変なことになります。

もし心配なら、インターネットや法務局で商業登記簿を取得するなどして、相手企業の情報を確認するようにしましょう。

 

代わりに債権を回収してもらうときの債権譲渡

本来なら返済されるはずの債権が滞っている場合など、サービサーという債権回収を目的とした専門業者に債権が譲渡されることもあります。

サービサーは債権管理回収専門の業者で、特定金銭債権の管理回収を行いますが、法務大臣の許可を得ていた上で業務を行っています。

聞き慣れない業者名に不安を感じることもあるかもしれませんが、法務省のホームページの債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧として記載のある会社であれば問題ありません。

 

民法上の債権譲渡の債務者に対する対抗要件

お金を借りた利用者にしてみれば、自分の知らないところで勝手に債権が譲渡され、会ったこともない企業に返済をする必要があるのだろうかと納得できない部分もあるかもしれません。

ときには、債権譲渡先の企業にしてみれば、利用者からそちらと取引した覚えはない!と返済を拒否される可能性も考えられます。

そこで、貸金業者と債権譲渡先の企業のように、当事者間で成立した権利関係を第三者である利用者に主張するための成立要件について確認しておきましょう。

 

利用者が債権譲渡の事実を把握できていない場合

最初にお金を借りた貸金業者と債権の譲渡先となる企業があるとします。

債権を譲渡するときには、お金を借りている利用者の承諾は必要ありませんので、債権譲渡は利用者の知らない間に行われることになります。

債権が譲渡された事実を把握できていない間は、もともとの債権者である貸金業者に返済を続けていれば問題ありません

では、債権譲渡先企業が利用者企業に、今日から債権者となったのでこちらに支払うようにと伝えてきたらどうなるのでしょう。

このような場合、民法ではもともと利用者がお金を借りた先である貸金業者から利用者に対し、債権を譲渡先の企業に渡した事実が通知されるまでは、利用者は貸金業者に返済すればよいとしています。

 

●債権譲渡通知は誰から発信する必要があるのか

ここで受け取る債権譲渡通知は、債権の譲渡先である企業から受け取るのではなく、もともとお金を貸した貸金業者から利用者に通達されるものでなければなりません。

そうでなければ、債権譲渡先の企業が買い取ってもいない債権を譲渡されたと嘘をつき、返済を迫る可能性も出てくるからです。

そのため、債権譲渡の事実はお金を貸した貸金業者から利用者に通知されることが必要です。

 

利用者が債権譲渡を承諾した場合

債権譲渡通知がもともとお金を貸した貸金業者から利用者に通知される以外でも、利用者が債権譲渡を承諾していれば、債権譲渡先の企業は利用者に対して債権者であることを主張することが可能です。

利用者が、貸金業者から債権譲渡先の企業に自分の債権が譲渡されたことを認めた以上は、その後、債権譲渡先の企業から返済を請求されれば、それに応じることが必要になります。

このような債権譲渡を行う通知、そして承諾することこそが、債権譲渡先の企業が債権者であることを主張するための対抗要件といえます。

 

対抗要件には第三者に対するものもある

なお、対抗要件には、債務者に対するもの第三者に対するものがあります。

先に述べた対抗要件は債務者に対するものですが、第三者に対する対抗要件とはどのようなケースなのかも確認しいきます。

もし、貸金業者が利用者に対しての債権を、債権譲渡先の企業だけでなく、まったく別の企業にも譲渡してしまったらどうでしょう。

債権は目に見えない権利なので、複数の方に売却することも考えられなくはありません。このような二重譲渡による問題は少なくなく、もし通用するのであれば利用者にとっては複数の債権者から返済を迫られるような事態に発展してしまいます。

そこで、二重譲渡による問題が発生しないために、第三者に対する対抗要件が設けられています。

 

●第三者に対する対抗要件の内容

民法では、確定日付の付された証書で通知を行う、もしくは債務者が承諾しなければ、第三者に対抗できないとされています。

この確定日付の付された証書に該当するものは、内容証明郵便などが主に候補としてあがってきます。

上記の例でいえば、債権を譲渡された企業は、二重に譲渡された先の企業に対し、本来の債権者は自分であることを主張しなければなりません。

債権譲渡先の企業は、貸金業者が内容証明郵便で通知を行う、または、利用者から内容証明郵便で承諾を得るという形により、自らが権利者であることを主張できます。

これは二重譲渡先の企業も同じことで、内容証明郵便による通知か承諾があれば、本来の債権譲渡先とされていた企業に対し、新しい債権者は自分だ!主張できることになります。

利用者としては、本来の債権譲渡先だった企業、または後からあらわれた二重譲渡先の企業、どちらか先に債権譲渡通知を内容証明郵便で送ってきた側を、債権者として扱うことで問題ないということです。

 

内容証明郵便の日付

この内容証明郵便は、発送された日や債権が譲渡された日ではなく、郵便物を受け取った日時で決まります。

もし債権の譲渡が二重に行われた場合、利用者は誰に対して支払いを行えばよいのかわからなくなってしまいますし、支払先を間違えてしまうと二重に返済を負担してしまう可能性もあります。

このような問題が生じないために、二重譲渡を防ぐことが重要になるといえるでしょう。

 

債権譲渡を登記することによる対抗要件

 

民法による対抗要件は、債権が譲渡された事実を通知される、または債務者から承諾を得ることが必要です。そして第三者に対する対抗要件は、内容証明郵便を用いることが一般的です。

このような方法ではなく、債権譲渡の登記を用いて対抗要件を確定させる方法もあるので確認しておきましょう。

 

