資金調達に活用したいのは資産の流動化!その方法と利用するメリットとは

資金調達をするときには銀行からお金を借りる方法を真っ先に思い浮かべてしまいがちですが、資産を流動化させる手法を活用してみましょう。

資産を流動化させて資金を調達することで、不動産や債権など保有している資産を譲渡し、オフバランス化させ資産が生み出す将来のキャッシュフローを原資にすることができます。

そこで具体的に資産の流動化にはどのような方法があるのか、どの方法がもっとも資金調達にメリットがあるのか判断するため、それぞれの特徴を把握しておきましょう。

 

資産を流動化させるメリット

流通性や流動性が低いと感じる資産もあるでしょうが、一般的に資金調達に活用されていないだけで、実は流動性を付与させることが可能なもののあります。

資産を流動化させ資金調達することは、手元のお金を増やすだけでなく次のようなメリットを享受することが可能です。

資金調達の多様化が可能に

資産を流動させることのメリットは、資産を所有している企業の信用力に依存しないことです。

仮に格付けが低い会社だとしても、流動化させることを可能とする資産を保有しており、その資産が優良と認められれば有利な条件で資金調達が可能になります。

借入れを申し込む企業の信用力を重視する銀行融資に頼ることなく、資金調達の多様化が可能となることは、流動化のメリットといえるでしょう。

リスクの移転が可能

資産を流動化せず、保有し続けることで様々なリスクが発生します。たとえば対象となる資産が不動産であれば地価の暴落で価値が下落することも考えられますし、有価証券であれば株価が急激に下がることも考えられます。

売掛債権であれば、取引先が倒産し売掛金を回収できなくなるという貸し倒れリスクも抱えた状態です。

しかし流動化により、これらのリスク第三者に移転することが可能となるため、リスク回避の手法にも活用できます。

財務指標を改善させることが可能

流動化により資産をオフバランス化できれば、貸借対照表がスリム化され総資本利益率や自己資本比率などの経営指標(財務指標)を向上させることができます。

含み益のある資産なら、流動化で潜在的な企業収益力損益計算書上に顕在化させることもでき、銀行の格付けにもよい影響を与えることとなるでしょう。

 

流動化で安定した資金繰り実現に

資産の中でも売掛債権を流動化させる場合、決済期日到来するまでの数か月の間に陥りやすい資金不足を解消できます。

手元の資金を増やし、資金繰りを安定させることができるでしょう。

なお、調達可能となる資金額は、売掛債権の信用力(リスク)に依存すると理解しておいてください。

売掛債権を流動化させることで、

  • 資金繰りに余裕が出る
  • 資産を圧縮できる
  • 良い取引先を持つことにつながり信用力が増す
  • リスクマネジメントに活用できる
  • キャッシュフロー経営を進めることが可能

といったメリットがあります。

 

売掛債権を流動化させる手法は3つ

売掛債権を流動化させる方法は、主に次の3種類がありそれぞれ特徴などが異なります。

売掛債権証券化

企業の保有する売掛債権を特定目的法人であるSPVに譲渡し、その対価として資金を受け取る方法売掛債権証券化といいます。

SPVとは、売掛債権を買い取って決済期日に入金される代金を裏付けとし、証券を発行すし投資家に渡す企業との媒介役を担う事業体です。

ファクタリング

企業の保有する売掛債権をファクターと呼ばれる専門会社に売却し、その対価として資金を受け取る方法ファクタリングです。

証券化とは異なるのは相対取引となることで、売掛債権の売買契約を結ぶことが特徴といえるでしょう。

売掛債権担保融資

売掛債権の信用力を担保に融資を受ける方法が売掛債権担保融資で、売掛債権を売却するのではなく債務不履行時の弁済手段である譲渡担保とします。

不動産などの資産を所有していなくても、安定する売掛債権があれば担保として融資を受けることが可能となることが特徴です。

緊急的にお金が必要!金策と同時に行いたいこととは?

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、緊急的にお金が必要となり金策対応に忙しいものの、先の見えない状況で十分に資金を調達できず悩む経営者もいることでしょう。

そこで、資金繰りに頭を抱えどうやって金策するべきか悩んでいる経営者が、緊急対応として検討するべき資金調達方法をご紹介します。

 

金策の前にリスケの相談を

リスケとは「リスケジュール」を省略した呼び方で、銀行などの金融機関からお金を借りているときの返済計画の見直しや再調整のことです。

具体的には債務返済を繰り延べることや返済条件を変更することですが、仮に銀行からの借入金が毎月100万円ずつ3年に渡り返済する計画になっているとします。

それを毎月50万円ずつ6年に渡り返済する計画へ変更してもらうことがリスケで、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が激減してしまった企業などでも相談できます。

中小企業庁による「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」では、コロナ禍で資金繰り悪化に悩む中小企業と銀行など金融機関に間に行政が入ってくれます

複数の金融機関でも利用できるため、もし借入金の返済に悩んでいるのなら相談してみるとよいでしょう。

 

日本政策金融公庫で緊急資金を借入れる

日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、中小企業や個人事業主に対し積極的に資金の貸し付けを行っています。

多くの企業を苦しめている新型コロナウイルス感染症ですが、新しく「新型コロナウイルス感染症特別貸付」という制度であれば、最高6億円まで融資を受けることができます。

ただし新型コロナウイルス感染症の影響を受けていることに加え、

  • 最近1か月の売上高が、前年または前々年同期比で5%以上減少していること。またはこれと同様の状況にあると認められること
  • 中長期的には業況が回復・発展することが見込まれること

という要件を満たすことが必要です。

なお、審査に一定の時間がかかるため、緊急的な資金をすぐに準備しなければならないときには向かない金策方法といえます。早めに相談し、必要なタイミングに資金調達できるようにしましょう。

 

ファクタリングなら緊急的に必要な資金の金策も可能

ファクタリングとは、事業者が保有する売掛金(売掛債権)を専門業者に売却し、取引先から入金されるよりも前に現金化させる方法です。

最短で即日現金化を可能とする専門業者もあるため、緊急的に必要な資金をすぐに調達したいという場合にも活用できます。

銀行融資などの審査に通らなかった場合でも、信用力の高い売掛先の債権なら買取可能と判断される可能性が高いため、まずはファクタリング専門の業者に相談してみるとよいでしょう。

