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資金調達の手数料の基準と相場
事業拡大に設備投資、経営再建など…事業者が資金を必要とする場面は数知れず。「必要な時に必要な資金があれば…」とお悩みの方も多いかと思います。
ところが、従来の頼みの綱であったビジネスローンは、銀行やノンバンクの貸し渋りが目立ち、調達手段として十分とは言えません。スピード感のある資金調達法として、ファクタリングが注目を集めるようになりました。
今回は、昨今最も注目を集める資金調達手段である「ファクタリング」を中心に、それぞれの資金調達の目安となる「手数料」をご紹介。取引形態や項目別に手数料の概要をお伝えしようと思います。
ファクタリングによる資金調達の手数料の基準と相場をご紹介
スピード感のある取引フローに加えて、柔軟な審査体制が魅力のファクタリングですが、手数料や費用の「基準や相場」は気になるところですよね。
〇ファクタリングの手数料相場ってどれくらいなの?
〇どうして手数料の差がすごく大きいの?
〇どんな取引形態なら手数料を安く抑えることができるの?
ファクタリングの手数料は実に様々な要因により定まるため、それらを理解することが重要です。ファクタリング手数料の基準を知り、ご自身のピッタリの取引形態を選びましょう。
ファクタリングの手数料相場は?
ファクタリングとは、「売掛金などの債権をファクタリング業者に売却し、現金を手にする」資金調達メカニズムです。後述のビジネスローンや事業資金融資と異なり、金銭貸借ではないので「利息」の代わりに「手数料」を支払います。
無担保・無保証人で取引することができるため、「保証人になってくれる人がいない・担保に出せるような不動産が無い」という方に最もオススメしたい調達手段です。
さて、ファクタリングの取引手数料ですが、相場は「数%~30%」と大きな幅を持っています。と言うのも、ファクタリングは複数の取引形態があり、その取引形態によって大きな差が出てしまうからです。
ファクタリングを上手に活用するためには、この相場観を知ることが欠かせません。
ファクタリング手数料は3社間になると安くなる
ファクタリング取引には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類が存在します。
両者には様々な相違点がありますが、手数料部分にだけ絞って解説するならば、両者の相場は以下の通り。
〇2社間ファクタリング → 相場手数料「10%~30%」
〇3社間ファクタリング → 相場手数料「数%~10%」
あまりの手数料差に、驚きを感じた方も多いのではないでしょうか。もちろん、これほどの手数料の差が生まれてしまう背景には、相応の理由が存在します。
3社間ファクタリングは低リスク
皆さんは誰かにお金の貸付けを行う際に、何を重視して決めるでしょう。多くの方は「お金がきちんと回収できるのか?」を重視して選ぶものと考えます。
ファクタリングは金銭貸借ではなく、債権買取ではありますが、基本的には貸借と同じ感覚で審査します。つまり、「買取った債権は本当に回収できるのか?」という部分です。
この点、ファクタリング業者の視点から見て「自社+譲渡人+債務者」を交えた取引である3社間ファクタリングは、以下の2点において「自社+譲渡人」で完結する2社間ファクタリングと比較してずっと安全です。
〇第三者対抗要件の具備
〇資金のスライドの省略
通常の債権譲渡契約で、譲受人が最も警戒すべき部分は、譲渡人による「債権の2重譲渡」です。譲渡人がファクタリング業者Aに譲った債権が、実はファクタリング業者Bにも譲渡されていた場合などが考えられます。
2社間ファクタリングの場合、原則として債務者に対して債権譲渡を通知することができず、対抗要件の具備は債権譲渡登記制度で対応します。しかし、3社間ファクタリングの場合は債務者を交えることができるため、確定日付のある内容証明を送付することで債権の保全が可能です。
ここまで読んだ方の中には、「どちらも対抗要件を備えるなら、同じじゃないの…?」とお考えになる方がいるかもしれません。ですが、両者の違いは「お金の流れ」により大きな足かせとなります。
2社間ファクタリングが高リスクであるワケ
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、お金の流れが大きく異なります。譲渡人の視点では大差なく感じられるかもしれません。
しかし、ファクタリング業者にとってこれは大きなリスク差として働く点が特徴です。
