売掛金は多くの会社が保有しています。
企業間の取引の多くは売掛金と買掛金によって行われているからです。売掛金は将来的に現金を受け取り、買掛金は現金を支払う、ということになります。簡単に言ってしまえば「ツケを利用した取引」なので、双方の信用によって成り立っているのです。
売掛金は将来的な入金を約束したものですが、将来がどうなるか、ということは誰も正確な予測ができません。取引先が資金難になってしまい、回収に時間がかかってしまったり全額入金してくれなかったり、ということもあるのです。
ひどい場合には取引先が倒産してしまうかもしれません。倒産されてしまえば、売掛金の回収は困難となります。
こちらでは売上債権がイレギュラーな状態(予定通り入金されない状態)になってしまった時の分類と回収ができなくなった時の貸し倒れ引当金の設定について解説します。どれも経営するにあたっては非常に重要なテーマとなります。
目次
売上債権(売掛金)の3つの分類について
①一般債権
②貸し倒れ懸念債権
③破産更生債権など
【①一般債権とは】
一般債権はその名のとおりに一般的な売上債権となっています。特に問題が生じていない債権の事を指しています。
売掛先の経営状態に問題は発生していません。期日通りの入金が予定されている債券のことを指しています。
会社の保有している債権のすべてが一般債権であれば、自社の経営にも問題は発生しません。予定したいたお金が入ってくることになるので、経営も安定するでしょう
【②貸し倒れ懸念債権とは】
入金が怪しい売掛金などのことを指しています。
取引先の経営状態に問題があり、期日通りの入金が難しいと考えれる債券のことを「貸し倒れ懸念債権」とよんでいるのです。
ただしあくまで貸し倒れの懸念がある、ということなので、取引先は経営破綻には至っていません。全額は回収できなかったとしても一部の回収が出来るケースも考えられます。入金予定が遅れているような債権についても「貸し倒れ懸念債権」と呼ぶことがあります。
【③破産更生債権とは】
経営破綻に至ってしまった取引先の債権の事を指しています。経営破綻をされてしまうと、その会社の債権を持っていたとしても、回収はほとんど不可能に近い、といっても良いかもしれません。
経営破綻した会社に一定の資産がある場合には、ある程度は回収できるかもしれません。しかし資産がないからこそ経営破綻に至っているケースもあるです。破産更生債権と呼ばれるような状態になってしまったものは、もはや貸し倒れ状態と言っても良い売掛金なのです。
貸し倒れ引当金はどのように設定するのか?
貸し倒れ引当金はいくつかの手順を踏んで正確に設定しなければなりません。あやふやな金額を設定すると実際の回収額と異なってしまうこともあるのです。
こちらでは貸し倒れ引当金をどのように設定していくのか、ということをお伝えします。
・第一段階・・・債権を分類すること
・第二段階・・・取り立て不能の見込み額を算定すること
・第三段階・・・貸し倒れ引当金を設定し貸借対照表化学を算定する
まずは売掛金の分類を実施します。前述した「一般債権」「貸し倒れ懸念債権」「破産更生債権」に分類していくのです。
もちろん一般債権については,貸し倒れ引当金は関わりありません。問題なく入金されると予定されているものですから。
問題となってくるのは貸し倒れ懸念債権と破産更生債権です。破産更生債権については貸し倒れになる確率が極めて高いと考えられます。全額貸し倒れ引当金を設定しても良いでしょう。問題となってくるのは貸し倒れ懸念債権です。
貸し倒れ懸念債権については、全額回収不能になるわけではありません。一定額に関しては回収される可能性もあるのです。売掛先などに回収について働きかけを実施する上で、どの程度であれば回収できるかを算定しておきましょう。難しいと思われる場合には、貸し倒れ引当金の設定をすればよいのです。
売掛金が貸し倒れ内容にするためにはどうすれば良いのか?
・定期的に取引先を調査すること
取引先の資金繰りに問題がなければ、売上債権は予定通りに入金されるはずです。ですから取引先の経営状態を定期的にチェックする、ということが極めて重要になってきます。
問題となってくるのが、どのようにして取引先をチェックしたら良いのか、という部分でしょう。
一つの方法が取引先企業の財務諸表のチェックです。取引先が公開企業であれば、財務諸表を公開しています。そちらを確認していれば、破綻の可能性がある程度は判断できるわけです。財務諸表を見て危険であると感じたら取引をストップすれば、売掛金が貸し倒れないで済むことになります。
前もって危険は避ける、ということを徹底していれば貸し倒れ引当金を設定する必要はなくなるでしょう。
しかしすべての会社が上場しているわけではありません。財務諸表を確認できないケースはどうすればよいのでしょうか。
・信用調査を依頼することも考えよう
企業の調査を実施している調査会社もあるのです。
例えば東京商工リサーチや帝国データバンクがあります。それらに取引先の企業を調査してもらうことで、経営状態が見えてくるわけです。
ちなみにその東京商工リサーチや帝国データバンクですが、ホームページから様々な企業の財務情報を閲覧することも可能です。費用はかかってしまいますが、貸し倒れ引当金を設定するよりはマシでしょう。
すべての取引先をチェックする必要はありません。怪しいと思った場合に、調査を実施してみるのがおすすめです。
・売掛金の入金などから取引先の経営状態を確認すること
企業はいきなり経営破綻するわけではありません。徐々に状態が悪くなり、結果として破綻に至るわけです。
そこで極めて重要になってくるのが、経営不振の兆候をつかむ、ということです。
経営不振の兆候をつかめれば、貸し倒れが発生する前に対応できます。
経営不振の兆候を掴む方法は複数あります。
①売掛金の入金が遅れ始めた
②売掛金と手形を併用し始めた
③値引き交渉をしてきた
まずは売掛金が期日通りに入金されなかった、というケースを考えてみましょう。売掛金の入金が遅れるということは、何らかの問題が発生していると考えられます。経営が順調であれば、期日通りに売掛金が支払えるはずです。しかしその支払ができないということは資金繰りに問題が発生したと考えられるのです。
貸し倒れ懸念債権に分類されてくるので、その取引先との取引は制限した方が良いでしょう。
※単に「支払期日を忘れていた」というケースもあるので、督促してすぐに支払ってくれた場合は問題ありません。
売掛金の支払いですが、基本的に現金となります。売掛金の支払いが全て現金であれば、問題はありません。しかし経営が苦しくなってくると現金だけではなく手形も併用して支払ってくることがあるのです。資金難に陥っているからこそ手形を利用しているわけなので、貸し倒れが発生する確率が高くなります。
売掛金の支払いが現金だけではなく、手形が含まれだしたら注意しましょう。
取引の値引き交渉にも気をつけましょう。売上が下がっているなどの理由が隠れているかもしれないのです。いままでの価格では対応できなくなってきた、ということなので支払いにも問題が波及してくる恐れがあります。付き合いから値引き交渉に応じるケースもありますが、値引きを希望してくる企業の信用調査はおこなっておくべきかもしれませんね。
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