また、ファクタリングで金策しても負債は増えません。あくまでも売掛金を売買する取引による資金調達方法のため、のちの信用情報を汚さず銀行融資の際に影響を与えないこともメリットです。

 

金策だけでなく同時に行いたいこと

差し迫る支払い期日までに現金を準備しなければならないと、金策に忙しいときに他のことまで考える余裕はないかもしれません。

しかし金策だけでなく、毎月のお金の流れ収支はしっかりと確認しておき、いつどのタイミングでお金が必要になるのか把握しておきましょう。

いつ買掛金を支払うこととなり、売掛金が入金されるのか、収支が分かればどのくらいのお金を手元に確保するべきか見えてきます。

金策で資金を調達する際にも、必要な金額を明確にしておく必要があるため、必ずお金の流れは把握しておくようにしてください。

同時に固定費の見直しも必要

固定費は毎月発生する支払いのため、できるだけ金額を低く抑えたいものです。

まずはガスや電気代、通信費などについて、現在より代金が安くなるプランを提供している会社はないか確認してみましょう。

また、公共料金や形態代金、保険料などの支払いが厳しい場合には支払猶予を申請することも方法といえます。

ただしあくまでも猶予されるだけなので、いずれは支払いがスタートします。手元のお金が不足する今を乗り切るための制度と考え、適切な支払いができるように資金繰りを改善させていくことが必要です。

債務超過の状態になった中小企業が今やるべきこととは?

新型コロナウイルス感染拡大の影響は様々な産業や業種に及ぶこととなりましたが、債務超過に悩まされている中小企業も少なくありません。

不況の影響で経常利益・資本がマイナスとなり、負債が資産を上回る債務超過の状態になってしまい、解消したいけれど何をすればよいかわからない中小企業の経営者もいることでしょう。

会社を清算しすべての資産を売却しても返済できない負債が残るのが債務超過であり、会社が存続できても中小企業にとっては大きなデメリットを抱えることになります。

そこで、債務超過となった中小企業がどのような対策で解消に向けて取り組んでいけばよいのか、その方法をご説明します。

 

中小企業が債務超過となるデメリット

中小企業が債務超過となった場合、いずれ倒産する原因となりうる上、銀行から新規で融資を受けることはできなくなります

追加融資の相談をしても、反対に金利引き上げや既契約の借入金を早期に支払うよう要求されるなど、さらに窮地に追い込まれてしまいます。

仕入れ先や売掛先など、取引先からの信用も低下するなど、その後の取引にも影響が及ぶ可能性も考えられます。

そのため債務超過となった中小企業は、できる限り早急にその状態から抜け出すことが必要といえるでしょう。

 

債務超過の解消方法とは?

中小企業が債務超過から抜け出したいなら、解消するには短期的な視点と長期的なの視点で考えていきましょう。

短期的な視点でみたときに債務超過を解消させるなら、

  • 増資により資本のマイナスを解消させる
  • 代表者や役員から借入れ資本金に振り替える
  • 遊休資産など売却し借入金返済に充てる

といった方法があります。

しかし長期的な視点で債務超過を解消するなら、毎期の経常利益をプラスにする経営体質改善が重要です。

短期的な解消方法でも一時しのぎにしかならない可能性があるため、長期的な視点で債務超過を解消させていきましょう。

資本を増やす方法は中小企業にとって有効か

増資により資本のマイナスを解消させる方法は、中小企業の場合すでに可能な資金を投入していることがほとんどのため、増資を追加で行う余裕はあると言い切れません

ただ、代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える方法であれば、返済と利子の負担はないことがメリットです。会社の業績が好調になれば、利子以上の配当金の支払いが可能になることも考えられます。

役員借入金を資本金に振り替えると、その役員の会社に対する影響力が強まることは考えられますので、その点は留意しておきましょう。

遊休資産など売却し借入金返済に充てる方法は?

使用していない不動産や有価証券などの資産を売却し、換金したお金を借入金返済に充てれば超過額が低減し、金額によっては債務超過解消につながります。

また、総資産を圧縮できるため総資本対経常利益率など、経営指標を改善させることも可能です。

総資本対経常利益率とは経常利益率を総資本(総資産)で割って計算しますが、保有する総資産を活用してどのくらいの経常利益を生み出しているか確認するための指標です。

同じ金額の経常利益を生み出すための純資産が小さいほど、経営効率が高いと認められるため銀行の中小企業に対する格付けも向上させることができます。

なお、売却する資産は他にも未回収の売掛金なども含まれます。売掛金が取引先から入金されるまでの期間が長いと資金繰りは悪化してしまいがちですが、現金化させることで手元の資金を増やし指標もアップさせることができます。

不動産や有価証券を保有していない中小企業でも売掛金なら保有しているはずなので、ファクタリングという方法で現金化させることも検討しましょう。

経営体質を改善させることがより重要

まずは経常利益をプラスにさせ、税引き前当期純利益を出せるように経営体質を改善させていきましょう。

売上原価や販売管理費などを見直し、無駄を削減しながら売上を増やす戦略を立てていくことが必要です。

債務超過解消には即効性が高いとはいえませんが、根本的な原因を解決させる上では欠かせません。中小企業の経営を続け成長させるためには不可欠なことなので、積極的に取り組んでいくようにしてください。

資金がショートしてしまう理由と防ぐために必要なこととは?

