売掛金が期日になっても支払われていない、というケースも珍しくはないと思います。そこで注目していきたいのが、売掛金が不良債権化してしまったときはどうしたら良いのか、という部分です。
企業を経営していると、売掛金が期日通りに支払われない、ということは往々にしてあるものです。その時々の状況に合わせた適切な対処をしていかなければなりません。
仮に完全に不良債権化して回収できなくなったらどうなるのか、ということもしっかりとチェックしておきましょう。
期日通りに支払われていない売掛金がある、という経営者の方は必見です。
目次
不良債権とは
不良債権とは、約束していたとおりの元本や利息の支払いを受けることができなくなるなど、経済価値が低いと判断される貸出債権のことです。
銀行など、債権者である金融機関が保有する貸出金などの債権の中で、通常の回収期間に回収できないもの、回収困難に陥る可能性の高いもの、すでに業績や財務状況に問題が発生していて経営破綻する可能性があるもの、すでに破綻しているといった債務者の債権は、すべて不良債権として扱われます。
それでは次に、売掛金が不良債権化したときの適切な処理方法を見ていきましょう。
第一段階|入金されていないことを売掛先に伝える
電話で構いません。
取引先に対して、「期日が来ている売掛金があり、そちらの入金がまだである」旨を伝えてください。
いきなり督促をする方法もありますが、単に取引先が期日を忘れてしまっているだけかもしれないのです。まずは期日が来ていることを伝え、入金してくれるようにお願いしてください。
この時点で対処してもらえれば、特に難しい手続きを行うこともありません。売掛金の入金の遅れもそれほど長くなっていない可能性も高いので、会社の資金繰りに与える影響も小さいでしょう。
問題は「入金がない旨を伝えたのに入金してもらえなかった」というケースです。
第二段階|内容証明郵便を売掛先に送る
・売掛金の時効を消滅させる役割がある
内容証明郵便は、自社に回収の意思がある、ということを売掛先に伝える事ができます。そもそも売掛金には時効があります。回収の意思を示さなければ、時効が来て回収できなくなってしまうかもしれません。完全なる不良債権化してしまうかもしれないわけです。
内容証明郵便にて売掛金を支払ってくれるようにお願いすることで、時効が消滅します。相手方に対して、一定のプレッシャーを与えることが可能なのです。
内容証明郵便にはコツがあります。弁護士にお願いして、弁護士の名義で内容証明郵便を送りましょう。相手が弁護士ということで取引先も「対応しなければ大変なことになる」と感じるのです。
ただし内容証明郵便には法的な拘束力がありません。送ったとしても差し押さえができるわけではありません。さらに1通出すに当たり1,000円超のコストが発生します。手間もかかるので、一定のデメリットはあるわけです。
しかし高額の売掛金が不良債権化しそうな状況であったら、コストが掛かったとしても内容証明郵便は利用すべきです。
・内容証明郵便の内容とは
内容証明郵便は形式が決まっています。
まずは文字数が決まっているのです。縦書きのケースと横書きのケースが有るわけですが、縦書きの場合は1行あたり20文字までとなっており、1枚あたり26行以内にしなければなりません。
横書きの場合は、2つのパターンに別れます。まずは1行あたり13字以内であり1枚あたり40行以内のケース、さらに1行あたり26字以内であり1枚あたり20行以内のケースがあります。
内容証明郵便は3通が1対となっています。要は同じものを3通用意しなければなりません。まずは相手に送るもの、そして郵便局で保管しているもの、最後に自分のものです。3つ同じものを用意することで、その内容が証明されます。
第三段階|交渉による相殺・商品引き上げ・債権譲渡
内容証明郵便を送っても入金がされなかった場合には、売掛先と交渉をして売掛金をどのように対処していくかを決めなければなりません。
そもそも売掛金については現金以外で回収する方法もあります。売掛金の全額が取り戻せなかったとしても、一定額に関しては現金以外でも回収できる可能性があるわけです。
