売上債権とは、売掛金と受取手形のことを指しています。
売掛金と受取手形は期日を迎えると決済がされて現金が入ってくることになります。しかし期日を迎えるまでの日数は業種によって大きく異なっているのです。
そこで注目すべきは業種により売掛金と受取手形という売上債権の回転期間はどの程度が妥当であるとされているのか、ということです。妥当な回転期間を知ることで、自社の売上債権の回収が適切なのかがわかります。適切でないことが分かれば、回収に力を入れる、といった経営方針にかじを切ることもできるわけです。
こちらでは売掛金や受取手形などの売上債権の妥当な回転期間はどれくらいなのか、さらに売上債権の回転期間の計算方法、売上債権の回転機関に関する一般的な考え方についてもお伝えします。
目次
そもそも売上債権回転期間ってなんだ?
・売上債権が発生してから入金されるまでにかかる期間を指している
簡単に言ってしまえば、売上債権が何日間で1回転したかを示す指標となっています。基本的には、その期間が短ければ短いほど良いとされています。短期間で売上債権が入金されれば、資金繰りに良い結果をもたらします。
一方で、回転期間が長いということは売上が発生してから入金がされるまでには時間がかかる、ということになるわけです。売上があったとしても入金されなければ、現金は増えません。売上があった実感がなかなか得られない、ということになります。資金繰りが悪化する可能性が高まってしまうのです。
売上債権の回転期間は業種によっても大きく異なっています。時間がかかる業種もあれば、短期間で回転する業種もあります。自身の業種の回転期間の目安をまずはチェックしてください。その期間より短いのか、それとも長いのかを知ることが大切なのです。長い、となった場合には何かしらの対策が必要になってくるでしょう。
売上債権の回転期間の計算式とは?
・売掛金の回転期間を計算する式とは
【売掛金÷平均月商】
もう一つの式としては【売掛金÷年商÷12ヶ月】というものがあります。どちらにして同じ結果が出るので、どちらの式で計算してもOKです。
では実際に計算してみましょう。
・売掛金・・・1,500万円
・平均月商・・・1,000万円
上記のケースであれば計算式は「1,500万円÷1,000万円」となります。計算結果は「1.5」となり、売掛金は1.5ヶ月で回転している、ということになるわけです。
ちなみに売掛金の回収期間は1.5ヶ月以内が理想的とされています。それ以上長くなっている場合には注意をしてください。または前期と比べて売掛金の回転期間が長期化している、という場合にも何らかの問題が起こっていると考えられるのです。回収予定であったものが回収されていない可能性も捨てきれません。
毎期の売掛金の回転期間をメモしておき、比較していきましょう。徐々にでもスパンが長くなっている場合には回収に力を入れるようにしてください。スパンが短くなっている場合には問題ありません。
・受取手形の回転期間を計算する式とは
【受取手形÷平均月商】
こちらも【受取手形÷年商÷12ヶ月】で計算しても同じ結果が出ます。
では実際に計算してみましょう。
・受取手形・・・800万円
・平均月商・・・1,000万円
上記のケースであれば計算式は「800万円÷1,000万円」となります。計算結果は「0.8」となり、受取手形は0.8ヶ月で回転している、ということになるわけです。
売掛金と同様に示された期間が短ければ短いほど良いとされています。回収までの期間がかかっていない、ということになるわけです。一方で回収までに長い期間がかかっていたり、前期よりも回収までの期間が長くなっていたりする場合には問題が起こっている、ということになります。回収すべきものが回収されていません。
・売掛金と受取手形の回収期間を合わせて計算することも可能
売掛金と受取手形は同じく売上債権となっています。ですから何も個別に計算する必要はありません。両方を一緒に計算して、売上債権全体の回収期間を探る、ということも出来るわけです。
計算式は以下のとおりです。
【(売掛金+受取手形)÷平均月商】
ちなみにここまで紹介した売掛金の回転期間と受取手形の回転期間を合わせたものと同じ計算結果となります。
では以下の情報で実際に計算してみましょう。
・売掛金・・・1,500万円
・受取手形・・・800万円
・平均月商・・・1,000万円
【(1,500万円+800万円)÷1,000万円】が計算式となり、計算結果は「2.3」となりました。要は売上債権が2.3ヶ月で回収されている、ということになるわけです。
2.3ヶ月というのは売上債権の回収機関として理想的とされる60日は超えています。しかしボーダーラインの120日は大きく下回っているので、まずまず優秀とされるわけです。一般企業の売上債権回転期間としては全く問題ありません。
業種ごとの売上債権の平均回転期間とは
※こちらに掲載する情報は「EDIUNET 業種平均ランキング」を参考にしています。
※業種別の平均回転期間は集計する時期によっても異なっているので、こちらに掲載されているものが必ずしも現状に即しているとは言えません。
※こちらの情報は2014年現在のものです。
・銀行や信託業・・・331.9日間
・一般機械器具製造業・・・109.93日間
・建設業・・・107.88日
・金属製品製造業・・・103.36日間
・化学工業・・・98.27日間
・通信業・・・74.19日間
・卸売業・・・73.78日間
・出版・印刷などの関連産業・・・67.31日間
・農業・・・61.59日間
・道路運送業・・・32.41日間
・小売業・・・28.23日間
・電気業・・・27.28日間
・娯楽業・・・18.78日間
・不動産業・・・10.64日間
・証券業・・6.86日間
売上債権の回転期間の平均ですが、業種によってかなりの違いがある、ということはわかってもらえたと思います。銀行や信託業に関しては300日間を超えており、約1年間でやっと1回転をする、といった状態になっているわけです。
要は銀行や信託業は、売掛金と受取手形の合計が年間売上高とほとんど変わりない、ということになっています。そもそも銀行の行っている融資ですが、回収期間はかなりの長さになるでしょう。よって回収期間が長くなる、というのはなんとなくでも理解できるのではありませんか?