会社経営は手元の資金がショートすれば倒産するリスクが高くなります。運転資金が不足してしまうことはどの会社でもおこりうることですが、ショートにより底を尽いてしまえば倒産します。

そこで、スムーズに会社を経営し、資金をショートさせないためにはどうすればよいのか解説していきます。

 

黒字だとしても資金ショートする可能性はある

資金ショートとは、手元の現金が不足してしまうことであり、英語表記で「short」の「短い」をあらわす以外の「不足・乏しい」という訳を意味します。

資金がショートしてしまうと、取引先に対する支払いができなくなり、借入金返済や税金納付も難しくなります。

資金繰りは困難な状態となりますが、資金ショートは利益が発生している黒字状態でもおこりうることです。

たとえば多額の売上が計上され利益は出ているのに、売上分を取引先から入金されるまでの期間が長く、すぐに現金化されないケースなどが該当します。

また、費用として計上されない借入金返済など、現金支出が多い場合も同様です。

 

資金がショートする主な原因

資金がショートしてしまう原因はいろいろですが、主に現金の管理不足認識不足などが関係しています。

現金の管理不足による資金ショート

本業が忙しい場合や、売上を向上させなければ!と営業活動にばかり気を取られていると、日々の現金の流れは把握できなくなります。

毎日の入出金などを資金繰り表などに記載しておき、事業資金の収支を一目で確認できるようにしておきましょう。

認識不足が資金ショートを招く

認識不足によって資金がショートしてしまうケースとは、税金支払いや返済資金などの認識が誤っている場合です。

税金の支払いに充てる資金を準備できておらず、消費税・所得税・法人税など納税時期に予想以上の金額だったため、納めることができなくなるというケース。

借入金の返済を加味した資金繰りが必要なのにできておらず、返済期日に資金が不足してしまうケース。

いずれも認識不足による資金ショートといえるでしょう。

一気に売上が上がり資金ショートすることもある

また、売上が一気に上がったことでも資金はショートすることがあります。

売上が上がり業績も伸びることは、企業経営において好ましい状態といえます。

顧客ニーズにこたえるためにはさらに販売用の仕入れが必要となります。しかし売上として計上されている分が取引先から入金されていない状態で、先に仕入れ代金の支払いが発生してしまうと手元の資金はショートし、仕入れができなくなることも考えられます。

 

資金がショートしてしまわないために必要なことは?

資金ショートを防ぐにはまず資金繰りを改善させることが必要であり、入金はできる限り早めに行い、支払いはできるだけ遅くすることが必要です。

ただ、いずれも相手があることのため、自社の都合だけで入金日や支払い日を変更することは難しいといえます。

そこでまずは、請求漏れや未入金はないか確認してみましょう。もし請求できていない売掛金や、まだ回収できていない売上代金がある場合には、早急に取引先に請求や督促することが必要です。

それに加え、不要な在庫の処分や遊休資産の見直しも行い、無駄な管理費や固定資産税を発生させないようにします。

そして最も大切なのは、資金繰り表を作成して日々の現金の入出金を正確に把握することです。6か月程度先の予想も記載しておき、資金ショートしない資金調達などを行っていきましょう。

 

まとめ

資金ショートを防ぐには、まず現金の流出入を把握する上での資金繰り表の作成が必要です。

資金ショートに陥る原因はいろいろありますが、黒字経営でも起こりうることを認識しておき、売掛金回収と買掛金支払いのバランスを乱さないようにすることも必要となります。

手形利用は資金繰り悪化を招きやすい?その理由とは

手形の利用とは、簡単にいえば支払う約束が記載された証文を渡すことでお金を支払ったとみなされる取引ですが、便利なようで実は資金繰り悪化を招きやすいといえます。

期日まで現金の支払いがなくても材料や商品の購入が可能となるのは買い手側にとってメリットといえますが、売り手側は手形が入金されるまで資金繰りに注意しなければならなくなります。

 

手形を利用した取引とは?

手形取引は銀行に認められた企業だけが利用できるため、間に金融機関が入ることにより期日に現金が確実に入金されることの裏付けが可能となります。

業績が好調でさらに売上を上げるチャンスが目の前にあるのに、材料や商品が手元になければ販売することはできません。販売の機会を失わないためには、材料や商品を購入しなければなりませんが、手元に現金がない場合はどうすることもできなくなります。

しかし手形の利用が可能であれば、手元にお金がなくても購入が可能です。

お金を借りて資金調達すれば利子が発生しますが、手形を振り出す場合は額面分が現金化されることとなり、実質利子もかからずその間の支払いを遅らせることができます。

手形利用は一定の信用を得ることにつながる

手形の振り出しは銀行厳しい審査をクリアしなければできませんので、一定の信用力が社会的に認められていることを意味しています。

 

タイムラグが大きくなると資金繰りは悪化する

資金繰りは、支払うべきタイミングに支払金額以上の現金を保有していれば、特に困ることはないでしょう。

しかし実際にはほとんどの黒字会社が決算書では利益が上がっているのに、手元にお金がない、または残らない「勘定合って銭足らず」の状態です。この状態が悪化すれば、利益を出したまま倒産する黒字倒産につながってしまいます。

利益が出ているのに資金繰りが厳しくなるのは、売上分の入金タイムラグが発生するからです。

取引のすべてが現金のやり取りのみだとしたら、損益計算書の収益から費用を差し引いた利益と、収支計算書の収入から支出を差し引いた収支による現金の残高は完全に一致します。

しかし日本の商習慣は掛けによる仕入れや売上が基本であり、仕入れでは買掛金、売上では売掛金が発生します。

さらに掛け代金を手形で支払うことや、反対に掛け代金を手形で受け取ることもあり、さらにタイムラグを大きくさせることもあります。

 

資金繰りを円滑にするために必要なこと

資金繰りで注意しておきたいことは、材料や商品を仕入れたときの時期と、その支払いを行う時期にズレがあること。そして仕入れた商品を販売したときには、売上が計上される時期とその代金を回収する時期もズレが発生することです。

これらのズレは企業間の信用取引、いわゆる掛け取引手形取引で発生します。

仕入れから支払いまでの期間を「仕入債務支払サイト」、売上から代金回収までの期間を「売掛債権回収サイト」といいますが、資金繰りに大きく影響を与える部分です。

仕入債務支払サイトが短く売掛債権回収サイトが長いほど資金繰りは苦しくなり、仕入債務支払サイトが長く売掛債権回収サイトが短いほど資金繰りは楽になります。

 

まとめ

商取引で現金取引が用いられることもありますが、企業間などの取引のほとんどは掛けによるものであり、建設業界などでは手形を使う慣習がまだ残っています。

結果として収支計算と損益計算は一致せず、利益は上がっていても手元にお金がない状態を作ってしまうといえるでしょう。

企業経営で最も重視しなければならないのは「現金」でああり、資金がショートせず資金繰りが循環していれば会社は倒産しません。実質、倒産状態ともいえる経営状態が悪化している会社であったとしても、手元の資金さえ尽きなければ存続することは可能です。

手形は便利な支払い方法ですが、使い方次第で資金繰りを悪化させやすいことは留意しておくことが必要といえます。

資金繰りがうまくいかないときの対処法とは?