交渉ということになるので、裁判所を利用することはありません。双方の任意による話し合いとなります。よって売掛先が交渉内容を受け入れなかったとしても問題はありません。拒否されてしまう恐れもあるので、その点も理解した上で双方の妥協点を探っていく必要があるわけです。
こちらでは交渉の結果として、どのような売掛金の回収方法があるのかを明らかにします。
・売掛金と買掛金を相殺する
売掛先に対して、買掛金がある場合には相殺によって回収する方法もあります。
例えば売掛先に100万円の売掛金があり、さらに買掛金も100万円あるとします。お互いに100万円を受け取り100万円を支払う、という状況になるのです。よって双方を相殺することによって、売掛金を回収し買掛金を支払った、と処理してしまうのです。
もちろん必ずしも全額が相殺できるとは限りません。売掛金は100万円あるけど買掛金は50万円しかない、ということもあるでしょう。しかし一定額であったとしても相殺ができれば、それだけ不良債権化される売掛金の額は少なくなるのです。
売掛金と買掛金の相殺に関しては売掛先にも受け入れやすいので、それほど難しいわけではありません。売掛先に買掛金がある場合には、相殺による処理を提案してみましょう。
・商品を引き上げることによって売掛金を回収する
売掛金の対象となっている商品が売掛先の在庫としてまだ残っている場合には、そちらを回収する方法もあります。回収をすれば、その商品を他で販売することも可能です。
しかしすでに売れてしまっている場合には、商品を引き上げることはできません。自社の卸した商品が残っている場合にのみ対応できる方法なのです。
ちなみに自社の卸した商品だからといって、勝手に売掛先から回収しないでください。いくら売掛金が入金されていないからとはいえ、売掛先に承諾を得なければ窃盗罪となってしまうのです。双方が納得した上で、商品引き上げによる売掛金の回収はできます。
・債権譲渡による回収も可能である
少しイレギュラーな回収方法と言っても良いかもしれません。
売掛先に他社の売掛金があった場合には、その売掛金を譲渡してもらうことで売掛金を回収したことにも出来るのです。
例えば売掛先に1,000万円の売掛金があったとします。その売掛金が期日になっても入金されなかった場合に、売掛先が持っている売掛金の1,000万円を譲渡してもらいます。自社としては1,000万円が回収できるので、売掛先から売掛金を支払ってもらったのと同じことになります。これが債権譲渡による回収です。
ただしどの売掛金でも譲渡してもらえるわけではありません。売掛金の中には譲渡禁止の特約がついているものも存在しているのです。譲渡禁止に設定されているものについては、いくら売掛先が売掛金を支払っていなかったとしても譲渡してもらえません。譲渡禁止の契約は、売掛先とその売掛先が結んだ契約でもあるからです。
第四段階|訴訟
内容証明郵便を送っても支払ってもらえず、交渉をしても回収できなかった場合には訴訟を起こす方法があります。訴訟だけは避けたい、と思っていたとしても不誠実な相手であれば資産を持っているのに支払ってくれないこともあるわけです。売掛金が入ってこなければ、経営が傾いてしまうこともあるでしょう。
こちらは最終手段と言っても良い訴訟について徹底解説します。
ちなみに訴訟と言ってもその種類はいくつかあります。どの方法を選択するかによっても結果は異なってくるので注意してください。
・公正証書の作成
公正証書に関しては非常に強い力があります。
公証人役場で作成してもらえるのが公正証書なのですが、そこに売掛金の支払いに関する内容が書かれることになります。仮にその内容を守らなかった場合には、裁判所の判決は必要ありません。裁判の手続きを経ずに強制執行が出来るようになるのです。資産の差し押さえができるので、大きな力を持っています。
・少額訴訟
少額の売掛金である場合には、少額訴訟が適しています。
簡易裁判所で行われるものであり、60万円以下の金銭を請求する場面で利用できるのです。
注目すべきは、判決が下るまでの期間が短い、という部分です。一般的な訴訟に関しては何回も審理が行われ、結果が出るまでに時間がかかってしまうのです。双方の言い分を裁判所が聞き取って和解を目指すわけですがその間も会社は資金難の状況になってしまいます。