一方で回収機関が1ヶ月にも満たない業種も数多くあることがわかってもらえたと思います。特に注目すべきは、不動産業や証券業でしょう。1ヶ月どころか半月も経たない期間で売上債権を回収していることがわかります。
その理由として例えば不動産業の場合は、基本的には仲介を行っています。不動産を購入する相手を探すのが基本的な業務となっています。不動産を購入する相手が見つかったら、あとは取引を仲介するだけです。仲介をしたら、売却額から一定の手数料などを徴収して終了です。売掛金や受取手形を長く保有していることはありません。だからこそ回転機関が短いのです。
なぜ売掛金や受取手形の回転期間を把握すべきなのか?
・資金繰りを予測していくために必要である
会社として重要になってくるのが、資金繰りです。仮に売上は良かったとしても、売掛金や受取手形の入金が遅れてしまえば意味がありません。最悪のケースであれば利益は出ているのに現金がショートして「黒字倒産」といったことにもなりかねないわけです。
前もって回転機関がわかっていれば、定期的にどれだけの現金が会社に入ってくるのかも予測できるようになります。今後の経営方針が立てやすくなります。
将来的に資金調達をしなければならなかったとしても、回転期間を把握していれば正確な調達金額を導き出すことも可能です。さらに自社の返済能力を把握することにもつながってくるわけです。
そもそも売上債権の回転期間を把握できれば、月々にどれだけの現金が会社に入ってくるのかも分かるようになります。会社に入ってくる現金の額がある程度把握できれば、いくらまでであれば返済に回せるかも分かるはずです。自社の返済能力を把握していなければ、良い資金調達はできません。よって売上債権の回転期間はしっかりと把握しておかなければならないのです。
・売上債権の貸倒れのリスクが把握できる
回転期間があまりにも長い、というケースをイメージしてみましょう。どういったことが考えられるでしょうか?
回転期間が長いということは、売上債権が予定通りに入金されていない、ということでもあるわけです。入金が遅れているかもしれません。中には貸倒れる可能性が高いものもあるかもしれません。貸し倒れてしまった場合は貸し倒れ引当金で決済することになるわけですが、回収できなかったことになるので自社の資金繰りの悪化となってしまいます。損失が出てしまうことになるわけです。
倒産されてしまえば売上債権が不良債権化することもあるのです。取引先について危険性を感じた場合には、取引量について考察してみましょう。大きな取引はなるべく避ける、といった対処も検討しておくべきなのです。
仮に期日が来ても入金されていない売上債権が発見できたら、適切な対応を行ってください。取引先へ入金をされていないことを告げるのです。入金がされれば問題ありませんが、通知をしても入金されなければ様々な対応を考えなければなりません。最悪、訴訟になってしまう可能性もあります。
売掛金が大量になってしまった場合の適切な対処方法とは?
ファクタリングや売掛金担保融資を計画しよう
売掛金を活かした資金調達を考えるべきです。
そもそも売掛金が増えているということは資金繰りに問題が発生していると考えられます。予定通りに入金がされていない、ということになるわけです。
売掛金が大量になってしまった場合には、まずは売却を考えましょう。ファクタリングといった資金調達の手法があり、売掛金を売却して期日前に資金を調達するのです。あくまで売却なので、手数料は発生しますが利息は発生しません。月々の返済も必要ないのです。ただし売掛金を受け取る権利がなくなってしまうので注意しましょう。
売掛金担保融資は、その名のとおりに売掛金を担保に入れた融資の事を指しています。売掛金によって信用を高めた上で借り入れができるわけです。
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