事業の運営を続ける上で資金繰りは大切なことですが、うまくいかないことでこのまま倒産してしまうのでは…といった不安を感じる経営者もいるようです。

設備などへの投資以外にも、仕入れ代金や従業員の給料など毎月支払いが発生するため、うまくいかない資金繰りにイライラしてしまうこともあるでしょう。

そこで、なぜ資金繰りがうまくいかないのか、そのときどのように対処すればよいのかご説明します。

 

資金繰りがうまくいかない状態とは?

会社にとって資金は枯渇させてはいけないものといえますが、人の身体でたとえれば血液のようなものです。

不足すれば貧血になり体調が悪化しますし、うまく循環しなければ生命にかかわることもあり、最悪の場合には死に至ってしまうことも…。

人を企業、血液を資金に置き換えれば、資金繰りがうまくいかない状態経営が悪化してしまうことをあらわします。

 

利益が出ていても資金繰りは悪化する?

売上は上がり利益も増えていたはずなのに、なぜか倒産してしまう黒字倒産。反対に赤字経営で今にもつぶれてしまいそうなのに、倒産せずギリギリの状態で経営を続けている会社。

なぜ黒字なのに倒産するのに対し、赤字なのに倒産しないのか?と疑問を感じることもあるでしょう。

長年に渡り赤字が続けば、いずれは倒産してしまう可能性は高いですが、赤字そのものが倒産の原因にはなりません。会社が倒産するのは、資金繰りが悪化し手元の資金が枯渇するからです。いくら利益が増え黒字経営だとしても、支払いに充てるお金が手元になければ倒産します。

そこで、必要な資金は運転資金と設備資金に分け、資金繰り表を作成しお金の流れを把握するようにしましょう。

新型コロナウイルスの影響で、売上が一時的に下がってしまったと不安を感じている経営者もいるでしょうが、すぐに会社が倒産するわけではありません。一時的なものであればすぐに対処することで、会社を存続させることはできます。

 

まずは資金繰りがうまくいかない原因の洗い出しを

現在、資金繰りが悪化していてうまくいかないと感じているのなら、その原因をまずは洗い出していきましょう。

原因を解明し、改善させることが必要です。複数の要素が重なっている場合もありますが、資金繰りがうまくいかない理由はたとえば次のようなことが挙げられます。

売上の変動によるもの

急激に売上が増えることが原因で資金繰りがうまくいかない状態になることもあります。

売上が増大することはよいことですが、高まっているニーズに対し材料費の仕入れも増えますし、仕事が忙しくなれば人手も補充しなければならず人件費も増えます。

しかし売上に対する売掛金が入金されるのは1か月や2か月先のため、増えた仕入れや人件費の支払いに充てる資金が不足してしまい、資金繰りがうまくいかない状態になることもあります。

売掛金の回収を早めれば解決できる問題でも、一度取引先と決めた回収サイトを簡単に変更してもらうこともできず、資金繰りがうまくいかないと悩みを抱えることも少なくないようです。

 

売掛金の回収を早めたい場合の対処法

取引先に売掛金を早めに支払ってほしいと交渉できれば問題ないでしょうが、資金繰りがうまくいかないことを知られたくない場合には相談すら難しくなります。

この場合、ファクタリングを活用することで、売掛金の回収を短期化することが可能です。

ファクタリングとは、保有する回収前の売掛金をファクタリング会社に売却し、取引先から入金される期日よりも前に現金化させるサービスのことです。

手数料はかかりますが、目の前の支払いに充てる資金がないときにも活用できる方法であり、ファクタリング会社によっては即日売掛金を現金化させることができます。

お金を借りて資金調達するわけではないため、資金繰りを改善させる方法と検討してみるとよいでしょう。

中小企業が抱える資金繰りの問題の解決方法は?コロナ禍を乗り切るために

企業経営は現金に始まり現金に終わるともいえるほど、資金繰りに頭を悩ませ日々問題を抱えている経営者が増えています。

その背景には新型コロナウイルス感染拡大が関係しており、コロナ禍で資金繰りが悪化してしまったものの、資金問題をどのように解決すればよいのかわからない中小企業も少なくありません。

そこで、コロナ禍を乗り切るため・事態が収束した後もスムーズな資金繰りを目指すため、資金調達の問題をどのように解決すればよいのか解説していきます。

 

多くの中小企業が苦しんでいる資金繰りの問題

中小企業に限らず、経営においては資金調達や資金繰りの問題が常に付きまとうこととなります。

まず会社を設立する際に必要となる開業準備金を、経営者の自己資金で賄うことができなければ金融機関から融資を受けることが必要となるでしょう。

しかし金融機関の融資審査に通るには、まずは担当者を説得できる事業計画が必要です。

開業資金だけでなく、開業後に売上が上がり実績を積むまでの運転資金も必要なため、具体的な数字を提示し筋が通った説明ができれば審査に通る可能性は高くなるでしょう。

融資を受けることができ、開業直後の資金を計画通りに進めていけば、資金繰りはまわるはずです。しかし思い描いた事業とならず、資金繰りに苦しみ問題を抱えてしまうケースは少なくありません。

 

会社の資金繰りを悪化させる背景とは?