まず、2社間ファクタリングの場合、ファクタリング業者は債務者に対して債権譲渡の通知を行うことができないため、期日が到来した債権に対して支払われる現金を「直接受け取る」ことができません。
つまり、2社間ファクタリングの場合は支払われた現金を一旦顧客である譲渡人が預かり、その資金をファクタリング業者にスライドすることで、取引を完了します。分かりやすく表記すると、「債務者→譲渡人→自社」という流れですね。
もちろん、顧客が何ら悪意を持つこと無く、ファクタリング業者に資金をスライドさせてくれるなら問題は生じません。
ところが、運転資金や経営状態に不安を抱えている顧客の中には、「買取資金を受け取りながら、入金された現金も持ち逃げしてしまう」ケースが存在します。顧客が悪意を持たずとも、他の債務者による差し押さえや凍結を受けてしまう可能性もゼロではありません。
言うまでも無く、ファクタリング業者の視点から見ると、どちらも大きなリスクです。2社間ファクタリングの手数料が高額である理由は、この部分にあると言えるでしょう。
2社間、3社間の違いまとめ
〇2社間ファクタリング → ファクタリング業者は債務者に通知を行えない。また、顧客による持ち逃げリスクや、差し押さえのリスクを抱えてしまう。
〇3社間ファクタリング → 確定日付のある内容証明で債権の保全が可能。債務者からお金を直接受け取ることができるため、回収リスクを大きく低減できる。
債権額が大きくなるほど手数料は安くなる
続いて取引形態ごとのファクタリング手数料の違いについて、見て行きましょう。2社間と3社間ファクタリングの相違点は既にご説明しましたが、ファクタリング契約は3社間取引1つとっても「数%~30%」と大きな振れ幅をもっています。
このような幅広い手数料差が生じてしまう最大の理由は、「債権額面」による違いです。2社間であれ3社間であれ、ファクタリング取引は債権の額面が大きくなるほど、手数料が安くなります。
例えば、あるファクタリング業者が100万円の債権を3社間ファクタリングで買い取ったとします。先ほど述べたように3社間ファクタリングは債権譲渡通知が行えず、対抗要件を具備するために「債権譲渡登記」で対応するのが普通です。
債権譲渡登記には、「登録免許税・代表者事項証明書・印鑑証明書・司法書士報酬・交通費諸経費」が必要であり、およそ10万円前後かかります。仮に100万円の債権を10%で買い取った場合、ファクタリング業者は諸経費で報酬部分を失ってしまい、全く利益を得ることができませんよね。
以下に200万円の債権を手数料30%で買い取った場合と、2000万円の債権を10%で買い取った事例をモデルケースにしてご紹介します。両者を比べてみましょう。
ファクタリング業者の報酬部分
〇200万円×30%(手数料)=60万円 60万円-10万円(諸経費)=50万円(利益)
〇2000万円×10%(手数料)=200万円 200万円-10万円(諸経費)=190万円(利益)
このように、債権の額面が大きければ、仮に少ない手数料でもファクタリング業者は大きな利益を得ることができます。これが、ファクタリング業者の金利差が大きくなってしまう理由です。
継続利用でお安く!得意先を持つメリット
ファクタリング取引は「債務者(売掛先企業等)及び譲渡人(顧客)」の信用度によっても手数料が変化します。消費者金融や銀行取引でもこうした慣習は見られますが、ファクタリング業者の場合は銀行等よりもより強く信用度を重視する点が特徴です。
具体的な割引率などはファクタリング業者ごとに違いが見られますが、大まかな相場は以下の通りです。
信用度におけるファクタリング手数料の差(いずれも2社間ファクタリング)
〇初回取引 → 15%~30%前後(債権額により変動)
〇2回目以降の取引 → 10%~15%前後
ただし、先ほど解説した通り、こうした継続取引による手数料割引は業者の方針によって大きな違いが見られます。
仮に初回取引が30%を少し超える業者があったり、継続取引により10%以下の手数料設定を行うファクタリング業者が出ても、不自然とは言えません。(30%を超える業者はオススメできませんが…)
もちろん、こうしたサービスを一切取り入れていないファクタリング業者も存在します。
自社だけでなく売掛先の信用度も大切
ファクタリング取引は、根本的には顧客ではなく債務者(取引先)からお金を回収するシステムであるため、審査において「顧客の信用度に加えて、債務者である取引先の信用度を重視する」点も特徴です。
〇経営状態は大丈夫だろうか?
