新型コロナウイルス感染拡大に伴って、資金繰りが悪化している中小企業は少なくありません。1929年の世界大恐慌や2008年のリーマンショック級の経済危機ともいわれている状況の中、深刻なダメージを受けているのは財務基盤が弱く手元の資金が少ない地方の中小企業です。
外出自粛などの影響により、売上減少で資金繰りに苦しむ中小企業は増え、政府も支援策を打ち出しているものの救いの手になっているか疑問が残ります。
そこで、資金繰りが厳しい中小企業に向けた支援制度は本当に有効なのか、今後活用したい制度などについてご説明します。
中小企業の資金繰りが厳しいのは新型コロナのせい?
日本の企業の99.7%は中小企業といわれており、経済を支える存在となっています。中小企業の優れた人材が働く場所をなくすことや、高い技術が埋もれてしまわないためにも、政府も資金繰り改善にむけた対策をいろいろと打ち出してはいます。
ただ、実際には制度を使いたくても使えず、資金繰り改善につながらないと不満を抱える企業もあるようです。
政府は一歩踏み込んだ判断が必要
新型コロナウイルス感染拡大で経済的なダメージが発生していますが、これは大恐慌やリーマンショック並みとも言われています。
ただ、リーマンショックのときは金融危機が発生し、その影響が経済に波及しました。しかし今回のコロナショックと呼ばれるものは実体経済自体が急速に冷え込んで金融機関の負担が重くなっているといえます。
さらにリーマンショックのダメージは限られた業種のみだったのに対し、新型コロナウイルスによる資金繰り悪化の影響はほとんどすべての中小企業に及んでいます。
ダメージの質や規模がリ―マンショックのときとは違うことを踏まえて考えれば、すべての業種の事業継続や国民の生活に影響を及ぼしている以上、政府も一歩踏み出した策や制度を設けることが必要であるといえるでしょう。
中小企業の資金繰りの現状は?
中小企業の中でも、特に資金繰りが悪化しているのは外出出自粛やインバウンド減少の影響を強く受けた業種です。
飲食業・サービス業・観光業などがそれに該当し、前年同期比でみれば売上高は平均で8割以上の落ち込みを見せました。
他にもアパレル業や繊維工業なども、暖冬の影響により資金繰りが厳しい状況だったのに加え、新型コロナの影響でさらに悪化しています。
イベントなど中止することになりイベント事業やホール・施設も影響を受けただけでなく、販促関連の受注キャンセルを受けた印刷業などにも影響が及んでいるようです。さらに製造業は自動車関係を中心とした輸送や電気機器関連などの製造業も、資金繰りが厳しい状況にあるといえるでしょう。
企業の業種や規模により違いはあるものの、月商2か月分程度の手元資金しかない中小企業が多く、大企業と異なり潤沢ではありません。飲食業やサービス業などの資金繰りは一刻の猶予も許さない状況にあると考えられます。
家賃支援給付金で資金繰りは改善された?
2020年5月に発令された緊急事態宣言により、売上減少に直面した中小企業などの事業継続を支えるため、政府は地代・家賃の負担を軽減させる家賃支援給付金という制度を設けました。
給付金申請の受付は令和3年1月15日までで、対象となるのは資本金10億円未満の中堅企業・中小企業・小規模事業者・フリーランスを含む個人事業者です。
2020年5月~12月までの間で、新型コロナウイルス感染症の影響でいずれか1か月の売上が前年比50%以上減、または連続する3か月の売上合計が前年同月比30%以上減の場合に給付の対象となります。
申請日直前1か月以内に支払った家賃などを基準として算定された金額が給付されますが、中小企業など法人最大600万円・個人事業者は最大300万円という給付金額です。
中小企業なら月50万円・個人事業者なら月25万円給付を受けることが可能なので、固定費の中でも金額の大きな家賃負担が軽減できれば、資金繰りを今以上に悪化させることはなくなると考えられます。
しかし2020年9月時点で給付された金額は990億円となっており、2兆円強の予算の5%程度で、7月中旬に申請受付が開始され2か月過ぎても給付率は3割程度にとどまっています。
約5千人だった審査担当者を2020年10月からは6千人に増員し、確認書類の多さで遅れが発生している状況を改善させるとしています。
持続化給付金の支給要件は厳しい?
同じく令和3年1月15日までの申請期間となっている持続化給付金ですが、給付対象も同様に資本金10億円以上の企業以外の中小法人や個人事業者などです。さらに要件として、2020年1月以降に新型コロナウイルス感染症拡大の影響などで前年同月比の事業収入が50%以上減少した月があることとしています。
法人は最大200万円・個人事業者は最大100万円の給付を受けることができますが、スピーディに支給されれば資金繰りの改善にもつながることでしょう。
しかし飲食業などは休業要請を受けたことや来店する顧客が減少し、売上減分を補うためにデリバリーやテイクアウトを開始したところも少なくありません。
努力した結果、持続化給付金の支給対象から外れることとなったケースもあるようです。また、持続化給付金は極めて厳しい経営状態にある事業者の事業継続を支援する制度なので、使途に制約されない資金として給付されます。
そのため税務上、法人なら益金・個人事業者は総収入金額に算入されますので、必要経費などの量によっては課税対象となると留意しておくべきです。
雇用調整助成金の効果は?