会社の資金繰りが悪化してしまうのは、想定していたとおりに商品が売れず赤字を抱えてしまうケースもあれば、競合他社に顧客を奪われたり価格競争激化に勝てなかったりなどいろいろな理由が存在します。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、売上が激減してしまった中小企業なども少なくありませんが、誰も想定していなかった事態にどのように問題解決すればよいか悩んでしまうのも無理はありません。

売上が上がらなくても、仕入れ代金や人件費などの固定費の支払いは発生し、手元のお金はどんどん減ってしまいます。

なぜこうなってしまったのか、何を改善すれば良いのか、そのような問題を抱えたまま解決できず会社が潰れてしまうといったケースもあるようです。

問題解決させたくても原因がわからずできない場合も

もし資金繰りを悪化させている原因がわかっているのなら、その問題を改善させる努力ができます。しかし何が問題なのか、原因がわからなければ改善しようがありません。

商品の売れ行きは悪くないのに、固定費を支払う段階で手元に現金がない状態が続いているときや、利益は出ているのに会社のお金は増えていないというケースがその状態です。

原因もわからず、何を改善させればよいかわからないまま、会社を潰さないように何とかお金のやりくりを続けることとなるでしょう。

しかし仕入れ代金や給与の支払い、銀行の返済資金の準備ばかりに追われることとなり、事業発展のビジョンを描くところまでたどり着けないのは経営者として辛い状態といえます。

 

資金繰り問題を解決させる方法とは?

辛い状態が続いていても、手元の資金が枯渇しなければ会社は倒産しません。コロナ禍で事業が傾き、このままでは倒産してしまう…と不安を抱えている企業は、まず資金繰りを改善させるために手元のお金を増やしましょう。

中小企業などは政府系金融機関から以外にも、民間金融機関からも実質無利子・無担保で融資を受けることができます。

新型コロナ対策の企業向けの資金繰り支援策はほぼ出そろったようにも感じられますが、政府系金融機関と民間金融機関による実質無利子・無担保融資、その他持続化給付金や雇用調整助成金などがその例です。

そしてファクタリングであれば、資金繰り対策としてお金を借りずに手元のお金を増やすことができます。

ファクタリングで資金繰り問題がなぜ解決できる?

ファクタリングは中小企業などが保有する売掛金を、ファクタリング会社に買取ってもらい資金化させる手法のことです。

融資を受けて資金調達すれば、借りたお金は返さなければならず返済負担が増えます。審査に通らなければ資金調達にもつながりませんし、融資が実行されるまで一定の時間もかかります。

給付金や助成金なら返済負担はありませんが、資金調達まで時間がかかるなどほしいときにすぐお金が手に入りません。

ファクタリングはお金を借りるのではなく、売掛金を譲渡して資金を手にする手法のため、審査もスピーディで即日入金される場合もあるほどのはやさです。

負債を増やさず決算書を汚すこともないため、資金繰りを改善させていく手法として適しているといえるでしょう。

 

まとめ

中小企業などが抱える資金繰りの問題は、コロナ禍の今だからこそ1日でもはやく資金が届くスピード感が極めて重要です。

もしも資金調達が間に合わなければ、手元の資金が枯渇することとなり会社は倒産してしまいます。そうならないためにもスムーズな資金調達を実現できる方法を選ぶようにしましょう。

会社経営で資金繰りを分析するためにすぐ実行したいこととは?

会社経営において、資金繰りを分析することは大切なことです。しかしいざ資金繰り表を作成したものの、読み方がわからなければ分析どこか、現状を把握することさえできません。

そこで、安定した経営につなげるための資金繰り表の読み方や分析方法についてご説明します。

 

資金繰り表はどのような構造で何を分析すればよい?

会社経営における資金を把握するには、経常収支・経常外収支・財務収支の3つの収支を確認することが必要です。

資金繰り表を分析する上でも、この3種類の収支を確認していきましょう。

経常収支(営業収支)

本業による活動による収支をあらわすのが経常収支です。売上などの収入や、仕入・経費などの支払いなど、事業活動する上での取引で発生した収支であり営業収支と呼ぶこともあります。

 

経常外収支(営業外収支)

本業以外の収支をあらわしており、助成金・保険金による収入・設備投資費用などの支出が該当します。

財務収支

銀行からの借入れや借入金の返済など、財務や投資に関する取引(財務活動)による収支をあらわします。

なぜ資金繰り表による管理が必要?

資金繰り表は、前月から繰り越された手元の資金と当月の収入から支出を差し引いた資金を合わせて、翌月へどのくらい繰り越すことができるか確認することが目的です。

翌月繰越となる金額がマイナスの場合は資金ショートしていることを意味するため、資金繰りが回っていないことをあらわします。

どの収支がマイナスなのか分析し、早急に対策を取ることが必要です。

 

資金繰り表で分析し問題点を見つける

資金繰り表を分析するとき、まずは経常収支がマイナスになっていないか確認しましょう。

本業による収支をあらわす部分ですので、プラスになっていることが望ましいといえます。

しかしマイナスになっている場合は、次の原因がないか確認してみましょう。

手元の資金がいつも不足

経常収支はマイナスでも損益計算書上は黒字の場合には、資金繰りに問題があります。

たとえば、売掛金を回収するまでの期間が長めに設定されている場合などが該当しますが、売掛金の回収は早めに・買掛金の支払いは遅めにすることで資金繰りは改善します。

取引先と入金・支払いサイトについて交渉すれば問題は解決すると考えがちですが、取引先に信用面での不安を与えることもあるため、ファクタリングなど売掛金を早期現金化させる手法を活用することも検討しましょう。

売上が上がらずいつも赤字

損益計算書が赤字であれば事業活動そのものに問題を抱えていることが多いといえます。

前期比の売上や対売上の経費などを確認・分析し、売上向上や経費削減などで利益を安定して得ることができるようにしていきましょう。

3か月後の翌月繰越がマイナス

資金繰り表は将来的な資金の予定を確認するためのもののため、おおよそ3か月先または半年先までの資金の収支予定を記載していきます。

もしも3か月先で繰越部分がマイナスになっているのなら、資金がすでに不足している状態をあらわしています。

買掛金・借入金返済・人件費など諸経費の支払いに行き詰る可能性が高いため、手元の資金を増やす対策を取っていきましょう。

具体的に手元の資金を増やす方法として、

  • 保有する資産を売却する
  • 公的金融機関や民間銀行などから融資を受ける
  • ファクタリングで売掛金を現金化する

などが挙げられます。

それと同時に、

  • コストの削減
  • 返済のリスケジュール(返済条件の変更)