少額訴訟に関しては、1回の審理で結審するのです。時間はかからないので、60万円以下の売掛金の入金トラブルが発生している場合には利用を検討してみましょう。
・支払督促
裁判所から督促状を送ってもらえる制度となっています。
裁判所から債務者に対して金銭の支払いを命じる督促状が売掛先に送られることになるので、心理的なプレッシャーを与えられるのです。
支払督促に関しては特に難しいことはありません。正式な裁判の結果、督促が出されるわけでもないのです。
とりあえず裁判所から督促状を送ってもらって様子を見てみたい、と考えている方は利用を検討しましょう。
・差し押さえ(強制執行)
最も強い影響力のある回収方法です。
差し押さえに関しては、売掛先の資産を抑えて回収をする方法となっています。
差し押さえに関しては裁判所の執行官が行うものとなっています。自社が勝手に行うことはできません。非常に強いパワーがあるのですが、手続きは煩雑です。裁判所を利用することになるので、一定のコストも発生してしまうのです。さらに回収した資産が換金性のあるものである保証はありません。せっかく強制執行をしても、ほとんど回収できなかった、というケースも有るのです。
売掛先の資産状況を確認した上で差し押さえの対応をするかを決めましょう。
ちなみに差し押さえに関しては長引く可能性もあります。訴訟全体に言えることですが、裁判所は売掛先の言い分も聞くのです。ですからすぐに結果が得られるというわけではありません。経営が差し迫っているような状況にはあまりおすすめできないのです。
・和解
訴訟では和解も検討されます。
売掛金の早急な全額返済ができない場合であれば「月々〇〇,〇〇〇円ずつ支払うこと」といった折衷案を出されることもあるのです。
結果として少額の分割払いによる和解が成立するケースも珍しくありません。訴訟を選択したとしても、思ったような結果にならないこともあるので注意しましょう。
第五段階|売掛金を不良債権として処理する
売掛金が結果として回収できないと判断した場合には、不良債権として対処しなければなりません。要は「貸倒れ損失」を計上することになるのです。損金として計上することで、利益を減らすことになります。実情に即した状態にするわけです。
しかし売掛金を不良債権として税務署に認めてもらえないこともあるのです。こちらでは税務署に貸倒れ損失を認めてもらうためにはどうしたらいいのかを明らかにします。
・特に税務署から問題視されないケース
・売掛先が倒産して破産決定を受けたケース
・売掛先が民事再生を申請したケース
売掛先に支払う能力が事実上ない、ということが証明できれば貸倒れ損失として認めてられるわけです。すでに倒産して会社として存在なければ回収はできません。貸倒れ損失として処理することも問題ないのです。
さらに倒産していないものの債務整理(民事再生など)を行っている場合も、支払能力がない、と判断されます。破産以外の債務整理の場合は、一定の返済能力はあります。しかし事実上売掛金の回収は難しいのです。その点は税務署も理解してくれます。
問題は「連絡がつかなくなっているケース」や「営業しているが入金されていないケース」です。
・貸倒れ損失として計上するなら債権放棄通知書を送ろう
売掛金を回収できない、と判断した場合には売掛先に対して債権放棄通知書を送るのです。内容証明郵便で送付してください。
債権放棄通知書を送れば、その売掛金は回収できないことになります。よって税務署から見ても「回収しない(できない)売掛金」ということになるので、貸倒れ損失計上を認めてくれます。
倒産していないものの、支払能力がないと考えられる売掛先には債権放棄通知書を送って損金処理をしましょう。
・債権放棄通知書を送れないケースはどうしたら良い?
連絡がつかなくなっている場合には、債権放棄通知書も届かない、ということになります。そこで注目してほしいのがレポートです。
要は回収しようとした努力を証明すれば、貸倒れ損失として計上できるのです。債権者の住所などを訪ねても相手が見つからなかった、などと掲載していくわけです。
回収不能である事実をなるべく詳細に記述してください。そして税務署に損金処理を認めてもらうのです。
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