平成22年6月18日、改正貸金業法が完全施行されたことにより、借り入れに対するルールが変更されました。
個人が過剰に借り過ぎることを防ぐことを目的として、貸金業者から個人に対しては年収の3分の1を超える貸し付けは総量規制により禁止されています。
それに加え、借入金に対する金利の上限など、利息についてのルールも変更されていますので、事業者がビジネスローンを利用する際などにもこれらのルールが適用されるのかを含めご説明します。
目次
上限金利は貸金業法改正により引き下げに
以前までは、利息制限法での上限金利が15~20%であるのに対し、出資法で刑事罰の対象となる上限金利は29.2%と定められていました。
この2つの法律の上限金利が異なることにより、年20.0~29.2%という間の金利は、利息制限法の上限は超えても出資法の上限を超えなければ刑事罰に科せられることのないグレーゾーン金利という扱いでした。
貸金業者のほとんどは、このグレーゾーン金利で貸し付けを行っていたわけですが、2006年12月13日、貸金業法が改正されたことで出資法の上限金利が20.0%へと引き下げになりました。
その結果、グレーゾーン金利は廃止となり、保証業者に対する保証料が発生する場合も、利息と合わせて上限金利までで設定しなければならないとされています。
現在の上限金利
利息制限法では、借入元本によって適用される上限金利が異なりますが、次に定める利息や遅延損害金を超える部分は無効として扱われます。
- ・借入元本10万円未満 … 上限金利(年率)20.0% 遅延損害金(年率)29.20%
- ・借入元本10万円以上100万円未満 … 上限金利(年率)18.0% 遅延損害金(年率)26.28%
- ・借入元本100万円以上 … 上限金利(年率)15.0% 遅延損害金(年率)21.90%
ビジネスローンで事業資金を借り入れるときには、一般的に10万円未満であることは少ないはずなので、利息制限法から実質的に適用される上限金利のほとんどは年18.0%や年15.0%となるでしょう。
多重債務者をこれ以上増やさないためにできた総量規制
総量規制が設けられていなかった時代では、高い金利に緩い審査で借金を重ねる方も少なくなく、多重債務に苦しみ結果、自己破産する方が後をたちませんでした。
このような高金利での借り過ぎる方が増えることを防ぐために、上限金利の引き下げだけでなく総量規制も導入されることになったわけです。
他社を含め、個人の借入総額が年収の3分の1を超える借り入れはできなくなっていますが、気になるのは事業者向けの金融商品であるビジネスローンも総量規制の対象なのかという点でしょう。
ビジネスローンは総量規制の対象外
個人・法人問わず、事業者に対する事業資金の貸し付けは総量規制の対象外とされていますので、ビジネスローンも総量規制の制限は受けることはありません。
ただし、個人事業者が貸金業者でビジネスローンを利用する場合には、信用情報調査と返済能力調査を行うために、確定申告書や事業計画(または収支計画や資金計画)を示す書面の提出を求められることになります。
法人がビジネスローンを利用する場合において、代表取締役などが保証人になるのであれば、その方を対象とした信用情報調査が実施されます。
違法な貸し付けを行うヤミ金融業者は貸金業者ではない!
貸金業法が改正され、ヤミ金融業者も身動きしにくくなってはいますが、それでもまだ騙される方が後を絶ちません。
ヤミ金融業者がよく使用する勧誘の誘い文句として、
- ・ブラックや自己破産者でも可能
- ・超低金利○%~(上限金利の記載はされていない)
- ・来店不要!電話で即日融資
- ・特別優遇
- ・債務一本化
- ・審査なしで簡単手続き
などが挙げられます。
貸金業を営むには国または県の登録が必要ですので、登録されている貸金業者であれば、その業者の広告やホームページなどに登録番号を記載しているはずです。
しかし、貸金業者の登録を行っているフリをするため、偽の登録番号を掲載しているケースもあります。もし怪しいと感じたら、金融庁の登録貸金業者情報検索入力ページで本当に登録業者であるか確認してください。
ファクタリング業者を装うヤミ金業者にも注意!
ヤミ金業者の中には、中小企業が資金調達に多く用いているファクタリング取引を悪用し、高額な手数料を徴収するといったケースもあるようです。
表向きはファクタリング業者を装いながらも、実態は資金繰りに苦しむ中小企業に対して、法外な高金利での貸し付けを行っています。
その背景には、ファクタリングを利用する際に発生する手数料に対し、法的な制限が設けられていないことが挙げられます。
そもそもファクタリングは、メガバンクの子会社も行う売掛債権を譲渡することで資金調達を可能とする正規の取引です。国も中小企業の資金調達の方法に、売掛債権を用いた手法を活用することを推進しています。
しかし、問題なのは、ファクタリング業を営む上で貸金業のような登録制度や、ファクタリング業を取り締まる業法が設けられていないことです。
ファクタリングは貸金業に該当しない
ファクタリングは売掛債権の譲渡により、期日前の売掛代金を先に現金化する資金調達の方法です。このファクタリングについて、貸金業法でも明確な定義はなされていません。
金銭の貸付けや、金銭の貸借の媒介(手形割引、売渡担保などによる金銭の交付、金銭の授受の媒介)などは貸金業とするとされているため、貸金業者が行う一般的なローン、手形割引、売渡担保融資などは該当するとされています。
しかし、売掛債権譲渡は貸金業に含まれていないため、たとえば2社間ファクタリングで手数料相場が10~30%だとしても、貸金業法違反にはなりません。
曖昧さが理由でファクタリングに参入できない企業も…
貸金業登録を行っている消費者金融や事業者金融、クレジットカード会社、信販会社などは、一部を除いてファクタリングに参入しにくくなっています。参入しても、手数料が高くなりがちな2社間ではなく、3社間ファクタリングをメインに取引を行うことが多くなるようです。
ファクタリングを装った金銭の貸し付け
ファクタリング業者を装って売掛債権を担保に高金利で金銭の貸し付けを行うヤミ金業者に課せられるのは出資法違反という罪です。
売掛債権を担保に金銭を貸し付ける行為は売掛債権担保融資であり、売掛債権の売買取引であるファクタリングには該当しません。
それなのにヤミ金業者がファクタリング業者を装うのは、法規制がなされていない参入のしやすさでファクタリング業者を名乗りやすいこと、さらに売掛債権の買い取りとみせかけて金銭を貸し付けることで、多くの利益収受を可能とすることが挙げられるでしょう。
ファクタリングを利用するなら必ず相見積もりの取得を!
もともとファクタリングは、決算書が赤字でも、税金を滞納していても、銀行融資の審査に通過できず借り入れができなかったとしても、売掛先の信用力が高ければ利用できる資金調達の方法です。
審査の基準や緩さはファクタリング業者によって異なりますが、信用力の高い売掛金を保有していて、どのファクタリング業者の審査にも比較的通りやすのではと予想できる場合もあるでしょう。
このような場合は、複数社から相見積もりを取得し、ファクタリングで発生する手数料ができるだけ安いファクタリング業者を選んだほうがよいといえます。
優良なファクタリング業者であれば、かかる手数料の提示をしてもらえるはずなので、ヤミ金業者や悪徳業者などを回避することにも繋がります。
まとめ
貸金業法における上限金利は、借入元本がいくらかによって異なりますが、大幅に現在の上限金利を超えるような貸し付けを行うヤミ金業者から借り入れを行わないようにしてください。
また、ファクタリング業者を装うヤミ金業者も横行していますので、ファクタリングを利用する際には必ず相見積もりを取得し、法外な手数料を支払うことのないような取引を行いましょう。
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