などもあわせて検討していきましょう。

経常収支を財務収支が上回っている

財務収支でメインとなるのは、銀行などからの借入金とその返済による収支です。

財務収支がマイナスの場合、借入金返済で借入金自体が減少しているのなら問題ありません。

しかし借入金の返済が経常収支を上回っている場合、経常収支のマイナスは事業活動や資金繰りや事業活動に問題が発生していることを意味するため、その穴埋めに借入れしている場合は事業を継続できなくなるリスクを高めます。

 

資金繰りを分析していく上で確認していきたい指標

資金繰りを安定させるため売掛金(売掛債権)の回収は確実に行っていくことが必要ですが、そのために確認したいのが売掛債権回転期間であり、次の算式を使って算出します。

売掛債権回転期間=売掛債権(売掛金+受取手形)÷平均月商

算出された期間が短いほど、回収まで時間がかかっていないことをあらわし、資金繰りもスムーズに行われます。

さらに買掛金など仕入債務回転期間も確認しておくことが必要ですが、

仕入債務回転期間=仕入債務(=買掛金+支払手形)÷平均月商

で計算してみましょう。

仕入債務回転期間が短いのに、売掛債権回転期間は長めという場合には、資金繰りは悪化してしまいます。

さらに在庫の維持も適正か確認するため、

棚卸資産回転期間=棚卸資産÷平均月商

で計算してみてください。

棚卸資産回転期間が長ければ、売上よりも在庫を多く保有していることとなり、資金繰りは悪化してしまいます。

 

まとめ

資金繰り表には将来の予測に基づいた現金の入出金を記載していきますが、実績と予測には差異が生じます。分析する上で、なぜ差異が発生したのか検証も必要です。

何が会社経営で問題となっているか明確にするためにも、手元の資金管理を適切に行うことができる資金繰り表を作成し、分析することをおすすめします。

新型コロナで資金繰り悪化しているなら日本政策金融公庫の融資制度の活用を!

新型コロナウイルス感染症により、資金繰りが厳しい状況中小企業や個人事業主を支援するため、日本政策金融公庫の特別貸付制度などはうまく活用するべきです。

ただ、日本政策金融公庫から融資を受けたことがない場合は不安もあるでしょうし、資金繰りが悪化しているだけでお金を貸してくれるのか疑問もあることでしょう。

そこで、現在日本政策金融公庫が新型コロナ対策の支援制度として、資金繰りが厳しい事業者に対しどのような貸付制度を設けているのかご紹介します。

 

日本政策金融公庫の新型コロナに関する資金繰り相談窓口の利用を

日本政策金融公庫の国民生活事業では、新型コロナウイルス感染症の発生で影響を受けてしまった中小企業・小規模事業者・農林事業者などの融資や返済に関する資金繰り相談を受け付けています。

特に新型コロナにより一時的な資金繰り悪化などで悩んでいる場合には、緊急的な支援制度として設けられている特別貸付制度なども利用できる可能性があります。

設けられている制度は複数ありますが、主に次の貸付制度などが利用されています。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルス感染症の影響で一時的な業況悪化となり、設備資金や運転資金が必要という場合に融資を受けることができる制度です。

利用対象となるのは新型コロナで一時的に業況悪化している方のうち、次の1または2のいずれかに該当していること、さらに中長期的には業況回復し発展が見込まれることが必要です。

 

  • ①最近1か月間(最近14日間以上1か月未満の任意の期間を含む)の売上高、または過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高が、前3年のいずれかの年の同期比5%以上減の場合
  • ②業歴3か月以上1年1か月未満の場合には、最近1か月間(最近14日間以上1ヵ月間未満の任意の期間を含む)などの売上高または過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高(業歴6か月未満であれば開業から最近1か月までの平均売上高)が次のいずれかと比較し5%以上減少している場合
  • 過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高
  • 令和元年12月の売上高
  • 令和元年10~12月の平均売上高

なお、最近14日間以上1か月間未満の任意に選んだ期間の売上高と比べるときには、上記3つの売上高を日割り計算し、当該期間に対応する日数をかけて計算した売上高と比べたときに5%以上減少していることが必要です。

担保は必要なく、融資限度額は別枠で8千万円までであり、返済期間も設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)・運転資金15年以内(うち据置期間5年以内)と長期での利用可能となっています。

利率は6千万円を限度に、融資後3年目までは基準利率▲0.9%なので3年間は実質無利子でお金を借りることができます。(4年目以降は基準利率が適用)

また、生活衛生関係の事業を営む方を対象とした「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」もあるので該当する事業者はそちらを確認するとよいでしょう。

新型コロナウイルス感染症特別貸付

生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

新型コロナウイルス感染症による影響を受けているスタートアップ企業の他、事業再生に取り組んでいる方などを対象とした財務体質強化を図るための制度です。

新型コロナの影響を受けた法人または個人企業であれば、事業を行う上で必要な設備資金および運転資金の融資を受けることができますが、次のいずれかに該当することが要件として必要となっています。

  • J-Startupプログラムに選定された企業、または中小企業基盤整備機構が出資する投資ファンドから出資を受けている
  • 中小企業再生支援協議会の支援を受け事業再生を図る
  • 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の指導を受け事業計画を策定し、民間金融機関等と協調支援によって事業発展または継続を図る

担保も保証人も扶養で、別枠で7千200万円の融資限度額となっており、返済期間は5年1か月・10年・20年のいずれかとなります。

期限一括返済ですが利息は毎月払いとなり、融資後3年間は1.05%融資後3年経過後は毎年直近決算の業績に応じた2区分の利率が適用されます。

新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

既存の融資制度ですが、新型コロナ関連の融資制度として別途準備されています。

商工会議所や商工会などから経営指導を受けている小規模事業者(商工業者)が、経営改善に必要とする資金の借入が可能であり、運転資金や設備資金に使うことができます。

担保も保証人も必要なく、通常の融資額と別枠で1千万円まで融資を受けることが可能で、返済期間も運転資金なら10年以内(うち据置期間は別枠1千万円以内については4年以内)・設備資金は7年以内(うち据置期間は別枠の1千万円以内については3年以内)です。

利率は特別利率F(令和3年1月4日現在、年利1.21%)が適用されますが、中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることで当初3年間は実質無利子となります。

ただしこちらの制度は商工会議所会頭・商工会会長などの推薦が必要となるため、その点は注意してください。

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

中小企業の倒産件数が増加!新型コロナだけでないその背景にあるものとは?

