商品やサービスを販売したけれどその場でその代金を受け取っていない場合、取引先に対して請求書を発送します。後日、期日に支払われる予定の売上代金が売掛金ですが、滞りなく回収することが重要です。
そこで、現在の売掛金を回収するためにどのような方法が用いられているのか、その方法のメリットやデメリットについてご説明します。
売掛金を適切に回収できなければ資金繰りを悪化させる
売掛金とは、取引先に商品やサービスを販売・提供したとき、その引き換えに代金を受け取るのではなく、後日まとめて請求を行い取り決めた期日に支払ってもらう予定の代金を指しています。
このような商取引を掛け取引といいますが、現在、日本ではもっとも一般的な取引形態といえるでしょう。
売掛金を回収することは経営活動を行う上で重要なことであり、期日に遅れることなく取引先に代金を支払ってもらわなければ、資金繰りが悪化してしまう可能性が出てきます。
売掛金の回収方法とそれぞれのメリット・デメリット
一般的な売掛金の回収方法は、取引先に請求書を発行・送付して期日を待つという方法ですが、他にも様々な方法がありますのでご説明します。
売掛金管理を徹底する
売掛金を回収する方法として、もっとも一般的といえるのが売掛金の請求管理を徹底することです。商取引が発生したときにはすぐ売掛金台帳に記帳し、締め日に請求書を発行して取引先へと送付します。その後、取引先との間で決めた支払期日を待ち、仮に入金されなければ取引先に連絡して請求書が届いているか、期日を忘れていないか確認します。
このとき、一方的に相手の入金遅れを指摘してしまうことは避けてください。郵便事故などで請求書が届いていない場合や、送付先を間違っていることも考えられますので、まずは請求書が届いているか確認します。
もし請求書が届いているのなら、期日を過ぎているけれど忘れていないか、送金先を間違っていないか確認しましょう。
取引先が資金難などで支払いに充てるお金が手元になく遅れている場合は、いつまでに支払ってもらえるのか期日を決めて必ず支払ってもらうように確約を取ります。
売掛金管理を内製化することのメリット
どの取引先と何の取引での売掛金が発生しているか、売掛金の管理を見える化することはとても大切です。期日に入金された分は打ち消しを行い、回収できていない場合には督促業務などを適切に行うことで、請求抜かりや未回収を放置することを防ぐことに繋がります。
請求管理業務のノウハウを積み上げて行く上でも、適切な管理にはメリットがあるといえるでしょう。
売掛金管理を内製化することのデメリット
自社が売掛金や請求管理を徹底して行うことは、債権リスクまで管理することが必要になる点はデメリットです。
仮に売掛金の未回収が1件でも発生した場合、回収できなかった代金の損失に加え、回収業務への手間やコストも発生することとなりますので、取引先の与信管理も徹底して行うことが必要という点ではデメリットになるともいえるでしょう。
ファクタリングで売掛金を回収
売掛金管理を自社で行うことに負担を感じるという場合には、ファクタリングを利用することでその手間をファクタリング会社に移転することができます。
ファクタリングとは、保有する売掛金をファクタリング会社に売却し回収期日よりも前に現金化させるサービスですが、主に売掛金入金前に発生する仕入れや経費の支払いに充てる資金調達に用いられています。
ただファクタリングは、資金調達以外にも自社の売掛金管理を軽減させることにも繋がるため、有効な手法として利用することができるでしょう。
ファクタリング会社が売掛金を買い取ることで、売却した売掛金はファクタリング会社が保有することになります。そのため、ファクタリングで売掛金を現金化した後、取引先が倒産してしまい期日に売掛金の回収ができなくなったとしても、利用者はその責任を負うことはありません。
ファクタリングを利用するメリット
ファクタリングを利用するメリットは、売掛金を先に回収できる上に、貸し倒れとなるリスクをファクタリング会社に移転できることです。
いくら取引先の与信管理を徹底して行っていたとしても、売掛金の期日を迎えるまでに経営状況が悪化して倒産してしまわないとは言い切れません。
倒産してしまえば発生している売掛金は回収することができなくなりますが、そのリスクをファクタリング会社に移転し、代金を先に受け取ることができるのは安心です。
売掛金未回収のリスクを限りなくゼロにしたいときや、請求管理の手間を省きたいときなどでも、ファクタリングは有効な手法として使うことができます。
ファクタリングを利用するデメリット
ファクタリングを利用し、売掛金をファクタリング会社に売却するときには手数料が発生します。
利用者とファクタリング会社のみで契約を結ぶ2社間ファクタリングの場合、手数料相場は10~20%程度、取引先も契約に加わる3社間ファクタリングなら1~5%程度が相場となります。
3社間ファクタリングでは取引先から直接ファクタリング会社に売掛金が入金されることとなるため、ファクタリング会社も利用者を経由することなく回収が可能となるため手数料は低めです。ただし3社間ファクタリングを利用すると、取引先にファクタリングで売掛金を売却する事実を通知し、承諾を得なければならなくなります。
知られることでその後の取引に影響が及ぶことを懸念する経営者も少なくないため、手数料は高くても2社間ファクタリングが選ばれやすいといえます。
相殺や代物弁済による回収
売掛金のある取引先から商品などを仕入れているのなら買掛金も発生していることになります。
その買掛金と未払いの売掛金を相殺することで代金を回収することも可能です。
代物弁代は売掛金に同じ、またはそれ以上の価値を持つモノにより弁済してもらう方法ですが、未回収が続く場合などに代金に対する予備案として提案することが多いといえます。
相殺や代物弁済を行うメリット
相殺と代物弁済で売掛金を回収するメリットは、本来の売掛金の価値より高い回収を図ることができる可能性がある点です。
ただし、売掛金よりも価値が高いモノなどを代物弁済に充ててもらった場合、税務上、贈与とみなされる可能性もあるため注意してください。
相殺や代物弁済を行うデメリット
相殺と代物弁済、どちらも現金での回収ができない点はデメリットといえます。
請求代行サービスを利用
請求代行サービスとは、請求業務を代理して行う管理のアウトソーシングで、請求書の発行・送付など業務の一部のみを代行する会社もあれば、請求管理業務すべてを代行する会社もあります。
請求代行サービスを利用するメリット
請求管理を大幅に効率化できるので、請求書の作成や送付などを含めた管理が面倒という場合や、人手不足でそこまで自社で対応できないという場合には便利です。
請求代行サービスを利用するデメリット
請求代行サービスを利用する際には2~5%程度の手数料が発生しますが、取引先の与信調査の結果によりその割合は異なります。
また、他社に請求書の作成や送付などの管理業務を委託してしまうことで、自社が取引先の状況を把握しにくくなる点はデメリットです。
まとめ
売掛金を回収する方法はいろいろありますが、一般的には自社で売掛金管理を行い、未回収の売掛金は早めに支払ってもらえるように取引先に連絡するなどの対応が必要です。
ただ、貸し倒れリスクなどを移転させ安心して経営を続けたいという場合など、業務の効率化から考えてもファクタリングは便利といえるでしょう。
自社の状況に合う方法を選び、期日には確実に回収できるようにすることが資金繰り悪化を防ぐ上で重要です。
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