登記を行う理由

登記とは、権利関係などを社会に公示するための制度であり、法務局に申請を行って手続きします。誰が誰に対し債権譲渡を行ったのか、その情報を登記することで、自らが権利を得ていることを主張することもできます。

債権譲渡の登記は、一般的な不動産登記や商業登記とは異なっていますが、権利を主張できることに変わりはありません。

上記の例でいえば、もともとの債権譲渡先の企業と、後から出てきた二重譲渡先の企業のうち、先に債権譲渡の登記を行った側に、債権の保有者である主張を認めることになります。

債務者である利用者に対しての対抗要件は、債権譲渡が完了した旨の登記証明書を添付して通知を行うという形です。

貸金業者が自社の債権を担保にする、または譲渡により、金融機関から資金の融資を受けるという場合、債権譲渡の登記が利用されていることが多々あります。しかし利用者は、自分に対する債権が譲渡されていることは知らないで取引を続けることになるという流れです。

 

債権譲渡は利用者に不利益をもたらすものなのか

気になるのは、自分に対する債権の譲渡が行われてしまった利用者は、何か不利益を受けることになるのかという部分です。

知らない間に自分に対しての債権が譲渡されていることに、不安を感じてしまう方もいるでしょう。ただ、お金を返済する相手が変わることでそれまでと異なる支払い方法となるといった面倒は生じるかもしれませんが、法律的に何か不利益になることが発生するわけではありません

もし、もともとお金を借りていた債権者に対して、反対債権を保有しているという場合、お互いの債権を相殺する通知を行う前に債権譲渡をされても相殺の主張は可能です。

債権譲渡後、契約解除や取消を行うことも原則、可能とされていますので、特に何か不利益になることはないと理解しておきましょう。

 

気を付けたいのは異議をとどめない承諾

注意しておかなければならないのは、債権譲渡に対し異議をとどめない承諾をしてしまったときです。

この異議とは、すでに完済していることや、反対債権があるので相殺こと、契約の解除や取り消すなどの言い分のことを指しています。

異議をとどめないで承諾するということは、譲渡対象となる債権には、何の言い分もないと認めてしまうことです。

異議をとどめない承諾を行えば、後でやっぱり支払いは完了していることや、反対債権で相殺したいこと、または契約を解除や取消ししたいなどの主張はできなくなります。

対象となる債権を譲渡された側が、弁済や相殺、解除・取消の事実をすでに知っている場合や、知らなかったことに過失があるという場合はそれらの主張は認められることにはなりますが、利用者が注意しておかなければなりません。

 

債権譲渡通知の内容を確認すること

もし、届いた債権譲渡通知の中に、異議をとどめない承諾を行うといった内容の記載された文書が添えられており、そこに署名と捺印をして返送するように伝えられ、よくわからないけれどとりあえず署名・捺印して返送しておこうというのは危険です。

もし送付されてきた書類の中身が、債務者にとって理不尽な内容の書面であったとしても、署名と印鑑が押されていることで認められてしまう可能性もあります。

そこで、異議をとどめない承諾を行う書面を返送するように伝えられたとしたら、何も返送せずにおくことがよいと考えられます。

そもそも債権譲渡の対抗要件を目的として債権譲渡通知を送ってきたのなら、債権者から通知が行われたことでその要件を満たしています。債務者からの承諾を得た書面は必要ありません。

もしくは、異議をとどめない承諾を行うといった内容部分は二重線を引き、その上に印鑑を押して返送することも可能です。ただ、どこからどこまでを消せばよいのか判断が難しい場合もあるため、不安な場合は何も送りかえさないほうが得策であるといえるでしょう。

 

ファクタリングでもほぼ同様の流れ

貸金業者にお金を借り、その後、利用者の債権が譲渡された場合の流れをご説明しましたが、このような流れはファクタリングにおいても同様です。

ファクタリングは、企業などが保有する売掛金などの売掛債権を、ファクタリング専門業者などに譲渡し、期日よりも前に現金化させる資金調達の手法です。

貸金業ではないので融資を受けるわけではありませんが、売掛債権という形の債権を譲渡する取引が発生するため、様々な対抗要件が必要となります。

ただ、ファクタリングの場合には、利用者の多くが売掛先に債権譲渡の事実を知られたくないと考えることが多いため、債権譲渡通知などを行わない方法で利用されることがほとんどです。

この場合、ファクタリング専門業者はリスク回避のため、債権譲渡の登記を行うことを利用の条件とすることもあります。

 

債権譲渡の登記を避けてファクタリングを利用したい場合

登記を行えば、その分、費用が実費で発生しますし、売掛先が債権の譲渡が行われているかその事実をわざわざ確認するため法務局で情報を取得することは考えにくいにしても、可能性はゼロではないといえます。

そのようなリスクを回避するために、できたら登記は行わずにファクタリングを利用したいと考えるものかもしれません。

この場合、優良なファクタリング専門業者であれば、債権譲渡の登記は行わずにファクタリングを行ってくれますので、どの専門業者に依頼するのかが重要となるでしょう。

 

まとめ

債権が譲渡される場面はいろいろですが、目に見えない権利のため、何か問題があったときのために様々な対抗要件を準備した上で実行されることが一般的です。

貸金業やファクタリング業などでは、先に述べたような方法で取引が行われることがほとんどです。ただ、本来自分がお金を借りたはずの貸金業者ではなく、聞き慣れない企業から突然、返済を迫られれば誰でも驚いてしまうものでしょう。

そのような流れの中で、何か不安を感じる部分やおかしいと思う部分がある場合などは、他社や専門家に相談して本当に正しい取引なのか確認するようにしましょう。

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