新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業の倒産が相次いでいます。しかし本当のコロナ倒産と呼ばれるものは増えると考えられており、観光や飲食関連などほとんどが中小企業という業界で関連倒産が発生しています。

経営破綻に陥る中小企業が続出しておりこの流れは止まりそうにありませんが、まだ影響は出始めたばかりともいえる状況をどのように回避していけばよいのでしょう。

 

もともと問題が多かった中小企業の場合は倒産リスクが高い

日本の中小企業はそもそも、経営者の高齢化後継者不足人手不足になど様々な経営における不安を抱えています。それに加え、働き方改革最低賃金の改定に消費税増税など、様々なことが中小企業の経営には影響を及ぼすことになっています。

中小企業の倒産件数が増えていくのでは…と危惧されていた中での新型コロナウイルス問題で、もともと経営が行き詰まっていた経営者などは事業を停止する決断に迫られ法的整理を検討するしかない状況となっているようです。

実際、新型コロナウイルス関連の倒産件数は、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの調査でも増加傾向にあると発表されています。日々、ネット上で速報などにより伝えられ、このままでは東日本大震災のときよりも状況が悪化するのでは…と不安を感じている経営者もいることでしょう。

帝国データバングや東京商工リサーチなどの調査結果を診ても、緊急事態宣言が発令されている期間中は裁判所も手続きそのものを一部縮小していたこと、さらに手続きを代行する弁護士が在宅勤務となったことで相談・依頼ができにくい状況だったことを理由に倒産件数は減少したようにみえました。

しかしすでに緊急事態宣言は解除され、特別に先延ばしされていた新型コロナウイルス倒産は表面化し、倒産全体に占めるコロナ倒産の割合は今後も増え続けると考えられます。

中小企業に悪影響を与えたリ―マンショック

ここ数年で倒産してしまった中小企業などの場合、その要因となったものの1つとしてリーマンショックを挙げる経営者は少なくありません。

リーマンショックにより売上が大きく低迷し、V字回復を狙っていたもののやはりリーマンショック以前のレベルにまで戻すことはできず、持ちこたえることができなくなったことが要因としています。

新型コロナウイルス感染症が今後収束したとしても、リ―マンショックのときのように新型コロナウイルス流行前の状態に売上高を戻すことができず、つぶれてしまう中小企業が出てきても不思議ではないということです。

もともとの業績が悪化していて、銀行などに返済猶予してもらえないかリスケジュールの相談をしていた企業などの場合、新型コロナウイルスや消費税増税により一気に業績が傾き倒産してしまうリスクが高いといえます。

他にも経営者が高齢で、後継者不足に悩んでいた中小企業の場合、新型コロナウイルスによりさらに先行きが見通せなくなり事業継続を断念せざるを得なくなるでしょう。

国も金融機関などに対し、中小企業の返済猶予に積極的に応じるように要請していますが、柔軟な姿勢から突然方向転換する可能性も否定できません。資金繰りに悩む経営者は、今後はそのような事態に備えておくことも必要です。

 

中小企業は毎年8,000社以上倒産!追い込まれる理由

上場企業などは比較的体力が保てるため、特別すぐに倒産してしまうことはないと考えられがちです。

しかしリ―マンショックのときには、40社以上の上場企業が倒産したという事実があります。とくに中小企業の場合は企業規模が小さいため、景気の影響を受けやすく毎年8,000社以上が倒産という推移をみせています。

東京都や神奈川県、埼玉県など首都近郊以外の地方では、さらに中小企業が倒産しやすい環境にあるといえるでしょう。

他にも会社が倒産という事態に追い込まれている理由は、主につぎのようなことが考えられます。

会社経営の属人的不安定性

人を雇用し、育てるという人の問題は、直接経営に打撃を与えるものではないとも考えられます。

ただ、中小企業が安定して経営を行う上では非常に重要なポイントとなります。

優秀な人材を獲得することや、教育により人材を育てることへの難しさを感じていることもあるでしょう。

募集をかけても人が集まらず、雇用でしても資金面や人手の問題で十分な教育を受けさせることが難しい環境です。

せっかく人材を育てても、一人前になった途端に独立して出ていくという悪循環に、中小企業を取り巻く環境の厳しさを感じている経営者は少なくありません。

教育の仕組み化が進んでいないため、余裕のない中小企業ではすぐに現場で働き活躍可能な即戦力を求めることになります。

そのため新卒採用ではなく、ほとんどが中途採用となるため、もともと別の会社で働いていた転職組ばかりが集まりやすい環境です。

中には素晴らしい優秀な人材を、中途雇用することも可能となるでしょう。しかし会社を成長させていきたいのなら、新卒者を採りたいと考えるものでしょうが、それがかなわない環境にあるのが中小企業の特徴でありデメリットといえます。

新型コロナの影響が大きい業種

サービス業・接客業・製造業・物流業などは人の力が必要不可欠な業種であるため、新型コロナウイルスの影響を良くも悪くも受けることになります。

そしてこれら以外の業種も決して安泰とはいえず、たとえば取引先への営業を成功させるには個人に蓄積された経験やノウハウ、スキルなどが必要です。それに加え人脈なども関係するため、これまで良好な関係を築けていた相手企業が倒産してしまうことにより、顧客を紹介してもらうことはできなくなるでしょう。