従業員を休業させたものの休業手当や賃金を支払ったときにその費用の一部を助成する制度が雇用調整助成金です。雇用の維持を目的とした制度のため、今回特別に設けられたわけではなく通常時から存在する制度ですが、令和2年4月1日から12月31日までの緊急対応期間においては新型コロナウイルスによる特例措置が設定されています。
特例措置により助成率と上限額が引き上げられており、1人1日1万5千円を上限に、労働者に支払う休業手当のうち最大10/10が助成金として支給されます。
しかし実際には、制度が複雑で申請したくても煩雑な手続きであきらめてしまう事業者もいるようです。
従業員20人以下の事業者の手続きは簡素化されているので、社会保険労務士など専門家を頼り報酬を支払う必要はなくなりました。しかし従業員が20人以上の中小企業も、同じように手続きを簡素化させるべきでしょう。
申請から支給されるまで2か月以上かかる点も資金繰り改善に有効とはいえませんし、そもそも助成金なので給付は後払いが原則となります。
手元に現金を多く保有していない飲食業や中小企業などは、支給までの期間が長いほど資金繰りに苦しくなるという現状を国は理解するべきでしょう。
そしてすべての制度に共通していえることが、制度ごとに申請窓口が異なるためさらに手続きを複雑にさせていることです。
地方の経営者などは高齢の方も多く、インターネット申請が必要といわれてもスムーズに手続きできる状況にありません。誰でもスムーズに手続きや申請ができ、資金繰り改善に有効活用できるスピーディな支給が求められるでしょう。
中小企業が資金繰り改善に活用したい制度とは?
悪化する資金繰りで苦しい思いをしている中小企業や個人事業者をサポートするため、政府も様々な支援策を打ち出し、制度として設けています。
しかしいずれもスムーズにお金が手に入る制度とはいいがたく、資金繰り改善に有効とは言えない状況です。
そこで確認しておきたいのがセーフティネット保証制度(5号)で、全国的に業況悪化した業種に属する中小企業を支援する措置なども設けられています。
セーフティネット保証制度(5号)とは?
中小企業が銀行など金融機関から事業資金を借入れするとき、信用保証協会の一般保証枠とは別枠で保証を受けることができる制度です。
制度を活用する場合には、まず市町村(または特別区)の商工担当課などの窓口に認定申請書を提出し、認定を受けなければなりません。その上で希望する金融機関や所在地の信用保証協会に認定書を持参し、保証付き融資を申し込むことが必要です。
認定を受けるには、
- 指定業種に属する事業で最近3か月間の売上高が前年同期比5%以上減となっている中小企業
- 指定業種に属する事業で製品等原価の20%を占める原油などの仕入価格が20%以上の上昇があるのに製品等価格に転嫁できていない中小企業
- 指定業種に属する事業で最近3か月間(算出困難なときは直近決算期)の平均売上総利益率または平均営業利益率が前年同期比3%以上減となっている中小企業
という要件のいずかを満たすことが必要です。
コロナショックによる要件緩和措置
なお認定基準については、新型コロナウイルス感染症の影響も変化している状況を鑑みて、直近1か月の売上高とその後2か月間の売上高見込みを含む3か月の売上高の減少でも可能とされています。
そのため直近1か月の売上高が前年同期比より5%以上減少しており、その後2か月間の売上高見込みを含む3か月間の売上高が前年同期比5%以上減少なら問題ないということです。
たとえば9月の売上高実績と10月・11月の売上高の見込みで判断する場合、9月の売上高実績は減少率が5%以上であり、9月から11月までの3か月間の売上高の実績見込みが前年の同期と比べて5%以上減少していれば申請可能と判断できます。
資金繰りが悪化しているという問題を抱えている今だからこそ、会社の資金確保のため活用したい制度の1つといえるでしょう。
創業者などの運用緩和
前年実績がない創業したばかりの中小企業や、前年以降に店舗や業容を拡大したという事業者も、新型コロナウイルス感染症の影響を受けていれば保証利用が可能になるよう認定基準の運用が緩和されています。
対象となる中小企業や個人事業主の業種は?
令和2年5月1日から令和3年1月31日までの対象業種は、一部例外業種を除き、業種数は85業種・細分類基準で1145業種となっています。
具体的にはセーフティネット保証5号の指定業種から確認するとよいでしょう。
また、こちらの指定期間は令和2年5月1日~令和3年1月31日となっています。
中小企業の資金繰り改善にぴったりなのがファクタリング
資金繰りが悪化している原因はいろいろでしょうが、もし取引先から売掛金が入金されるのを待っている場合、その債権を売却し現金化すれば手元のお金は増えます。
保有する売掛金を譲渡し、取引先からの入金期日よりも先に現金化させる方法をファクタリングといいますが、お金を借りずに現金を増やせる方法です。
資金調達が必要になったとき、まずは銀行など金融機関からの融資を思い浮かべる経営者が多いですが、コロナ禍の状況で借金が増えることは望ましいことではありません。
利子補給制度により実質無利子になる、新型コロナウイルスによる事業悪化を対象とした特別貸付制度なども設けてられていますが、審査に通らず融資を受けることができない事業者も少なくないようです。
しかしファクタリングは審査のハードルが低く、売掛金が期日に確実に決済され入金される信用力の高いものであれば、比較的スムーズに現金化できます。
融資を受けることができない中小企業などでも、資金繰り改善の策として活用できる方法なので、回収前の売掛金を保有しているのなら検討してみるとよいでしょう。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響により、中小企業や個人事業主の資金繰りは悪化している状況です。
国が設けた支援策などをうまく活用し、資金繰りを改善させることができたという事業者もいる中、手続きや申請がうまくいかずあきらめてしまった経営者もいることでしょう。
そしてすでに申請しているのに、まだ給付金を受け取ることができておらず、悪化し続ける資金繰りに日々焦りを感じている経営者も少なくありません。
このような場合には、給付金や助成金が支給されるまでの間のつなぎ資金として、ファクタリングで売掛金を現金化させることをおすすめします。
負債を増やさず資金繰り改善が可能ですし、すぐにお金が必要という場面でもファクタリング会社によっては、即日対応してもらえるので安心です。