〇事業規模はどのくらいだろうか?
〇どんな事業を行っている企業だろうか?
仮に私たちがファクタリング業を経営していると仮定した場合、誰もが知っているメガバンクに対する売掛金債権と、遠く離れた地にある零細企業への売掛金債権での取引を持ちかけられた場合、どちらの債権をより高くするでしょうか?
恐らく、多くの方は前者を選択するかと思います。
プロのファクタリング業者の評価についても、これを同じことが言えます。つまり、債務者の信用度によっても、手数料は変動するわけです。
ファクタリングと信用情報は影響する?
ファクタリング取引を検討する際に、日本信用情報機構などの信用情報が気になる方も多いかと思います。ファクタリングを行う事で信用情報が傷ついてしまっては、今後の資金調達や経営状態に影を落としかねません。
確かに、信用情報機関は個人だけでなく法人の情報も取り扱っている為、
〇ビジネスローンなどの借入履歴
〇返済の滞納や遅延など返済実績
〇取引事実に関する情報
などが記録されています。債務不履行や債務整理を起こしてしまった場合、法人であっても銀行や消費者金融のビジネスローン審査では著しく不利に働くことは間違いのない事実です。
ファクタリング取引は貸借ではない
ファクタリングは金銭貸借ではありません。
つまり、ファクタリングによる取引は債権の取引に過ぎず、最初から信用情報機関に登録が必要な情報では無いという結論に至ります。
多くの資金調達手段では信用情報に関する問題は、企業の足かせとなって働きます。ところが、ファクタリングは信用情報に影響を及ぼさず、スピード感ある融資を可能にする資金調達手段です。
銀行によるビジネスローンなどと比べると、割高感がついて回るファクタリング取引の手数料ですが、こんな隠れたメリットも有しています。
その他手数料の基準や相場をご紹介
最後に、今回ご紹介しきれなかった、ファクタリング取引における細かな手数料について解説を進めようと思います。
☆その他ファクタリング取引における手数料
〇取引着手金 → 0~数万円
〇事務手数料 → 0~1万円程度
〇消費税 → 非課税
取引着手金とは?
「取引着手金」は、文字通り取引における着手金です。従来は1万円~3万円程度の金額が相場とされてきたものの、取引上必ず必要な費用ではない(業者の都合でつけられた利益部分)ため、業界の競争激化に伴い減額の動きが進んでいます。
特に小規模経営ファクタリング業者では、顧客獲得のために「着手金ゼロ」に設定している企業も少なくありません。最終的に負担する手数料を少しでも安く抑えたい方には、覚えておいて欲しい部分です。
事務手数料とは?
続いて、事務手数料について解説します。事務手数料は審査に必要な手数料と言う名目で徴収されることが多く、「0~1万円」の範囲で設定されるのが普通です。
審査の方法は企業によって異なるため一概には言えませんが、慎重な審査を期する企業ほど高額になると考えて良いでしょう。
消費税は非課税
ファクタリング取引における手数料は、法律上非課税とされています。金銭債権の譲受に該当するからです。ただし、悪徳業者の中には非課税のはずの取引手数料に対して、どういうワケか課税している業者も見られます。