さらに稼ぎ頭となっている営業担当者が退職してしまった場合、そもそもの頭数が少ない中小企業にとって戦力となる人材が不足し、たちまち経営状態は悪化すると考えられます。

どの業界でもスキルなどが属人化していることで、途端に経営が立ち行かなくなる可能性をひめているということになります。

資金や情報などに限りのある中小企業では、経営方針や営業戦略などが仕組み化されていないため属人化している状況がほとんどです。

社長は会社経営以外に、営業や経理の責任者として、さらに人事まで兼任していることが多いといえます。会社を組織化させていかなければならないときが来ているとも考えられるでしょう。

一度の貸し倒れが致命的となり倒産に

中小企業が経営に行き詰まってしまう原因として、やはり資金力の大きさが関係しているといえます。

倒産防止のため、保険や共済などに加入しているケースは、大企業だけでなく中小企業も同じです。

売上不振や債務超過、そしてもっとも大きな問題となるのは貸し倒れです。

発生している売掛金が回収不能となり貸し倒れは発生しますが、中小企業のほとんどが売掛金による取引を行っています。

大手企業なら貸し倒れが発生した場合でも資金面での体力があるため吸収できるでしょう。しかし中小企業の場合には、資本力が弱いためたった一度の貸し倒れでも死活問題になってしまいます。

あと少し待てば入金されるはずだった売掛金が回収できず、運転資金に充てるお金がなくなったことで倒産まで追いこまれてしまうこともあるのです。

貸し倒れにより現金は入金されなくても、仕入れにかかった代金は支払いをする必要があります。

たった一度の貸し倒れによってキャッシュが回らなくなってしまい、銀行が手を引き倒産間際まで追いこまれてしまうという流れです。

売掛金同様不良在庫も理由に

決算書上、利益が出ていれば税金を納めなければなりません。しかし不良在庫がある場合には、損失が潜伏している状態といえます。

仮に不良在庫を表面化させ、赤字計上すれば税金は納めなくても済むようになるでしょう。ただ、銀行からの融資は途絶え、資金調達に多大なる影響を及ぼすことになってしまいます。

そのため不良在庫だとわかっていても、処分せず保有している会社も少なくありません。

粉飾決算には該当しないですが、いずれは会社がもう売れないと見切り廃棄する、またはたたき売るまで損失を潜伏させたままとなります。

さらに不良在庫は銀行から借り入れを行い保有していることが多いので、在庫保有のために銀行から融資を受けていれば利息を負担することになります。そして在庫を保管する場所や管理にコストがかかり、過剰になりすぎれば運転資金の融資枠を侵食することとなって資金調達を厳しい状況に追い込むことになるでしょう。

 

中小企業の倒産件数は今後本当に増える?

新型コロナウイルスによる影響は長期化することが予想されていますが、コロナ問題による中小企業などの倒産は2020年末にかけ、一時的に月200件ペースまで膨れる可能性も示唆されています。

仮に今後、新型コロナウイルスが収束したとしても、すぐに経済活動が活発化するとは考えにくい状況です。

中小企業も消費者側も用心深くなっているため、停滞した状態はしばらく続くと考えておくべきでしょう。

今後の経営の見通しは?

新型コロナウイルスの影響により、この先どのように会社を経営していけばよいのか、その見通しがたちにくくなっていることでしょう。

自動車メーカーや航空会社などの上場企業でも、100社以上が資金を調達するための準備に動きました。ただこれまでを振り返っても、今回のように資金準備に動きまわらなければならないほどの不況はなかったのです。

そして先行きが厳しいと危惧されるのは、中小企業の廃業がさらに増えるという事態です。先にも述べたとおり、経営者の高齢化などで後継者が決まっていない会社などの場合、今回の新型コロナウイルスが追い打ちをかけることとなり、将来に対し明るい展望を描くことは難しくなってしまいます。

それならいっそ廃業したほうが…と、倒産する前に自主的に事業をたたんでしまうケースも増える可能性があるからです。

業績好調から一気に転落してもおかしくない

中小企業の経営者は今回のコロナ問題をきっかけに、自社商品やサービスに対するニーズに長期で展望があるのか押さえ、経営効率や利益率を見直していくことが必要です。

本当の意味でのコロナ倒産が増加するのはこれからであり、企業経営に及ぼす影響はこれから少しずつ深刻化すると考えられます。

経営や業界の環境がもともと悪化していたため、厳しい経営状況だったという企業の場合、新型コロナウイルスや消費増税が追い打ちとなり倒産に決定打を与えることになりかねません。

そして今後懸念されるのは、今の時点でまだ確認されていない新型コロナウイルスを直接的な要因とする法的整理や事業停止の動向です。

新型コロナウイルスが発生する直前まで業績好調だったはずなのに、長期化したことで財務内容が悪化し、だんだんと従業員の士気も低下し追い込まれるケースが出てこないともいいきれないのです。

これらの企業を主力取引先としていた中小企業などの売上減少や、販売代金が回収難に陥るなどで連鎖倒産が発生する恐れもあるのです。

 

コロナ問題で教訓となったのは手元のお金の重要性

新型コロナウイルスの影響により、倒産してしまった中小企業の背景にあったことなどを確認すると、手元のお金の重要性を教訓として浮き彫りにさせたといえます。

現預金に余裕がある会社のほうが、今回のコロナ問題による危機に対しても何とかしのげている状況だからです。

これまでであれば、土地を保有している会社なら、いざというときの担保に差し入れる余力があり安心という認識でした。しかし土地は換金するまで時間がかかりますし、土地を担保に銀行など金融機関からお金を借りる場合でもリスケや融資依頼が殺到していればすぐ対応してもられえるとは限りません。

土地など担保価値の高い資産を持っていたほうが確かに安心ですが、それとは別途、現預金を月商の1.5~2か月分程度は保有しておいたほうが備えとしては有効ということです。

手元のお金が不足しているけれど、土地など資産を保有していない場合には一度電話やメール、または下記のフォームから一度ご相談ください。よい解決方法が見つかるはずです。